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トイレの汚水が逆流する兆候 浸水時のトイレ対応を考える

加藤篤特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事
原案:加藤篤(NPO法人日本トイレ研究所)、画像制作:Yahoo! JAPAN

トイレがなければ生活できない

2018年の西日本豪雨、2019年の台風、そして2020年の九州豪雨と近年は大雨等による水害が頻発しています。「過去○年で最大の雨量」や「観測史上最大雨量」などというフレーズに慣れてしまうほど、最近の水害は深刻です。そして、日本中どこであろうと、水害のリスクがあります。

水害が起きると、建物が流されたり、辺り一面が浸水したりするなどの被害が発生します。それにより停電や断水、また処理施設が被害を受けることで汚水を流すことができなくなることが考えられます。水害への対応は、安全なところへの避難が最優先で、次に避難生活を送るための備えが必要です。避難生活の備えとしてすぐに思い浮かぶのは、水や食料の備蓄だと思います。ここで抜け落ちがちなのが「トイレの備え」です。いくら安全な場所と食料が確保できていたとしても、トイレがなければ生活はできません。

そこで、本記事では「浸水時のトイレ対応」について説明します。

浸水時の逆流とは?

大雨で洪水等が起きる恐れがあるとき、私たちは安全なところに避難する必要があります。安全なところというのは、洪水の被害を受けないエリア、もしくはマンション等であれば上階になります。前者は被害を受けないエリアなので、トイレに関しても通常どおり利用できると考えられます。一方で後者は、浸水という状況下で生活を継続しなければならないため、トイレ対応が必要になります。

まずは、建物の給排水設備の仕組みを理解することが必要です。大まかに示すと下図のようになります。建物のトイレ、キッチン、バスなどから出る汚れた水は、排水管という管の中をとおって流れていきます。建物によっても異なりますが、建物の下で1つにまとめられて敷地の外の下水道まで流れていきます。

大雨で辺り一面が浸水するという状態は、下水道や地中の排水管も満水になっていることが考えられます。あまりにも雨量が多くて排除しきれないから、水があふれているわけです。

以前に「大地震の影響でトイレの排水管が壊れている場合に、水洗トイレを使うと汚水が溢れたり、逆流する危険性がある事を知っていますか?」という質問を2000人にしたところ、「知らない」と回答した人は44.4%でした。建物の設備の仕組みに関する情報をもっと説明する必要があると思います。

下図は、床下浸水という状況を想定した図です。1階の下部まで満水ということです。このような状況で、上階から汚水を流した場合、どのようになるでしょうか? 汚水は消えてなくなるわけではないので、管の中を重力にしたがって流れていくため、どこかから溢れ出すことになります。その可能性が高いのは、下図で言えば1階のトイレとなります。1階のトイレから汚水を流しても、流れない、もしくは敷地外の汚水が逆流してくることも考えられます。以上が、逆流するときに排水管で起きていることです。

原案:加藤篤(NPO法人日本トイレ研究所)、画像制作:Yahoo! JAPAN
原案:加藤篤(NPO法人日本トイレ研究所)、画像制作:Yahoo! JAPAN

逆流の兆候を把握するには?

基本的には、辺り一面が浸水しているときは水が引くまでは、水洗トイレを使用しないことをおすすめします。理由は下階に被害をもたらす可能性があるからです。

では、どのような状況になったら、水洗トイレを使わない方がよいかを考えてみます。家庭の便器には水が溜まっていますよね。これは、便器の汚れを防ぐという意味もありますが、主目的は排水管から臭気や虫が室内に入ってこないように水で蓋をしているのです。つまり、通常、排水管の中は空気があります。そのため、逆流等が起きる場合、まずは便器から空気が吹き出します。「便器に溜まっている水がポコポコと音を立てている」ということを聞いたことがありませんか?これは、管が詰まるなどの理由で汚水が流れず、それが原因で空気が吹き出しているのです。ですから、便器に溜まっている水が繰り返しポコポコと音がしている、もしくは溜まっている水が跳ね出したときは要注意です。たとえば、便器の蓋を閉めておき、その蓋の内側が跳ね出した水で汚れているときなどは、その兆候です。このような兆候を把握したら、上階の人は汚水を流さないようにすることが必要です。

逆流時の緊急対応

便器に溜まっている水が繰り返し跳ね出す場合は、逆流する兆候です。前述のとおり、上階の人は汚水を流さないようにすることが必要です。これについては、逆流の兆候があったら、どのような方法で周知するかをマンション等で決めておくとよいです。周知徹底が間に合わないこともあります。そのときは、緊急対応として水のうをつくり、それを便器の中に詰めることで対応します。水のうのつくり方は、大きめのポリ袋(45リットル程度)を2~3重に重ね、袋の中に半分くらい水を入れ、空気が入らないようにして口をしっかりとしばります。これを便器の中に詰めることで逆流を抑える効果があります。

携帯トイレが必要

これまでの内容をまとめますと、浸水時は、停電や断水により水洗トイレに流す水が出ない、もしくは汚水処理施設が被害を受けているので汚水を流すことが出来ない、または床下浸水等により排水管や下水道が満水になっているので汚水を流せないなどの理由で、水洗トイレが使えなくなることが考えられます。

このようなときでも、私たちは排泄することが必要です。そもそも排泄をがまんしつづけることはできませんし、すべきでありません。できるだけトイレに行かなくて済むように、水分を控えてしまうと脱水症等により体調を崩すので、それも避けなければなりません。

震災時は、時間が経てば仮設トイレ等が配備されるかもしれませんが、水害時は屋外に出ることができません。つまり、避難しているその場所で何とかする必要があります。このようなときに役立つのが「携帯トイレ」です。

携帯トイレとは便器に取り付ける袋式のトイレで、吸収シートや凝固剤を入れて、うんちとおしっこを安定化させる製品です。携帯トイレのメリットは、停電や断水、または汚水を流せなくなったとしても、トイレの個室と便器は何ともないので、それらを上手く活用できることです。絶対に備えて頂きたいと思います。

参考:携帯トイレの使い方

原案:加藤篤(NPO法人日本トイレ研究所)、画像制作:Yahoo! JAPAN
原案:加藤篤(NPO法人日本トイレ研究所)、画像制作:Yahoo! JAPAN

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事

災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、小学校教諭等を対象にした研修会、トイレやうんちの大切さを伝える出前授業、子どもの排便に詳しい病院リストの作成などを実施。災害時トイレ衛生管理講習会を開催し、人材育成に取り組む。TOILET MAGAZINE(http://toilet-magazine.jp/)を運営。〈委員〉避難所の確保と質の向上に関する検討会・質の向上ワーキンググループ委員(内閣府)、循環のみち下水道賞選定委員(国土交通省)など。書籍:『トイレからはじめる防災ハンドブック』(学芸出版社)、『もしもトイレがなかったら』(少年写真新聞社)など

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