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最高に贅沢なスポーツカー、ベントレー・コンチネンタルGTスピード。【試乗インプレッション】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

ベントレー・コンチネンタルGTのラインナップにおいて、スポーツ性の高さを追求したモデルに位置付けられるのがこの「スピード」というモデル。まさに名は体を表す、の典型的なモデルである。

もっともベントレー・コンチネンタルGTは、通常のモデルで既に圧倒的な動力性能を実現している。6.0LのW型12気筒(Vではなく稀有なW型、というのもミソ)ツインターボを搭載し、最高出力590ps、最大トルク700Nmを発生する。もう、何というか異次元のパワーとトルクを発生する。にも関わらず、「スピード」はさらに高出力化されており、最高出力635ps、最大トルク820Nmを発生するのだというから、もはや想像を絶する世界だ。

数値でみれば、もはやフェラーリやランボルギーニに匹敵するスーパースポーツといっても良いほどだが、その走りはとてもジェントルで品のあるものとなっている。この辺りは車名のGT=グランドツアラーが、その性格を物語っているといえるし、ベントレーという歴史と伝統あるブランドが生み出す世界観であり空気感から生まれるものといえるだろう。

事実、走らせるとその数値の大きさによる加速力や最高速に目が行くのではなく、普段の道を走っている時の圧倒的な力のゆとりと、そこから生まれる余裕に強く感心させられる。もちろん、街中を走るためには数十馬力程度あれば事足りる。そうした中で数百馬力は無駄、ともいえる。しかしその無駄が、他のクルマでは得られない滑らかさやシルクを思わせる感触など、様々なフィーリングを生み出し、ドライバーに訴えかけてくる要素になっているのは間違いないだろう。

コンチネンタルGTスピードは、コンチネンタルGTに比べると端的に乗り味がスポーティなわけだが、そのスポーティさも単純に運動性能だけを追求するのではなく、もともとのコンチネンタルGTが持っているしっとりとした乗り味走り味をベースに、研ぎ澄まされた動きを加えているもの、と表現するのが正しいだろう。なので、サーキットを走らせるとしっかりと踏ん張ってくれて、この美しく大きなグランツーリスモからは想像ができない身のこなしのよさを見せてくれる。ただし、キビキビという感じではなく、動きのどこかにしっとりとした感覚を残した切れ味の良さが感覚としてそこにある。その他の印象等は動画をご覧になっていただければ幸いだ。

コンチネンタルGTスピードは、スポーティなモデルだが、その仕立てはベントレーならではの丁寧な仕事のオンパレードといった感覚。スイッチのひとつからバッチのひとつに至るまで、徹底した作り込みの精緻さが表現されており、この辺りは一目見てお金がかかっているなとわかるものだ。例えば、レザーシート等のステッチを見ると、いわゆる量産車のそれとは全く異なるものであることがわかる。

もっともその分、車両価格は高価なわけで、通常のコンチネンタルGTが2370万円。そしてコンチネンタルGTスピードは2640万円となる。しかし実際に目にして、その作りを確かめ、走らせてその性能を感じ、作り上げられる世界観を知ると、なるほど高価な理由がそこかしこにあるとわかる。

ちなみにベントレーはとても安定したビジネスを展開しており、2014年は11020台を全世界で販売した。この数字は過去最高で、2013年比で約9%の成長をみせている。そしてそのうち317台が日本で販売されたという。日本市場はリーマンショック後順調に台数を伸ばしており、2013年、2014年とも300台を少し超えるレベルで安定しており、全世界の3%を販売している。そして間も無く開催されるフランクフルトモーターショーでは、同社初のSUVとなる「ベンテイガ」が発表される。これによって来年以降は、新たな顧客が生まれるのではないかと期待されているという。

参考:【ベントレーのwebサイト】

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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