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第1シード・青森山田、圧勝で初戦突破 @青森市営球場

川端康生フリーライター
見据える視線の先、甲子園まではあと4勝。

青森山田が圧勝で初戦を突破。甲子園へ向けて完璧な第一歩を踏み出した。

5回コールドの完勝

まさに完勝だった。

2回、平沼のタイムリーで2点を先制すると、3回には赤平、阿部、福原のクリーンアップが、それぞれレフト、ライト、センターの頭上を破る長打3連発。さらに4回には阿部が豪快にライトスタンドへ運ぶなど、5回で11点を奪った。

強打だけではない。

3回、長打3連発の直後には送りバントとスクイズで追加点。さらに5回にはエンドラン、盗塁、そしてスクイズ2本で相手を突き放した(しかも、そのいずれもが内野の混乱を招き出塁した)。

打ち勝ったことは事実だが、緻密さも発揮しての圧勝だった。

打力で圧倒し、小技で揺さぶり、相手に休む暇を与えず、もちろん付け入る隙も見せず。そして気がつけば大量点差をつけてしまっている。

5回コールド、11対0はそんな戦いぶりの結果だった。

浪岡、石村投手

敗れた浪岡高校。開幕戦では14安打を放ち、コールド勝ちをした。しかし、この試合では2回に澤田がデッドボールで出塁したのみ。一本のヒットも打てなかった。平沼(左腕)、斎藤勇(右横手)、三上(左腕)とタイプの異なる3投手を繰り出され、ボールに馴れる機会を与えてもらえなかった。それ以前に、長い守備時間にバッティングへの余裕を削がれてしまったかもしれない。

ただし、初回が終わった時点で、別の展開もイメージできたことは書き添えておきたい。

石村投手の立ち上がりは素晴らしかった。右腕から投げ下ろす力投型。気合とともに投げ込むボールは低目に集まっていた。そこから落ちるフォークのコントロールもよかった。そのボールで3番赤平を三振に打ち取ったときには、ネット裏に感嘆の声も漏れたのだ。

最初の失投は先制点を許した平沼へのボールだったのではないか。以後、時折高めに浮いたボールを、青森山田の強打者にことごとく叩かれた。

不運もあった。4回のボーク。本人は納得できていないように見えた。ランナーが3塁にいた。さらに失点してしまった。

そして気持ちの整理ができないまま投げた次の球を……と続けてはむしろ失礼にあたる。それが運ではなく、実力だということは、浪岡ナインが誰よりも感じたはずだからだ。

強いチームは見逃さないのだ。相手の動揺を見逃すことなく狙う。しかも4番阿部。狙ったボールをスタンドまで運ぶ力を持っていた。

共に戦ったスタンド。選手を鼓舞するマネージャーの声が一球ごとに響いていた。
共に戦ったスタンド。選手を鼓舞するマネージャーの声が一球ごとに響いていた。

私学王国

初戦を確実に突破した青森山田。11点を奪った攻撃力はもちろん、ショート工藤、セカンド相坂をはじめとした守備力も、さらにゲームの進め方まで含めて、さすがの第1シード。完璧な戦いぶりだった。

昨秋、今春と2季連続して青森を制している。この夏も“最右翼”であることは疑いようもない。見据える視線の先、甲子園まではあと4勝だ。

そして――青森県予選は、青森、弘前、八戸、六戸の4球場で行われているのだが、この日の第1試合は、ここ青森市営球場だけでなく、すべてがコールド試合だった。勝ったのは青森山田、弘前学院聖愛、八戸工大一、八戸学院光星。第1シードから第4シードまでずらりと並ぶ「私学4強」である。

やはりこの4校がベスト4に勝ち上がるのか(その場合、青森山田は準決勝で古屋敷投手擁する八戸工大一と対戦することになる)。

それとも私学の壁を打ち破るチームが現れるのか(昨夏の4強のうち3チームを破った大湊高校の例もある)。

青森県の代表決定戦は、7月26日、新装なった弘前の「はるか夢球場」で行われる予定だ。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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