遠軽、接戦制して北北海道大会へ @北見東陵球場

打って、打って、打ち勝つ

「エンコーの山には入りたくなかった」

 それが本音なんだと何人もから聞いた。「山」はトーナメントやぐらのこと。2校が北北海道大会に駒を進める北見支部予選は二つのやぐらで行われる。そのどちらに入るか。

 そして「エンコ―」。遠軽高校。昨年の春から、夏、秋、今春と北見支部では負け知らず。当然、同じ山に入りたくはない。

 ちなみに、その今春(と言っても1ヶ月前)の全道大会では準優勝した函館有斗と9対10の接戦を演じた。それも一時は9対1と8点のリード。結果的に追いつかれ、延長サヨナラ負けを喫するのだが、その強力な打撃は北海道の高校野球ファンに轟いた。

 打って、打って、打ち勝つ野球。それが遠軽野球部である。

北見工エース、好投

この支部代表決定戦でも初回に早速、4本のヒットを放って2点を先制。そのまま猛打爆発……とならなかったのは、対した北見工業、高桑投手の好投による。

 185センチの長身から丁寧なピッチングで、強打の遠軽打線をその後は封じ込めたのだ。

 もしかしたら調子は前日の方がよかったかもしれない。前日――実はこの試合、雷雨コールドとなったゲームの再戦だった。高桑投手はその試合でも遠軽を4回までゼロで抑え込んでいたのだ。

 その前日と比べれば、ボールのまとまりはいま一つ。それでも打者のタイミングをうまくずらす見事な投球術で、2回以降、スコアボードにゼロを並べてみせた。

2対1、接戦制す

 4回、北見工業が中田のタイムリーで1点を返し、2対1。中盤以降は拮抗した展開になった。

 とはいえ、遠軽に焦る素振りはまったく見えなかったのも事実。やはり残してきた実績がもたらす自信だろう。最少失点差とは思えない余裕が選手たちに漂っていた。

 加えて如澤投手の出来が、こちらは前日と比べて、明らかによかったこともある。リリースポイントが安定していて、ボールも低めに集まっていた。

 許したヒットは4本のみ。うち2本(と送りバント)で失点した4回以降は、ほとんどピンチらしいピンチを招かず、9回を投げ切った。

 2対1。打って、打って……とはならなかったが、2安打の鶴巻、好打をみせた如澤、さらに(ノーヒットだったが)センスを感じさせる古間木など魅力的なバッターが並ぶ打線にその片鱗は垣間見えた。結果的に、大味な勝利ではなかった分、もしかしたら北北海道大会への布石となったかもしれない。

とにかく、遠軽高校、まずは北見支部予選突破である。

 素振り3万本

 それにしても明るいチームだ。試合前に踊るハカも、闘争心むき出しのオールブラックスとは違い、明るく楽しい。耳を澄ましていたら円陣の中でのこの日の掛け声は「藤井4段は負けたけど、僕らは勝って出場権を勝ち取りましょう」だった。その明るさと楽しさにチームの一体感が映る。

 そして、その源には冬の間、繰り返した素振りがある。素振り3万本。そんな言葉をOBが教えてくれた。エンコーの打撃力の秘密は? 尋ねたら、そう返ってきたのだ。

 過去4度、北北海道大会決勝に進み、すべて準優勝。甲子園目前で涙を流した先輩たちから数えて、何十万本、何百万本と振り継いできたバットと掌のマメの歴史。21世紀枠での春のセンバツ出場はあるが、やはり明るく、楽しく、ダイヤモンドで喜びを爆発させたいだろう。

 打って、打って、打ち勝てるか。北北海道大会は7月15日から旭川スタルヒン球場で始まる。

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』(光文社)にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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