聖光学院、驚愕の11連覇! @福島県営あづま球場

 互角だった。最後の瞬間まで4対4。いわき光洋に流れが傾きかけたイニングもあった。

 しかし、勝ったのはやはり聖光学院だった。9回裏、1死満塁から勝負を決めるサヨナラ打。11年連続福島県の代表の座を勝ち取った。

いわき光洋の健闘

 まずはいわき光洋を讃えなければならない。

 春の決勝では大差で負けていた。しかし、この試合では互角に渡り合った。

 先発の川邉。ここまで5試合で39得点(54安打)の強力打線に対して、逃げることなく立ち向かった。

 ショートの園部を筆頭に、バックの守備も固かった。だから序盤の失点を最小限で食い止めることができた。

 3回、4本のヒットを集めた集中打。そして菅原のスライディング。見事だった。

 同点に追い付いた直後の園部の大飛球。あの瞬間、バックネット裏の高校野球ファンの腰は浮いた。もしかしたら……、そんな期待を抱かせる戦いだった。

 川邉をリリーフした投手陣も踏ん張った。2番手・矢吹成の制球が乱れたピンチを救った水谷、そして6回から登板した大谷。守り終えるたびに笑顔で迎えるベンチの選手とともに僅差の勝負を演出した。

 7回に再び勝ち越された後、園部が今度は右中間を破った。一塁から山野辺がやはり好走塁でホームに帰ってきた。ワッショイ! ワッショイ! 3塁側スタンドの盛大な応援が、球場全体のムードも変えかけていた。

 この8回と9回、あと一本が出ずに逆転こそできなかったが、聖光学院をぎりぎりまで追い詰めた。

 9回裏、最後の勝負。満塁策からの前進守備。悔いはないはずだ。技術も、体力も、頭も使って、総力戦で戦ったのだ。敗れはしたが、最後の最後まで互角の戦いを繰り広げたのだ。

 見応えのある決勝戦だった。いわき光洋の健闘があったからこそ、ナイスゲームになった。

盤石だった聖光学院

 勝った聖光学院、いや11年連続で福島県を制した聖光学院。サヨナラ勝ちした直後には泣き崩れる選手もいたから、この決勝戦、やはり苦しい試合だったのだろう(加えて、連覇のプレッシャーもあったかもしれない)。

それでも最後には勝ち切ってしまうあたり、やはり地力のあるチームだった。

 今年のチームに関して言えば、昨秋、今春と県大会優勝。この夏も、初戦から3試合コールド勝ち。準々決勝で小高産業技術を5対0、準決勝で日大東北を5対2で退けての勝ち上がり。その間、奪った得点39に対して、失ったのは準決勝での2点のみ。ただの一度も相手にリードを許さないまま迎えた決勝戦だった。

 この試合では4点を失ったが、それでも改めて振り返ってみれば、常に先制。いわき光洋に勝ち越されることはなかった。

 先発した前田は、立ち上がりから小気味よいピッチング。斎藤、平野、湯浅、堀田と投手陣の駒は揃っているから継投も予想したが、そのまま9回まで投げ切った。5回にヒットを集められ、3点を失ったが、キビキビとしたピッチングは最後まで変わることがなかった。

 瀬川、矢吹の二遊間を中心とした守備も固い。失った4点のうち2点は本塁でのクロスプレー。セーフにはなったが、外野からのリレーは素早く正確だった。

 バッティングでは矢吹、松本をはじめとした強くボールを叩くコンパクトなスイングが印象的。もちろん仁平、瀬川など長打力を備えた打者もいる。9回裏、センターオーバーのサヨナラヒットを放った渡辺は8番打者。しかし、この試合ではレフト線にも快音を響かせていた。

 とにかく、派手な選手こそいないものの、投攻守すべてにおいて高いレベルでバランスのとれたチーム。

 だからこそ、足元をすくわれることもなく、盤石な戦いで、この決勝戦を、この大会を制することができた。

驚愕の11連覇

 それにしても11連覇。改めて、すごいとしか言いようがない。

 昨年も書いたが、福島大会はいまや「聖光学院vs打倒・聖光学院」の戦い。福島県内のすべてのチームが「打倒・聖光」で向かってくる中、それでも一度も負けることなく勝ち続けているのだから、その強さには舌を巻く。

まして、毎年選手が入れ替わり、3年で顔ぶれが変わってしまう高校の部活動であることを考えれば、これはもはや驚愕の記録である。

 かくなる上は――白河の関を越えて紫紺の優勝旗を……。

 閉会式の祝辞では、だからそんな一節も飛び出した。

 福島県のすべての高校球児と県民の期待を背負って臨む、11年連続14回目の甲子園である。

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』(光文社)にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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