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スタイルも走りも良し、だが実用性も忘れない。メルセデス・ベンツEクラスクーペ海外試乗その2(試乗編)

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

スペイン・バルセロナ周辺で開催されたメルセデス・ベンツの新型Eクラスクーペ試乗会。(試乗会の様子はこちらの動画から↓)

まず試乗したのは、E300というモデルだった。E300は2.0Lの4気筒直噴ターボ・エンジンを搭載し、9速ATを介して後輪を駆動する。スペックは最高出力が245ps、最大トルクが370Nmで、0−100km/h加速は6.4秒。このモデルが日本導入時には基本グレードになるという。

メルセデス・ベンツの4気筒エンジンは情感に訴えるようなキャラクターではない。むしろビジネスライクでサウンドは無味乾燥。だから回転を上げても、エンジンの回転上昇による気持ち良さはあまり得られない。だが一方で、4気筒ながら全く不満を感じない動力性能が備わり、必要十分以上の加速を享受できる。また街中では、3000回転以下で全てがまかなえるフレキシビリティがある。よって扱いやすさも抜群。

この辺りはいかにもメルセデス・ベンツらしい部分だ。

試乗車には、オプションとなるエアサスペンションが備わり、タイヤ&ホイールは20インチサイズが与えられていた。標準仕様ではおそらく、メカニカルサスに18もしくは19インチの組み合わせとなるだろう。

早速走らせると、まず印象的なのがのり心地の良さ。20インチを履いていてもゴツゴツしていないのは間違いなくエアサスの効果だ。その乗り味は確かにEクラスセダンの豊かさと優雅さを受け継いでいる。もちろん、そんなしっとりとした乗り味ながら、速度が上がるほどに路面に吸い付くと同時に、フラットな感覚が増していく様は相変わらず素晴らしさで、まさにメルセデス・ライドである。路面の荒れや段差などの入力に対しては十分なストローク感でサスペンションは沈み込むが、その後の伸びはしっかり制御され、ふらつきやグラつきを生まない。十分に抑えが効いていて好ましい。そしてこの辺りが絶大なる安心感となっているわけだ。

そうして次はE400 4MATICに乗り換えた。E400は、3.0LのV6ターボを搭載して最高出力は333ps、最大トルクは480Nm。9速ATを介して4輪を駆動する4MATICが組み合わせられる。日本市場では、このモデルが上位となる予定だという。

走り出すとすぐに、エンジンの違いからくるキャラクターを感じる。先に乗った4気筒は官能的ではなかったが、E400のV6は情感に訴えるフィーリングがあった。まずエンジンのサウンドが心地よく響き、適度にスポーツ・マインドを刺激するが、決して過度ではなく一定の上品さがある。また333ps/480Nmの性能で、0−100km/h加速も5.3秒ととなるため、スッと胸をすく加速と爽快な走りが生まれているおり、クルマ自体が軽く感じる。また4MATIC=四輪駆動だけに、後輪駆動のE300とハンドルにもしっかり感が加わり、安心感もさらに増すカーブでも安定感を保ちつつも、スポーティな感覚が増していた。

また今回特筆すべきはリアシートがさらに広くなっていたことだろう。メルセデスのエンジニアからも、「是非後席を試してほしい」と言われたほどで、実際に座ってみると確かに大人がしっかりと座れるだけのリアシートが構築されていたのも印象的だった。クーペゆえに2ドアとなるため、乗り降りに関しては面倒もあるが、確かに乗ってしまえば長距離も厭わないだけの後席だったといえる。またトランクスペースの十分な広さと合わせて、クーペながらも実用性は軽んじられていなかった。

こんな具合でEクラスクーペは、美しいスタイリングに走りの良さが加わって、パーソナルな性格のモデルとして十分以上に魅力的だった。が、やはり決してラグジュアリーなだけではなく、実用性の高さを忘れていない辺りがメルセデスらしさだと思えたのだった。

試乗動画はこちら。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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