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【日本COTY受賞】ボルボXC40の実力の理由。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

 昨年に引き続き混戦となった2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤーは、ボルボXC40がイヤーカーに輝いた。ボルボXC40の得票数は363点。二位となったトヨタ・カローラスポーツは49票差の314点と僅差での争いとなった。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいては昨年、複数台で接戦となる極めて稀な展開となり、これを制したのがボルボXC60。輸入車として2回目、ボルボとしては初となる日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したのだった。そして今年もまた、昨年に近い状況となった。

 理由のひとつには今年も本命かとささやかれていたスズキ・ジムニーが、10ベストカーへのノミネート自体を辞退したことが挙げられる。またスバル・フォレスターは10ベストカーに選出された後に、日本カー・オブ・ザ・イヤーを辞退したことで、今年は9台のクルマで日本カー・オブ・ザ・イヤーが争われたことも間接的に接戦となった理由といえる。

 こうした状況の中で今年はトヨタ・クラウンやカローラがイヤーカーになるのでは? とささやかれたが、トヨタはカローラスポーツとクラウンで合わせて484票を獲得しながらも、結果的にはトヨタの2台で票をわけあってしまった。

 そうした激しい競争の中で今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを制したボルボXC40の実力を分析してみよう。

 ボルボXC40は、ボルボのラインナップの中では最もコンパクトなSUVとなる。日本では今年の5月に試乗会が開催されたが、その仕上がりは強烈なインパクトを携えたプロダクトだったことを、筆者もこのYahoo!ニュースで2回に渡って伝えている→【動画で見る】驚きの完成度、ボルボ新型XC40の実力【ディテール編】( https://news.yahoo.co.jp/byline/kawaguchimanabu/20180413-00083932/ )【動画で見る】驚きの走り。ボルボ新型XC40の実力【試乗編】( https://news.yahoo.co.jp/byline/kawaguchimanabu/20180416-00084041/ )

 実際にいま、改めて2018年に登場した新型車を全て振り返ってみても、XC40は今年登場した新型車の中では群を抜く出来の良さだと評価できる。

 昨年、輸入車として2度目であり、ボルボとしては初となる日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したXC60に続くこのモデルは、XC60やXC90、V90などが採用する新世代のSPAプラットフォームとは異なるコンパクトカー向け新世代プラットフォーム「CMA」を採用する。

 搭載エンジンは日本仕様では2.0L直列4気筒ターボ/8速ATだけと割り切り、駆動方式はAWDとFFを用意して、価格的にも400万円前半からと、このサイズの輸入SUVとしてはかなりリーズナブルなのも特徴だ。

 そして実際に走りの実力の方も高く、乗り心地の良さとハンドリングを高次元でバランスしたその走りは、数多くいるライバルの中で見てもピカ一のものだといえるものとなっている。

 しかしながら注目なのはデザイン。上級のXC90や昨年受賞のXC60はボルボの新世代デザインにおける王道を行くが、このXC40はそれらとは異なる新たなデザインの路線を採用している。

 XC90やXC60の新世代ボルボのハイクオリティなスカンジナビアン・デザインは高い評価が与えられる。が、XC40は路線を変え、どこかポップでファンな雰囲気が漂っているユニークさを出してきた。

 実際にXC40は「ファンキー」というキーワードが設定されたという。また顔つきのモチーフは「イングリッシュ・ブルドッグ」とされており、よりパーソナルな存在であることをデザインに反映した1台だといえる。

 またインテリアも高評価。例えばドアポケットを広くしてノートPCを置けるようにしたり、アームレストには箱ティッシュがそのまま入れられる他、アームレストの前端には、取り外し可能なゴミ箱も用意。さらにセンターコンソールにはQi規格のワイヤレス充電スペースも用意した。つまりXC40のインテリアは、マイルーム的なパーソナル感覚を重視した。そしてもちろん安全装備では、最上級のXC90やXC60と全く同じレベルの安全装備をしっかりと与えており、XC40は極めて高い商品性を実現している。

 しかしながら大きいのは、ボルボというブランドが少し前から、明らかにプロダクト全体が高品質になり、商品性も確実に高まってきていること。特に中国の吉利汽車の傘下になって以降その成長は著しく、その企業規模からするとこの数年で大きく躍進をしたといえる。

 実際ボルボの日本国内販売は好調で、2018年1~6月期の登録台数は8500台と前年同期比10%増を達成した。2018年1〜6月期の受注実績は前年比40%増となっている。そしてその成長を後押ししているのが昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車であるXC60であり、今回受賞したXC40である。ボルボ・カー・ジャパン広報部によれば、特に昨年のXC60受賞以降、ショールーム来場が増えており、XC40に関しては今年3000台を受注したものの、本国からの割り当てもあって約2000台は来年の納車となるほどの人気モデルとなっている。

 しかしボルボ・カー・ジャパンでは、その納車までの間に他のボルボ新車に諸費用+月々車両定価の1%で乗ることができる「ブリッジSMAVO(スマボ)」というボルボ独自の短期リース商品を展開し、これを納車待ちの多くのユーザーが利用しており好評を得ているという。

 

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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