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日本人ドライバー、中島一貴の挑戦【トヨタ、ル・マンへの挑戦2015 Vol.3】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

今回のル・マン24時間レースにおけるトヨタTS040HYBRID1号車のドライバーを務めるのが、中島一貴選手。2012年にトヨタがル・マン24時間レースに復帰して以降、チーム唯一の日本人ドライバーとして参戦を続けてきた。そして昨年のル・マン24時間レースでは、日本人として初となるポールポジションを獲得した。

4年目となる今年は序盤から試練が訪れた。ル・マン24時間レースの前戦であるFIA世界耐久選手権(WEC)の第2戦スパフランコルシャンのフリー走行中にクラッシュし、脊椎を損傷し病院へ搬送。これによってル・マン24時間レース出場が危ぶまれた。

しかしその後、早期復帰を果たし、ル・マン24時間レースにおいてTS040HYBRIDのコックピットに収まることとなった。そんな中島一貴選手に話を聞いてみた。まずは4年目となる今年のル・マン24時間レースにかける想いは?

「やはり、参戦する以上はいつも通り行く、これに尽きます。自分にできることをしっかりと行うこと。今年のマシンはスピード的にはそう速くはないですが、信頼性とミスをしないところでタイムを確実に稼いでいくという必要があります。そうすることで勝負の権利を得る、というのが自分の中で一番のターゲットですね。僕自身、4年目となりましたが基本スタンスはいつも同じ。年々、回数を重ねるごとに慣れてくるところもありますが、常に最後までミスなく走るのが目標です」

中島一貴選手はとにかく、真摯にレースへ向き合う。だからこそ「ミスなく」という言葉が繰り返されるのだろう。そんな中島一貴選手に、

トヨタのドライバーとしてル・マン24時間レースを戦う意味を聞いてみた。

「ドライバーとしてはとにかく、結果を出すことに責任があります。我々ドライバーがハイブリッドマシンを走らせることで、トヨタというチームの総合力を知ってもらうことにつながります。もちろん相手がいる話で厳しい戦いですが、その分ドライバーとしてやりがいもあります。トヨタのマシンは、信頼性が高いのが強み。そして同時にハイブリッドとしての信頼性をも証明したいと思います」

スタートまで間もなくのタイミングで「今年、狙うところは?」と聞いてみた。すると、中島一貴選手は、

「淡々と行きます」

と、静かに、しかし力強く語ったのだった。

トヨタのル・マン24時間レースにおける挑戦の目標は、当然表彰台の頂点に輝くことである。が、それと同時に我々の胸には、そこに日本人ドライバーが立ってほしい、という想いもある。

ル・マン24時間レースで表彰台の頂点に立った日本人ドライバーは、1995年の関谷正徳選手と2004年の荒聖治選手の2人しか存在しない。しかし2人とも、その時のマシンは海外メーカーのもの。そしてメーカーでいえば、日本メーカーとしては1991年にマツダが頂点に輝いて以降は、日本勢は2位が最高順位であり続けている。

そう考えると、日本のメーカーが、日本人ドライバーとともに表彰台の頂点に立った例はまだ一度もない。

だからこそ我々は、日本のメーカーが日本人ドライバーとともに表彰台の頂点に立つことに期待している。そしてその場所に今、最も近いのは、中島一貴選手なのである。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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