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この夏は猛暑の可能性 太平洋高気圧は北へ張り出しが強い

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
日本の夏の平均気温は100年あたり1.16度の割合で上昇している(筆者作成)

 この夏の天候予想が発表された。太平洋高気圧が北側へ強く張り出し、猛暑となる可能性がでてきた。さらに今年と共通点の多い2018年も猛烈に暑い夏だった。今年2月から季節予報モデルが新しくなり、精度向上が期待される。

全国500か所以上で今年一番の暖かさ

 このところの寒さから一転、きょう(26日)は全国的に晴れて、気温が高くなりました。東京は午後2時半過ぎに、今年一番となる14.7度まで上がりました。また、記録的な大雪に見舞われた札幌も最高気温が8度となり、4月上旬の暖かさです。

 日差しに春を感じるようになっても、まだまだ冬コートが手放せないなか、早くも夏の天候の見通し(暖候期予報)が発表されました。

【暖候期予報】この夏の平均気温は全国的に平年より高くなる見通し(ウェザーマップ作画)
【暖候期予報】この夏の平均気温は全国的に平年より高くなる見通し(ウェザーマップ作画)

 ひとことで言うと、この夏は全国的に気温が平年より高くなる可能性があります。夏だから暑くて当たり前と思うのもうなずけますが、最近の暑さは当たり前を通り越して尋常でない気がしています。この夏は普通でない暑さになるかもしれないのです。

太平洋高気圧の張り出しに着目

 そのカギを握るのが太平洋高気圧(夏の高気圧)の張り出しです。この夏は北側への張り出しが強いとみられています。日本列島が太平洋高気圧に覆われれば覆われるほど、暑さは厳しく、そして長い期間、猛暑になります。

太平洋高気圧の張り出しを模式的にしたもの(筆者作成)
太平洋高気圧の張り出しを模式的にしたもの(筆者作成)

 手元にある資料からこれまでの暖候期予報を振り返ってみると、太平洋高気圧の予想にはいくつかのパターンがあることがわかります。ひとつは北側への張り出しが強い、二つ目は西側への張り出しが強い、三つ目は日本付近への張り出しが弱いパターンです。

【暖候期予報】太平洋高気圧の予想(2015年~この夏)筆者作成
【暖候期予報】太平洋高気圧の予想(2015年~この夏)筆者作成

 今年と同じように「北側への張り出しが強い」と予想したのは4年前にもありました。2018年はラニーニャ現象により東京都心が大雪に見舞われるなど、全国的に寒さが厳しく、今年と共通点が多い冬でした。

2018年は猛烈に暑かった

 いつものように天気ノートから4年前の夏を振り返ってみました。ノートをめくり、最初に目についたのが関東甲信地方の梅雨明けです。2018年は史上最も早く6月29日に梅雨が明けました。ここから長い長い猛暑が始まったのです。

 7月23日は埼玉県熊谷市で日本歴代1位となる最高気温41.1度を記録し、8月3日には愛知県名古屋市で初めて40度を超えました。天気ノートには暑さの記録があふれています。全国の猛暑日地点数はのべ6,000か所を超え、「113年で最高の夏」と言われた2010年を軽々と越えたことに驚いた記憶があります。

季節予報モデルが新しく

 この夏の暑さに注目するもうひとつの理由は今年2月から、長期予報の根幹をなしているスーパーコンピュータを使った季節予報モデルが新しくなったからです。専門的には「大気海洋結合モデル」と言い、昨年ノーベル物理学を受賞した真鍋淑郎さんが基礎を築きました。

大気海洋結合モデルの概念図(気象庁ホームページより)
大気海洋結合モデルの概念図(気象庁ホームページより)

 新しい季節予報モデルでは大気と海洋の関わり合いをきめ細かく計算できるようになり、これまで苦手としていた大気の変動が自然に近い形で表現できるようになりました。そのため、夏と冬の気温予想が向上したそうです。

【参考資料】

気象庁:この夏の天候の見通し(6月~8月)、2022年2月25日発表

気象庁:全般季節予報支援資料 暖候期予報 

予報期間:2022年3月~2022年8月、2022年2月25日

気象庁:新しい大気海洋結合モデルを利用した季節予報の精度向上、2022年2月9日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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