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「掛け声だけでは不十分」初心者と一緒に登山を楽しむために必要な5つのアドバイス

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
ブロッケン *記事の中の写真はすべて筆者が撮影

登山は自然環境の中で過ごすアクティビティです。街の快適さとは別世界です。

安全の為に必要な装備快適グッズがあれば事足りるわけではありません。初心者と一緒に出掛けた時、楽しい山の思い出をつくるために必要な5つのアドバイスをご紹介します。

お父さんが張り切る親子登山
お父さんが張り切る親子登山

さぁ、登山の基本装備はリュックサックに詰めて用意万全。おっと、岩稜歩きだったらヘルメット!を持っていきます。

私は登山届は便利で簡単な「山と自然ネットワークコンパス」で行っています。初めの登録をあらかじめ済ませておくことをお勧めします。

朝陽を受けて輝く
朝陽を受けて輝く

1:歩くスピードは平地の半分以下にしましょう。

通勤通学で利用する駅の階段と同じくらいの段差になるように丁寧に足を運びます。山歩き初心者の出だしはついつい早歩きとなるので注意が必要です。

登る速さは1時間当たり標高差300mが目安です。仲間の体調や息遣いに気配りします。ちょっと遅いかな?というくらいが良いでしょう。初心者はあなたの背中が見えないことに不安を感じるものなのです。歩行速度を調整できるのは先頭を歩く自分だと認識しましょう。

2:凡そ30分毎に2分程度の短い休憩をとりましょう。

疲れてから休むのではなく疲れる前に休むようにしましょう。登山道を塞がないスペースがあったときに休む感じでよいでしょう。

標高を上げるにつれて景色は大きく変化していきます。周りの景色や足元の草花、小鳥のさえずり、吹き抜ける風など感動ポイントを休憩のタイミングで話してコミュニケーションをとります。この時の受け答えで初心者の体調変化に気づくことも多いものです。

ほかの登山者とのすれ違い、追い越しが可能な場所で座り込まずに休憩することを立ち休憩といいます。たった2分程度であっても心拍数を落ち着かせられます。この時に水分や行動食を少し口に入れるようにします。

汗冷えを感じる前に歩き出すというイメージを忘れずにしてください。

槍ヶ岳を目指して
槍ヶ岳を目指して

3:大丈夫?という声掛け、そんなに心配なら手本を示すようにしましょう。

初心者は何が大丈夫なのかがわからないものです。「行動食を一つ食べましょう。水を一口二口飲みましょう。」等と具体的に指示して、自分自身が模範を示すことが大切です。初心者が疲れて動けなくなる前にパフォーマンスの低下を防ぐことが大切です。

4:気をつけて!掛け声だけでは十分ではありません。  

何に気をつけるのか、初心者はわからないことが多いのです。足場が不安定だったり、段差が大きい場所では掴むと良い岩などのホールドや姿勢を具体的に指示します。怖がり動きがぎこちない時は直接手を差しのべて安定させると良いでしょう。

アルプスの岩稜を行く
アルプスの岩稜を行く

5:歩き出しは少し肌寒い位がちょうど良いのです。

衣服の脱ぎ着は小まめに行いたいものです。どの程度着ておけば良いのか。初心者はなかなか分かりにくいものです。そのような時には先ずは歩き始めましょう。15分位を目処に体温調整を兼ねた小休憩をとり、本人の納得のうえで衣類調整します。

「歩く前に薄着するように言いましたよね。」などと怒ってはいけません。初心者の楽しい気分が下がってしまいます。穏やかに対応します。体験は学びです。

ご紹介したポイントは子供や家族、初心者を山に連れていくケースです。

山岳サークルやクラブがより大きな山やルートに挑戦したり、鍛えたり、そういった目標で山に行く方には甘いかもしれません。

山や自然を好きになり、気象や怪我のリスクを受け入れ、対応できるようになるための最初のステップです。

この夏、大切な人を自然の中に連れていき、絶景を見せてあげてください。

「道に迷ってしまった時、するべき5つのこと」 ⇒ こちら

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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