新たな日本代表の行方は――。

新しい代表のサッカー

実はブラジル戦が楽しみである。

アギーレ監督のサッカーが、わかりやすい形で見える試合になりそうな気がするからだ。

でも、その前にジャマイカ戦があるし、9月の2試合を経て、新たな代表メンバーも発表されている。まずはそのあたりから――。

初陣となったウルグアイ戦(0対2)、続くベネズエラ戦(2対2)とも、システムは「4-3-3」だった。

最大の注目点は、センターバックの森重(ブラジル・ワールドカップでもセンターバックだった)をアンカーに置いたことだろう。

2人のセンターバックの前に、もう一人センターバックを本職とするDFを配し、“掃除役”をさせたのである。

一方、攻撃では、その森重が二人のセンターバックの間に下がり、3人でボールを動かしながら相手FWのプレッシャーをかわして、そこから前線へのロングボールを狙う場面が多かった。

トップに当てたボールを拾って……と目的通りにうまくいくシーンはあまりなかったが、ザッケローニ監督の頃の「ボールを回して相手を崩すサッカー」から、前線にシンプルにボールを入れて起点を作り、そこから攻撃を仕掛けていくサッカーへの「転換」は明らか。

2試合ともミスから失点し、勝利を飾ることはできなかったが、「監督が代わったこと」をはっきりとわからせるには十分な2試合だったと思う。

1トップとアンカー

「監督が代わったこと」を内外に知らしめたのは「代表メンバー」も同じだった。

初招集が5人。ザッケローニの4年間で国民にも浸透した顔ぶれを大きくいじり、「新たな日本代表」をアピールした。

もっとも、その5人のうち、今回も引き続き選出されたのは2人だけだから、いまのところ発表されるメンバーは“お試し”的な色合いが強いと言っていいだろう。

ちなみに前回メンバーから8人が入れ替わった今回の代表で目を引いたのはハーフナー・マイクだ。

言うまでもなく「4-3-3」の前線の「3」の真ん中を務める選手。9月シリーズでは、ウルグアイ戦で長身の皆川(アギーレ監督が選んだ選手だ)、ベネズエラ戦で万能タイプの大迫を起用したが、今回は2人とも選外。

代わりにやはり長身のハーフナー・マイクを選んだのだ。

最終ラインからロングボールを入れるサッカーをする場合、カギとなるポジション。ここを任せられる選手を、これまでの多くの監督同様、アギーレ監督も探し続けることになりそうだ(9月の試合では、試合途中からこのポジションに入った岡崎が結局一番いい仕事をしていた)。

それからもう一つ、森重が「MF」で選出されていた。

9月の2試合での彼のアンカーを、アギーレ監督が気に入ったという証拠だろう。当面、「森重システム」がこのチームの軸となることを示す記号に見えた。

ブラジル戦、そしてその先の……

森重をアンカーに置き、中央にセンターバック3枚を配置する形で、相手の攻撃を封じ、そればかりか最終ラインからのロングボールを攻撃の基本とすることで、さらに失点のリスクを減らすサッカー。

……こんなふうに表現するとアギーレ監督のサッカーを僕が否定的に見ていると思う人もいるかもしれないが、決してそんなことはない。

サッカーというのは相対的な競技だから、相手との力関係によってゲームの状況は変わり、その変わりゆく状況に応じてプレーすることこそが、サッカーという競技で勝者になるために必要な能力だと思っているからだ。

日本人の長所であるスピードやテクニック、組織力を生かしてパスワークで相手を凌駕しようとしたザッケローニ監督が「理想」を求めたとすれば、アギーレ監督はより「現実」に即したサッカーをやろうとしているというだけのことだ。

そもそもアギーレは“格下チーム”を率いて結果を残してきた監督。言い換えれば、“格上”を相手にしたときに威力を発揮するサッカーを得意としている指揮官だ。

そう考えれば、日本代表監督となった彼が(いまのところ)やろうとしている戦術は、理にかなっている。

9月の2試合では、守備重視のはずのサッカーで4失点を喫し、勝利を挙げることはできなかったが、それはまだこのチームが立ち上がったばかりゆえのこと(ポジションの並びも違えば、顔ぶれも違うのだ。失点の最終的な原因は個人のミスだったが、それ以前にぎこちなくて危なかったしいプレーの連続だった)。

彼の指向するサッカーがチームに浸透していけば、“格上”相手にもしぶといゲームができるようになるだろう。たとえばブラジルを相手にしても……。

そう、だからこそ、ブラジル戦が楽しみなのだ。まだ4試合目の段階。それでもアギーレ監督のサッカーの片鱗は見えるのではないか。そんな期待が膨らむのである。

その一方で、不安もないわけではない。

ワールドカップでの惨敗に、サッカーファンはもちろん、協会やメディアも強いショックを受けてはいるが、ワールドカップで「世界の強豪」と戦う前に、日本はアジアを勝ち抜かなければならない。

そして、そこでの相手は“格下”なのだ。

「アジアの強国」という微妙な立場にいる日本の状況に、アギーレ監督が柔軟に対応できるか……。いや、そんな柔軟性を選手が発揮できるか。

新しい日本代表のチーム作りの道中、それもまた持ち続けていたい視点である。

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』(光文社)にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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