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石原元都知事、豊洲市場用地取得をめぐる公金訴訟裁判に参加へ

加藤順子ジャーナリスト、フォトグラファー、気象予報士
石原氏は法廷でも「記憶にない」を主張するのか(3月20日、豊洲の百条委員会にて)(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

東京都中央卸売市場の豊洲市場(江東区)の用地取得をめぐって東京地裁(林俊之裁判長)で行われている住民訴訟に、石原慎太郎元都知事が都側に補助参加する意思を申し出ていたことがわかった。

都が2011年に、豊洲市場用地の所有者だった東京ガスから土地を取得した際、土壌汚染があったにもかかわらず汚染を考慮しない価格で購入したのは瑕疵担保責任の放棄にあたるとして、都民40人が都に対し、当時の都知事だった石原氏へ土地取得額に相当する約578億円の損害賠償を請求するよう求めている。提訴は2012年8月で、裁判は5年近く続いている。

東京都はこれまで、石原元都知事に責任はないと主張してきたが、小池百合子都知事は今年1月20日の定例会見で、従来の主張方針を変える可能性を表明。弁護団を全面的に入れ替えた。新弁護団は4月27日の進行協議までに方針を決め、新たに証拠を提出する予定だったが、3月に開かれた都議会の豊洲の百条委員会(豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会)で膨大な資料が追加公開されたことから、結論を先送りしていた。

被告の東京都と原告団に届いた地裁からの通知によると、5月11日付で石原氏側の代理人から、裁判所に補助参加申出書が提出されたという。補助参加人は、被告とは独立した立場で、被告の訴訟行為に反しない範囲で不服申立てや控訴等ができる。

石原氏の3人の代理人の一人、吉野弦太弁護士(第二東京弁護士会)は、これまで訴訟に参加してこなかった石原氏がこの時期に自らの意思で参加を決めた理由を以下のように話す。

「石原は、これまでの4年間、東京都の対応を全面的に信頼してきた。それが、小池都知事の就任後、都が訴訟の方針を見直す可能性を表明し、未だに態度が明らかではない。仮に方針変更となった場合、都と原告の間で馴れ合い的な訴訟になることを懸念している。裁判に参加することで、都の訴訟のあり方を直接『監視する』といえば厳しい言い方になるが、しっかりと見届ける。方針変更なら、自ら堂々と法的主張を法廷で明らかにしたいという思いから参加を決めた」

石原氏が記者会見等を通じて主張してきた事実関係については、「当然ながら石原の認識・記憶に基づいて主張を行っていくつもりだが、これまで報じられたような表現の内容や表現の強さは変わると思う」。

原告団も、石原氏の訴訟参加について歓迎の意向だ。

「石原さんの責任を問う裁判なので、法廷で自らの態度を明らかにしたうえで、司法に主張が正しいかどうかを判断されることは必要だ。これまでの都側と同様の主張なのかどうか、あるいは都議会の百条委員会では石原さんは『記憶にない』とお答えになることも多かったが、裁判でも同じ主張をするのかに注目していきたい」(原告団事務局長大城聡弁護士、東京弁護士会)

次回の口頭弁論期日は5月31日の予定。

ジャーナリスト、フォトグラファー、気象予報士

近年は、引き出し屋問題を取材。その他、学校安全、災害・防災、科学コミュニケーション、ソーシャルデザインが主なテーマ。災害が起きても現場に足を運べず、スタジオから伝えるばかりだった気象キャスター時代を省みて、取材者に。主な共著は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)、『下流中年』(SB新書)等。

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