25年目のJリーグ――始まることと続くこと

(写真:アフロスポーツ)

25年目のJリーグ

25年目のJリーグが始まった。

1993年の“あの興奮”からすでに四半世紀。当時のフレーズで言えば「Jリーグのある日常」を、気がつけば25年も僕たちは生きてきたことになる。

変わったことは――と書き出して、その途方もなさにキーボードを叩く指先が止まってしまった。「走りながら考える」Jリーグは、その始まりから改変を繰り返してきたからだ。25年分を振り返るのは容易ではない。

そんな目まぐるしさは時に朝令暮改のそしりを受けることもあった。けれど、とにもかくにも25年後の現在まで存続し、そればかりか当初の1部・10クラブから3部・54クラブにまで拡大しているのだから、“生みの親”も“育ての親”も称賛されてしかるべきだろう。彼らがいたからこそ、Jリーグは生まれ、ここまで育つことができた。

もっとも25年目のJリーグは、これまでとは別次元の大きな転換点。いわば“第二創業”の局面に突入しようとしている(ように僕には見える)。

“親離れ”を志すのは子供の常。ましてテクノロジーの進化が、社会そのものを、そればかりか文明さえも変革しようとしている現在。改革がマイナーチェンジに留まらないのは当然である。

もちろん子が親を凌げるとは限らない――改革がいかに先進的でも成功するとは限らないのもまた、世の常ではあるのだが。

共存から競争へ

そんな「25年目のJリーグ」の開幕戦は、カシマスタジアムで鹿島アントラーズとFC東京の試合を見た。

結果は1対0でFC東京が勝利。決勝点は中島のミドルシュートのこぼれ球がDFに当たってのオウンゴールだった。

実はその得点シーン。今シーズンのJリーグを象徴するような場面だった。

シュートを打った中島以外、関係したのがすべて新加入の選手(鹿島のGK、オウンゴールのDF、そして詰めていた東京の大久保と永井)だったのである。

巨額放映権料という原資を得て、今季Jリーグが行った施策の目玉、「賞金の増額」と「強化配分金の新設」が、クラブの補強意欲を高め、移籍が活発化した結果である。

乱暴に説明すれば、勝てばお金が入る。つまり、好成績を挙げれば強いチームを作ることができる。

その強いチームでまた好成績を残せば、さらに強いチームを作ることができる。そんなポジティブスパイラルを駆け上ることができれば、ビッグクラブへの到達も……というスキームが発動したというわけだ。

逆に言えば、ここでそのスパイラルに乗り損なうと逆転は困難。そんな危機感がクラブの意欲に拍車をかけた面もあったかもしれない。

とにかく今季勝ちたい。今季勝てば……。

「共存から競争へ」と舵を切った新たなJリーグに漂う切迫感である。

FC東京が挑むらせん階段

そんな中、際立った補強をしたのがFC東京である。

獲得したのは3年連続得点王の大久保を筆頭に、永井、高萩、太田、さらにGK林と、いずれも日本代表クラス。これは浦和や鹿島といった、やはり「大型」と呼んでいい補強をしたチームを質的に凌ぐ。

たとえば毎年“オフの主役”として“悪役”扱いされる浦和だが、新加入の顔ぶれを具体的に見れば「選手層が厚くなった」というレベル。ペトロビッチ監督が「(他チームの主力を獲ったと言われるが)もともとうちには昨年勝ち点74を挙げた選手たちがいるのだから」と遠回しに反論した通り、実はスタメンを脅かすような新加入選手はほとんど見当たらない。事実、開幕戦で出場した新戦力はラファエル・シルバだけだった。

これに対してFC東京はスタメンに5人の新加入組が並んだ。その結果、前田や徳永がベンチへ控える豪華な陣容となったのだ。

開幕戦では、昨季チャンピオンの鹿島を下した。内容的には代表クラスの選手たちがそのタレントを発揮したとは言い難いものだったが、ライバルに黒星をつけ、自らは勝ち点3を手にシーズンをスタートすることができた。

積極的な先行投資が実ってFC東京がらせん階段を駆け上ることができるか。ビッグクラブを目指す熾烈な争い――それも今季から始まる新しいJリーグだ。

鹿島に疼く伝統

それにしても鹿島が負けるところを久しぶりに見た気がした。

振り返るまでもなく最後に負けたのはクラブワールドカップ(それも決勝!)でのレアル・マドリード戦。その直前にチャンピオンシップを勝ち、その直後に天皇杯を勝っているから、鹿島が勝つ試合ばかりを見ていた気がしたのだ。

しかし改めて記録をめくり直してみれば、レギュラーシーズンでは実はこれで5連敗目。昨季の終盤戦、日付で言えば10月1日以降、鹿島は全敗(4連敗)でシーズンをフィニッシュしていたからだ。

その後のチャンピオンシップでもホームで浦和に敗れている。

にもかかわらず、Jリーグチャンピオンの座に就き、世界2位に輝き、天皇杯も獲って、過ぎてしまえば勝ちゲームばかりの印象を残してしまうあたりが「鹿島アントラーズ」なのだろう。

つまり、ポストシーズンでしきりに評された「勝負強さ」である。

タイトルを目前にしたときの執着心。つかみ取りにかかる形相。そんなふうに選手を衝き動かす「勝者のメンタリティ」。

すべてはここから始まった――鹿島アントラーズの25周年記念誌にそうあった。

<Jリーグ元年 ジーコ八トリック すべてはここから始まった>と。

1993年5月16日、5対0で飾った最初の開幕戦である。国立競技場で行われたオープニングマッチの翌日。テレビ東京の画面に映し出された見たこともないクロスとゴールの映像が思わず蘇った。

1994年、1995年、1996年……めくるページにJリーグの歴史が滲んでいた。ただの一度も降格せず、それどころか星を重ねたアントラーズの歴史はJリーグのそれでもあった。

巻末には在籍したすべての選手たち。そういえばプレスに配られた(たぶん市販もしている)記録集「FACT&RECORDS」にはリーグ戦の全ゴールも掲載されていた。

そこにはゴールネットを揺らした1428点へのリスペクトがある。今年の開幕戦はノーゴールで敗れた。それでも1429度目の歓喜も間もなくもたらされるだろう。そう思わせる伝統の力がそこにはあった。

強いクラブは歴史の重みを知っている。知っているからこそ語り継ぎ、語り継ぐからこそまた受け継がれる。

だからジーコによって植え付けられた勝者のメンタリティは、いまなおチームの奥底で疼き続ける。そして勝負強くタイトルをつかみ取る。

新しいスパイラルとは別の、普遍的ならせん階段もアントラーズは歩み続けているのである。

変わるものがあり、始まることがある。

変わらないことがあり、続くものがある。

25年目のJリーグが始まった。

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』(光文社)にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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