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新型コロナが生み出すトイレ不安 トイレを警戒するより自分の手を警戒する

加藤篤特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事
(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルス感染症によって社会は100年に一度と言われるほどの大きなダメージを受けています。集まる、触れ合うという、今まで良しとされていたことが、前触れもなくルール変更で急に「ダメ!」となったわけですから、慌てます。そもそも、都市という人口密集スタイルがよくないので、根本的に考え直す状況にあります。

今のところワクチンや治療薬がないこと、そして自分が軽症もしくは無症状だとしても、他人に深刻な影響を及ぼす可能性があるなど、課題が山積です。このように不確定要素が多く、先行きが見えないと不安が募ります。そして、不安が増殖すると異常な行動を個人単位だけでなく集団でも引き起こす可能性があります。

不安の増殖が異常な行動を引き起こす

それは過去の歴史を見れば明らかです。

ヨーロッパを襲ったペストのときは、患者と目を合わせるとうつると言われ、また、蛇の皮やカエルの心臓などが万能薬とされたり、体の毒を抜くために血を抜いたりする根拠のない治療が行われたそうです。絶望的な集団心理は、鞭打ち苦行という謎の行進となり、暴徒化しました。日本でコレラが流行したときも混乱が生じました。患者が吐いたものが肥料になるというデマが流れ、畑一面にぶちまけた人もいたそうです。

とにかく不安が蔓延すると、とんでもないことが起きるということです。

当時、ペストやコレラが流行したときは、感染症の存在自体が分からなかった時代のことです。原因が分からないまま、多くの人が亡くなる事態です。一方、新型コロナウイルスがどういったもので、どのように行動すれば感染を防げるかは分かっています。新型コロナウイルス自体は、相手から飛びかかってきたりはしませんし、手についたとしても噛みついたりもしません。そういう意味からいうと、かなり防御しやすい相手といえます。

トイレ不安がもたらすダメージとは?

今回は、新型コロナウイルスによって生じる「トイレ不安」について考えてみます。

「トイレ不安」によって引き起こされるダメージは大きく2つあります。

1つ目のダメージは、トイレを危険な場所と思い込むことで、できるだけトイレに行かなくて済むように水分摂取を控え、脱水症などで体調を崩してしまうことです。

2つ目のダメージは、トイレが危険な場所として意識づけられると、トイレの管理者はそれをできるだけ払拭するため、頻繁に消毒することを強いられ、疲弊してしまうことです。

トイレ不安の払拭を考える

では、トイレ不安を払拭するために、それぞれについて考えてみます。

たしかにトイレは不特定多数の人が利用し、ドアの取っ手や洗浄レバーなど、同じ箇所に触れるのでウイルスが手につく可能性があるのは事実です。また、便に排出すると言われているので、とくに水様便であれば飛散することが考えられます。

ですが、手についたからといって健常な皮膚からは感染しないと言われています。むしろ、排泄を我慢して体調を崩し、免疫力を下げる方が感染リスクが高くなると考えられます。

ですから、排泄リズムは崩さずに、行きたいときにトイレに行くことが大切です。手についたとしても、しっかり手洗いすれば問題ないわけです。もちろん、手洗いするまでは、手で顔を触ってはだめです。

床に関しては、とくに新型コロナウイルスにおいては、咳やくしゃみなどによる飛沫によって床が汚染されるので、トイレ以外の床も同様にリスクがあります。そのためトイレだけを必要以上に特別視する必要はないと考えられます。むしろ、公共の場の床は基本的に不衛生と思う方がよいです。以前は病院のトイレに、トイレ専用のサンダルがあったと思いますが、今はないと思います。トイレの床であろうと、それ以外の床であろうと同じということです。むしろ、サンダルを共用するほうが感染のリスクが高くなる可能性があります。

ただし、災害時の避難所のように断水によってトイレが通常利用できず、不衛生になりがちな場合はトイレ専用のサンダルを設置して、生活ゾーンに汚染物質を持ち込まないようにすることは必要です。

次にトイレ消毒については、無理のない範囲で定期的に実施すればよいと思います。どんなに高頻度で消毒したとしても、その直後にウイルス保有者がそのトイレを使用したら、ウイルスが手につく可能性があるからです。

では、消毒しなくてもよいかというと、そうではありません。なぜかというと、定期的に清掃および消毒し、管理されているという事実は人に安心を与えますし、清潔に管理されているトイレは、より丁寧に利用されます。

また、トイレでは新型コロナウイルスだけを気をつければよいのではありません。ノロウイルスや腸管出血性大腸菌など、様々なリスクがあります。ですから、感染予防として、管理者と利用者が協力しながら清潔な状態を保つことが必須です。

汚れた手で顔をさわらない、手洗いを徹底する

いずれにしても、汚れた手で顔を触らないことと手洗いの徹底が重要ということです。

トイレ後の手洗いの徹底は、新型コロナウイルスに限ったことではなく、他の感染症についても同様です。つまり、今だけではなく、いつもやるべき、ということになります。

あともう1つ注意すべきことは、換気です。3密の1つに「密閉空間であり換気が悪い」というのがあります。トイレにおいても出来れば2方向の開口部を確保して、こまめに換気することが必要です。また、換気扇やガラリ等をしっかり掃除して、所定の換気能力を発揮できるようにすることが必要です。当たり前ですが、トイレに入ったときに、不快な刺激や臭気がするような場合は利用を避けた方が良いです。

特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事

災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、小学校教諭等を対象にした研修会、トイレやうんちの大切さを伝える出前授業、子どもの排便に詳しい病院リストの作成などを実施。災害時トイレ衛生管理講習会を開催し、人材育成に取り組む。TOILET MAGAZINE(http://toilet-magazine.jp/)を運営。〈委員〉避難所の確保と質の向上に関する検討会・質の向上ワーキンググループ委員(内閣府)、循環のみち下水道賞選定委員(国土交通省)など。書籍:『トイレからはじめる防災ハンドブック』(学芸出版社)、『もしもトイレがなかったら』(少年写真新聞社)など

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