村山謙太、紘太がともに日本歴代6位の好記録 世界選手権標準記録も突破

5月9日に宮崎県延岡市の西階陸上競技場で行われたゴールデンゲームズinのべおか。男子5000mでは村山紘太が日本歴代6位となる13分19秒62で2位、男子1万mでは村山謙太(ともに旭化成)がこちらも日本歴代6位となる27分39秒95で優勝を果たし、8月に中国・北京で行われる世界選手権の参加標準記録をそろって突破。兄弟での世界選手権出場に大きく近づいた。

紘太がレース前に立てたプランは「3000mを8分3秒、4000mを10分45秒で通過し、そこからペースを上げて(世界選手権参加標準記録の)13分23秒を破る」というもの。実際はそれより2秒ほど遅れる展開だったが、焦らず終盤まで集団の中で身を潜めた。4000mで初めて自分から仕掛けたが、思うように体が動かないと判断すると、一度下がり、残り1周からスパート。トップには届かなかったものの、自己ベストを10秒以上更新してみせた。

「今日は自分から攻めるのではなく、4000mまでしがみつこうと思っていました。最後の1周も残り200mまで持てばいいと思ってスパートしましたが、結局、最後まで押し切れました。終盤まで無駄な動きをしなかったことがよかったのだと思います」

紘太は城西大入学当初から「世界と戦うことが目標」と公言する意識の高い選手だった。だがタイムを狙う気持ちが強すぎ、「前半から速いペースで突っ込みたい」という衝動を抑えきれず、オーバーペースに陥ってしまう場面が多かった。勝負を狙うレースでも前半から無駄に揺さぶりをかけ、自滅することもあった。

だがそうした姿も昨年から減ってきている。理由は速いペースでのトレーニングが消化できるようになり、絶対的な走力が上がったこと。そして少し抑え目に入る感覚で走った方が、結果が出せるという手応えを得たためと本人は話す。4月18日の織田記念5000mでは「勝負とタイムの両方を求めてしまった」と中盤で無駄な動きを見せる悪い癖が出たが、それでも13分31秒35の自己ベスト。この延岡ではレース内容を修正し、目標以上の結果を手にすることができた。

一方の謙太もペースメーカーを務めたP・タヌイ(九電工)の刻む1000m2分46秒前後のペースについていくことに成功した。5000mの通過13分50秒も予定通り。終盤、設楽悠太(Honda)に前に出られるシーンもあったが冷静だった。「やめてくれと思いましたが、後で抜ければいいと考えることができたんです。体の状況も確認できていたので、なんとかなるなと思っていました」と気持ちの上で余裕があった。

謙太もこの日の快走の要因をメンタル面に求める。

「昨年は無難にまとめようと考え、レース前から弱気になることもあったのですが、今日は最後まで強気で攻められました。大学4年間、大八木弘明(駒澤大)監督から教えられ続けたことが、今日は出せた気がします」

昨年2月の丸亀ハーフで日本人学生最高記録となる60分50秒、4月の兵庫リレーカーニバル1万mでは27分49秒94で走り、学生界では圧倒的な力を誇っていた。しかし悲願の総合優勝を狙った箱根駅伝2区では慎重な走りに終始し、区間4位。「無難に走ろうとしてしまった」はこのレースを指すことは容易に想像がつく。しかしこの冬はハーフマラソンへの出場を回避し、トレーニングに集中。積み上げてきたものへの自信があった。それが強気の姿勢を貫けた理由だ。

2人が旭化成の練習に合流したのは3月。現在も練習メニューは学生時代のものをベースにしているが、少しずつアレンジも加えている。川島伸次旭化成コーチはこの2ヶ月を振り返る。

「謙太は最初、短めの距離でスピード練習をしていましたが、4月の兵庫リレーカーニバルでは失敗しました(日本人1位もタイムは28分09秒28)。体が軽すぎて、序盤に浮いたような走りになってしまったんです。その反省を踏まえて練習の距離を伸ばし、軽すぎず、重すぎずの体調を作れたことが今日の結果につながりました。紘太もスピードの意識が強いですが、先のことを考えてインターバルの距離を伸ばしていますし、自分からジョグの時間も長めに取っています。そうした練習の手応えを本人たちも感じているようです」

ともにさらなる記録短縮への課題も見えた。昨年度まで紘太を指導していた櫛部静二城西大監督はこの日、4000mで動いたことで結果的にタイムを失ったと指摘する。

「あそこで彼が動かなくとも、全体のペースが下がることはなかったでしょう。しかし自分で動いたことで消耗してしまいました。彼の持ち味はラストのキレですが、今日の最後の400mは56秒台。そこをもっと短縮できるはずです。レースの流れを見て、動くタイミングを遅らせることができれば、もっと余力のある状況でスパートできると思います。ただ成長していることは間違いありません。このまま夢であるダイヤモンドリーグを目指すなど高い目標を持ち続けて欲しいと思います」

紘太は400m10本のインターバルトレーニングでも、最後の1本を51秒台でまとめられる選手。武器であるスパート力を発揮するまでのレース運びにまだ改善の余地を残すということだ。

謙太はレース中の余裕度を上げることを自身の課題として挙げた。

「レース中の余裕度が上がれば、気持ちを切らさず攻め続けられますので、もう一段高いレベルでペースを刻めることを目指します。今日の感じだとまだ日本記録は狙えません。でも今の練習を続けていけば、その力はついてくるはずです」

レース後、揃って「これで可能性が広がった」と自身の今後に期待をかけた2人。マラソンの名門でどこまでその力を伸ばすか。まずは6月の日本選手権で、世界選手権代表の座を決める走りを目指す。