【動画あり】新型は優等生なSUVだが…ホンダCR-V試乗

写真は全て筆者撮影

SUVブーム直前に生産を終了した先代

 ホンダCR-Vは、2年前の2016年3月末にその生産を終了した。このモデルは2011年登場してから一度もマイナーチェンジすることなく、日本市場から消えたのだった。

 

理由は当時大ヒットモデルとなった同社のコンパクトSUV、ヴェゼルがCR-Vのユーザーを継承するため、と言われた。しかしながら、ちょうどこの頃から日本のSUVマーケットは急成長し、ヴェゼルが属すコンパクトSUV市場だけでなく、その上のクラスのCR-Vが属す市場でも急速な拡大が始まった。

そう、ホンダが手を引いた途端に市場はにわかに活気を帯びてきたのである。

もしホンダがCR-Vを生産終了とせずマイナーチェンジしていれば、それなりに販売台数を稼ぎ、かつ生産終了をせず今回の新型に引き継げたのではないか? というのは、誰もが考えることだろう。またこんな出来事に現在のホンダの日本市場に対する情熱や思い入れの薄さが滲んでいるようにも思える。少なくともこの出来事に、浪花節で踏ん張って…という姿は想像できない。そして当然ビジネスとしての判断による生産終了と感じるわけだが、さらに残念なのはその判断が逆をいってしまったことだろう。

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こうした経緯を経て、CR-Vは2年半ぶりに日本市場での復活を果たした。復活を判断した理由は、先代CR-Vの価値がヴェゼルでは引き継げないことがわかったため。CR-Vが身を引いた市場では2年半の間に、かつてのCR-Vユーザーの多くが同クラスのライバルへ流出したことが復活を決断させたようだ。

 しかしながら実際に今回の新型も世界では2016年には登場していたわけで、日本への導入が後手に回った感は否めない。ユーザーがライバルへ流れているのを知りつつも、日本市場への対応は早急ではなかった。ホンダはその理由として当時は全てのラインナップが揃っていなかったためと説明する。事実今回のCR-Vは北米でガソリンモデルを先に出し、次に他の市場で3列シートモデルを送り出し、最後にハイブリッドを別の市場で送り出す展開だった。なぜなら今回のCR-Vは様々な国に販売されるため、パワーユニットだけでも8種類もあり、仕向地ごとの仕様の開発にも時間がかかったのだろう。そうしてようやく日本への導入が始まったわけだ。

日本市場へは1.5ターボと2.0Lハイブリッドを用意

 日本市場向けのパワーユニットは、1.5Lガソリンターボと、2.0L+ハイブリッドi-MMDの2種類が用意される。1.5Lの直列4気筒直噴ターボは最高出力190馬力、最大トルク240Nmを発生する。一方のハイブリッドは2.0Lの直列4気筒エンジンに、i-MMDを組み合わせる仕組み。2.0Lエンジンは最高出力145馬力、最大トルク175Nmを発生し、モーターは最高出力184馬力、最大トルクは315Nmを発生する。駆動方式はFFと4WDの2種類で、さらに乗員は2列シートの5人乗りと、3列シートの7人乗りの2種類(ハイブリッドは5人乗り仕様のみ)。そしてグレードは標準のEXと上級EX・Masterpieceの2種類となる。燃費は1.5ターボがJC08モードで14.6~15.8km/Lとなり、ハイブリッドはJC08モードで25.0~25.8km/Lとなる。

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 今回はこのうち、ハイブリッドの4WDモデルの上級グレードEX・Masterpieceと、1.5ターボのFFモデル7人乗りの上級グレードEX・Masterpiece、そして1.5ターボの4WDモデル5人乗りの上級グレードEX・Masterpieceの3台を試した。

 

最初に試乗したのはハイブリッド。走り出してすぐに、圧倒的な力強さがあって滑らかな加速に好印象を覚える。やはりi-MMDと2.0Lエンジンの組みわせとなるこのハイブリッドは、相当に満足できる動力性能の高さがある。そしてもちろん、モーターだからこそのスタート時の素早い力の立ち上がりや、再加速時の反応の良さなど、電動駆動および電動アシスト領域での気持ち良い感覚を存分に伝えるのだ。最近は欧州勢が48Vのマイルドハイブリッドを続々投入している状況のため、もはや電動駆動がない通常の内燃機関では発進や再加速でタルさを覚える。が、そうした新機軸が増えた中でもこのフルハイブリッド方式は群を抜いて力強く、周りの電動駆動を凌ぐ高評価が与えられる。また乗り心地もライバルの中でみても良い位置にあると評価できる。路面の荒れたところや段差では、少しドンッという衝撃が気になるが、それ以外では路面にピタリと密着する感覚があって好ましい。

ハンドリングは素直。1.5ターボの走りは?

