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日産セレナe-POWERに感じる電動駆動の可能性【動画アリ】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

公道で走ってこそ分かる、電動駆動の魅力

 先日、日産セレナe-POWERの記事を公開したが、今回は実際に公道で試乗することができたので簡単にレポートしたい。先の試乗では、このクルマが電動駆動であるがゆえに、静か・滑らか・力強いという、モーターで走るクルマだからこその魅力があると記した。そしてそれは公道で乗っても当然同じように感じるわけだが、やはりリアルワールドで走らせると、その魅力はさらに価値あるものだと感じたのだった。

 実際に公道を走った様子は、筆者のYouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」で公開している動画を参考にしてほしい。走り始めるとまず、端的に極めて静かな室内が実現されていることに驚く。というのも、この動画の中でも街中をモーターのみで走行している際に、セレナe-POWERそのものが静かなので、外のノイズが聞こえてくるほどだ。

 もちろん静粛性に関しては、通常のセレナに対して25部品を追加するなど徹底している。フロアカーペットは4層タイプの厚みのあるものとしたり、フロントガラスには遮音フィルムが入るなどしている。この結果、通常ならば室内に反響する自車の走行音が抑えられたため、逆に外の音が聞こえてくるわけだ。

 そして同じシステムを搭載するノートe-POWERや電気自動車のリーフでも用意されている、アクセルのみで走れるワンペダルのドライビングだが、これは街中でこそ威力を発揮する。渋滞時のノロノロ運転では、前のクルマの動きに合わせてアクセルを少し踏んで離すだけで全車の動きに追従できる。ブレーキへの踏み替えがないのは便利だ。また右左折の信号待ちから再発進というシーンでわずかに前に進んで待つような状況でも、アクセル操作だけで微調整できるのも便利である。

 さらに部分自動運転のプロパイロットも、通常のセレナで初採用されたが、このe-POWERでは駆動がモーターとなるために、前車に追従してアクセル/ブレーキをクルマの側で操作する際にも、エンジンよりも優れたレスポンスを持つため、反応が早く感じられる。また前車が減速した後の再加速に追従する際には、再加速そのものがエンジンよりも素早いため、より力強く素早い追従を見せてくれるのもポイントである。

 実はこの日産セレナでは、当初既に販売されているエクストレイル・ハイブリッドと同じハイブリッドシステムを搭載する予定があった。しかし同じシステムを搭載するノートe-POWERが登場して、これが相当の人気となってノートが登録台数で久々の日本一を獲得するなどしたこともあり、セレナでも急遽このシステムが採用されてセレナe-POWERとして世に送り出された経緯がある。

 そしてこれは結果的に大正解だったといえる。事実、このシステムを搭載したことで、セレナe-POWERは1クラス上のクルマを感じさせるフィーリングや快適性を手に入れたからである。今回、ノートよりも大きなセレナに同じシステムを搭載して、走りは物足りないのではないか? と想像したが、その心配は無用だった。さすがに試乗会で試した程度なので、フル乗車等は試していないが、多人数乗車しても日常使用ならばなんら不満のない走りが実現されているだろう。もっともノートのシステムに対して、モーターも、エンジンも、電池も出力をアップしている。

e-POWERが生み出す新たな可能性

 それはさておき、日産はこのノートe-POWER、そして2代目のリーフ、そして今回のセレナe-POWERを出したことで、新たな方向性が見出せたと筆者は感じる。この3台は全て電動駆動であり、その魅力は大きく、かつイマドキのものを持っている。以前にもノートe-POWER、リーフの両モデルについてレポートしているが、改めて読み返してみてもやはり筆者自身、毎回これらのモデルの電動駆動に魅力と可能性を強く感じていることが分かる。特にリーフの氷上雪上のワンペダルドライビングには、未知の体験と大いなる可能性を感じた。

 そう考えると日産は、この電動駆動シリーズを展開していくことでブランドの新たな価値を手に入れるのではないかと思えるのである。特にe-POWERのように、従来と同じくガソリンを入れて運用できるクルマならば、インフラに頼らずに電動駆動を広めていける。そして何より、他ではまだまだ少ない電動駆動ならではのフィーリングをして、日産の乗り味走り味としてアピールできるアドバンテージがある。

 またここまでの3台で実現してきたワンペダルドライビングは、今後さらに進化させていくことで、これまでの自動車の運転方法の概念を変えていき、より安全で安心できる操作系を生み出す可能性を秘めていると感じるのである。そうした視点で見ていくと、このe-POWERシステムは様々に展開が可能だといえる。筆者の個人的な興味としては、このシステムを進化させて搭載したスポーティなモデルなどがあっても面白いと思えた。

 というわけで日産セレナe-POWERは、クルマそのものの魅力はもちろん、今後の様々な可能性を感じさせる1台だった。

 

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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