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ホンダS660発表、198万円から。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

「若い世代のクルマ離れと言われていますが、そんな我々世代からあえて、“クルマってメッチャ楽しいんだぜ”と“どストレート”に表現しました」

わずか26歳でS660のLPL(ラージプロジェクトリーダー=開発責任者)となった椋本陵氏は30日、ホンダ青山ウェルカムプラザにおける軽オープン2シータースポーツ「S660」の発表会で、そんな風にこのクルマを紹介した。

発表会の中で椋本氏は、先の言葉に続き、自分たちの思いを表現したビデオを紹介。そのビデオの終盤には「自分たちが創りたいクルマを創る」という言葉が踊っていたのが印象的だった。ここ最近、あまり良い話題のなかったホンダの中にあって、イマドキの若者とは思えない熱さを持って開発に取り組んできたこと、またそれを仲間とともにやり遂げてきたことが強調された。もちろん現代のクルマ創りでは、そうした情熱とこだわりだけで突き進めない要素も大きいわけだが、椋本氏の言葉を聞いていると、青臭いけれどどこか期待できる感覚があった。

S660は、同社が1991年に発表した「BEAT」以来、実に24年ぶりとなる軽オープン2シータースポーツとなる。そのレイアウトに関してもかつてのBEATと同様に、エンジンを車体の中央、ドライバー後方におくミッドシップとした。ミッドシップ・レイアウトは運動性能を高めるのに有利な形式で、世の中では多くのスーパースポーツカーが採用する仕組み。S660ではそれを、軽自動車枠の中で実現し、かつオープン構造のボディとしている点がトピック。ちなみに同じ軽オープン2シータースポーツのダイハツ・コペンは、コンパクトカーの定番である前輪駆動レイアウトを採用している。S660がミッドシップ・レイアウトを採用したのは、とにかく走りの楽しいクルマを創るためで、「最初からミッドシップしか考えていなかった」と椋本氏は動画でも説明した。

そんなS660の価格は、装備が充実したαが218万円。ベーシックなβが198万円となる。また発売を記念した特別仕様車S660コンセプト・エディションは、600台限定で238万円となっている。発売は4月2日から。

ちなみに筆者も先日ディーラーで見積もりをしてみたが、上級グレードのαに自動ブレーキと液晶モニター(バックカメラ等含む)のオプションをつけて諸費用その他諸々で乗り出しが268万円となった。スポーツカーとしてはアフォーダブルな部類ではあるが、軽自動車であることを考えるとかなり高額という印象となるのは間違いない。となると果たしてどのくらいの売れ行きとなっていくかに注目が集まる。

S660の生産は四日市にある八千代工業が担当し、1日40台、月産800台という少量生産となる。これはS660というスポーツカーを1台1台丁寧に想いを込めて創り上げていくため。なお現在の受注状況は、最初の1ロット3000台をほぼ達成しており、現時点でのオーダー分は7月までには納車できると峰川尚・専務執行役員・日本本部長から説明があった。

発表前の受注で既に3000台という数字は、先日のロードスターの先行商談予約の2000台を上回る数字。果たして本日発表となって、どのくらいの数が予約されるかも注目だ。ちなみにS660の月間販売台数計画は800台とされている。

車両価格の高さと生産量の少なさが、今後このクルマをどのような存在にしていくかは気になるところ。とはいえ、今回の発表会は非常に注目を集めていたようで、発表会場となったホンダ本社の青山ショールームは立ち見が出るほどの盛況っぷりだった。そうして多くのプレスが見守る中で、若い椋本氏が熱心に語る様子からは、最近のホンダに感じたことのない爽やかさと力強さが感じられたのだった。

発表会で渡されたプレス向け資料の最初のページには、『世界で一番「笑顔の似合う」スポーツカー』と記されていたが、今回の発表会で実車を眺めるプレスの様子や先日試乗した印象も含めて、このS660という小さなスポーツカーには、そんな雰囲気を生み出してくれる力があるように感じたのだった。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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