 一方でハンドリングは実に素直な印象。ドライバーの操作に忠実に反応して、スッキリした走り味を生む。この辺りはやはり新型シビックから採用された新世代プラットフォームの効果だろう。あとでエンジニアの方に聞いたところ、新型シビックと共通する部分は少なく、かなりの部分をこのクルマのための専用としたプラットフォームなのだと説明を受けた。ならば今後はここに、違うデザインや異なるメカを組み合わせた別車種も展開するのかもしれない。

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 次に1.5ターボに乗ったが、基本的な印象はハイブリッドと大きくは変わらなかった。が、やはりハイブリッドよりこちらの方が車両重量が軽くなるため、走りに関してはボディの動きに落ち着きのなさが見受けられた。同じ場所を走っても、ハイブリッドで感じなかったヒョコヒョコした動きがある。これはFFでも、さらにその後に試乗した4WDでも多少の差こそあれ、基本的には同じように感じたのだった。もっともハンドリングに関しては車両重量が軽い分、ハイブリッドよりもさらに素直な印象を受けた。この感覚はまさに「素直」と表現するのが相応しいもの。つまり、毎日乗って飽きのこない過剰さのない走りだった。が、その分走りの印象はアッサリとしたものでもあるわけだ。またこの1.5ターボは、アクセルを多く開けると、CVTによってエンジンが盛大に唸ってしまうのが残念だった。しかしながら個人的には動力性能的にさしたる不満はなかった。クルマの性格的にもガンガン走らせるタイプではないので、これで十分といえる動力性能だ。もちろん7人乗り仕様でフル乗車したら、この1.5ターボではツラいのは間違いないが、そうした機会は滅多にないだろう。

 こうして走りに関しては、とてもプレーンな味わい、という印象だった。そして1.5ターボとハイブリッドを比べると、やはり動力性能の高いハイブリッドが魅力的に感じた。また荷室の広さに関しても申し分なく、アレンジも相変わらずの簡単操作が嬉しい。さらにリアシートは燃料タンクが薄いため、後席足元がフラットで広々している。3列シートの7人乗りも、2列目のスライド量が多いなど、使い勝手は良好だ。

 

こんな具合で完成度は高い新型CR-Vだが、一方で気になるのが、どこか印象が薄く感じるところだ。スタリングも悪くないし、走りも大きな不満はないが、どこかキャラクターがアッサリし過ぎのようにも感じた。とはいえ、この辺りが北米市場では人気の理由でもあり、つまりは現代のブレッド&バターカー、ということのようだ。先に毎日乗って飽きのこない…と記したが、走りだけでなく見た目や存在感にも共通する印象だと思えた。もちろんクルマは道具と割り切り、無闇に濃いキャラクターではない方が好きという方も多くいるわけで、その意味でCR-Vは現代の優れた道具の典型だろう。

気になるライバルとの関係、そしてプライス

 しかし気になるのは周りと比べた場合だ。例えばスバル・フォレスターは、独特の世界観といい意味での泥臭さがあり、確固たるニーズがある。またマツダCX-5は、ディーゼルという武器とデザインの良さで独自の世界観を築いている。そんなライバルと比べた時に、CR-Vはキャラクターの薄さを感じる。確かにその出しゃばらない感じが魅力かもしれないが…。この辺り意見が分かれそうだが、個人的にはこのキャラの薄さを打ち消すには、i-MMDによって圧倒的な動力性能を生み出すハイブリッドであれば他にはない個性と言えるので、購入するならばここはやはりハイブリッドを選ぶだろう。

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 さらにもう一点気になるのが強気のプライス。例えば最安の1.5ターボEXの5人乗りFFでも323万280円。ライバルのスバル・フォレスターならe-BOXER搭載のアドバンスが309万9600円で買える。マツダCX-5なら2.5LのNA4WDの装備充実L Packageが買える。またCR-Vで最も高価なのハイブリッド、4WDモデルの上級グレードEX・Masterpieceは436万1040円とライバルより割高な価格だ。これには理由があり、標準グレードのEXでもナビや運転支援系装備のホンダセンシングが標準装備されるなど、あとから付けるものがほとんどないからだ。さらにEX・Masterpieceでは電動サンルーフやハンズフリーテールゲート、本革シートも標準装備でオプションがほぼ不要である。こんな具合で価格的には標準装備が充実していることもあって、見た目のプライスが高いということになる。そしてこの見た目プライスを前提に、一体どのくらいの台数が受け入れられるかは気になるところだ。

 総じて見ると、新型CR-Vはプロダクトとして全方位でバランスの取れたグローバルカーらしい仕上がりの1台である。しかしながら、筆者の中でどこかスッキリしないのはホンダのプロダクトに対する期待の高さがあるからだろうか? この優等生的な新型CR-Vこそが、ビジネスを考えた時の正解であり、それは確かに世界で売れていることも間違いない。しかしいざ、その正解を目の前にすると、どこかでホンダのプロダクトに、ユニークさや情熱のようなものを期待する気持ちがあることに気づくのもまた本音である。

とはいえ2年半ぶりの復活であり、開発陣は相当に気合いを入れて原点回帰をして勝負を挑む自信作である。今後の販売の推移に注目していきたい。