カナダは1980年代から、早獲り方式の漁獲枠を導入した後に、1990年前後に個別漁獲枠に切り替えました。個別枠の導入が雇用等に与えた影響をまとめたレポートがこちらにあります。

Employment Impacts of ITQ Fisheries in Pacific Canada (2005)

個別漁獲枠制度が導入された6つの漁業に対して、社会経済的な統計をもとに、その効果について検証をしています。その結果、個別枠の導入によって、以下のような変化があったことがわかりました。

  • 全ての漁業で生産金額が上昇した。
  • ほとんどの漁業で賃金が上昇し、雇用(人×年)が増えた。
  • 商品の価値が高まったことで、漁業者にも加工業者にも利益があった。
出典:http://www.dfo-mpo.gc.ca/Library/336921.pdf page iii

漁期が延びて単価が上がった

カナダ太平洋側のオヒョウ(カレイ)漁業は1990年までは早い者勝ち方式で、1991年から個別漁獲枠方式に切り替えました。漁獲量は1980年代中頃から、大きな変化はありません。個別漁獲枠方式にしたからと言って、海の生産力が増えるわけではないからです。個別枠の導入による顕著な変化は、漁期が伸びたことです。先のブログでも示したように、早獲り競争によって1990年には6日まで短縮していた漁期は、個別漁獲枠制度が導入された1991年から250日に延びました。結果として、価値が高い鮮魚が長期的に供給されることで、1kgの単価は、6.29USDから、8.81USDへと40%上昇しました。より早く、より多く獲る漁業から、より高く売る漁業への転換が進んだ結果です。

漁獲枠が守られるようになった

早獲り競争時代は、漁獲量が漁獲枠に近づくと、「あと24時間で終漁」というような通知を出していました。みんながラストスパートをすると、どうしても「多く獲り過ぎちゃった」ということになります。下の図は、漁獲枠と漁獲量の関係です。早獲り競争時代は、年によって20%近い枠の超過がありました。早獲り方式で漁獲量を正確にコントロールするのは極めて難しいのです。個別枠になってからは、漁獲枠の超過が皆無です。みんなが自分の枠を守れば、全体の枠は守られるからです。個人の漁業者が獲りすぎてしまった場合は、漁獲枠を余らせている漁師の枠を購入せねばならず、結果として、全体の漁獲量は枠に収まる仕組みになっているのです。

オヒョウと銀だらの漁獲枠と漁獲実績
オヒョウと銀だらの漁獲枠と漁獲実績

離島の活性化に繋がった

興味深いのが、水揚げ場所の変化です。下の表は、水揚げ場所のシェアを示したものです。早獲り競争時代は、ほとんどの漁獲が加工能力のある本土(Lower mainland, North Coast)に集中していました。一方で、バンクーバー島への水揚げはほとんどありませんでした。短期集中漁獲に対応するキャパシティがなかったからです。1991年に個別枠を導入してから、水揚げがバンクーバー島に移行していきます。個別枠になってからは、水揚げが短期間に集中することがなくなったので、加工の処理能力は小規模で十分です。単価を上げるために漁場と近い離島の水揚げが増え、結果として半分がバンクーバー島に水揚げされるようになり、地域の雇用に繋がっています。また、オヒョウ漁をできる漁船のライセンス数は1980年代から変わっていませんが、バンクーバー島に所有者がいる漁船のシェアが増えています。

オヒョウの水揚げ場所
オヒョウの水揚げ場所

他にも興味深いデータが数多くありますので、興味がある方はぜひ目を通して見てください。