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ウクライナ情勢と天気の関わり

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
温暖な気候のウクライナは小麦の生産が盛んで、欧州の穀倉地帯とも呼ばれる(写真:イメージマート)

 ウクライナは北緯50度付近に位置していながら、冬の寒さは札幌とあまり変わらない。天気との関わりは深く、クリミア戦争は天気予報の発端ともなった。今後、首都キエフは22日(火)頃、天気が崩れる可能性がある

キエフと札幌の共通点

 改めて世界地図を広げてみる。ウクライナがヨーロッパとロシアの接点に位置する様子がよくわかります。首都のキエフは北緯50度、日本で言えば北海道の北あたりです。連日の報道で目にするウクライナは大地が雪に覆われ、寒さがひしひしと伝わってきます。平均気温を比較してみると、ちょうど札幌と同じくらいでした。

キエフ、札幌、東京の平均気温(1月~3月)を比べたグラフ:筆者作成
キエフ、札幌、東京の平均気温(1月~3月)を比べたグラフ:筆者作成

 見知らぬ場所を調べるとき、まず初めに平均気温をみます。寒さや暑さはその土地のありように深く関係していると思うからです。

クリミア戦争と天気予報の始まり

 今の情勢をクリミア戦争と重ねる方も多いでしょう。1853年、ロシアの南下政策を阻止するため、オスマン帝国とその後ろ盾となった英仏がクリミア半島でロシアと戦いました。この戦争はその後、さまざまな形で影響を与えたことはご承知の通り、ナイチンゲールによる近代看護の始まりもそのひとつです。

 そして、天気予報にも深い関わりがあります。クリミア戦争中の1854年11月14日、多くの戦艦が嵐に遭遇し、黒海で沈没しました。この惨事をみたパリ天文台所長のアーバン・ル・ヴェリエ(1811-1877)は暴風をいち早く船員に知らせることを思い立ち、天気予報の必要性を見抜きました。

 当時は嵐から船舶を守ることに重きが置かれてて、今の天気予報とは趣が違いました。天気予報の始まりは暴風警報にありました。

22日~23日は低気圧の通過で天気崩れる

 きょう(19日)のウクライナは晴れている所が多いようです。午前8時の気温は首都キエフで3度、日中はにわか雪やにわか雨があるものの、気温はこの時期としてはかなり高い7度まで上がる予想です。

 バイデン米大統領はここ数日にも、事態が大きく動くとの認識を示していますが、2014年2月のクリミア半島併合の混乱(26日~28日)は天気が崩れたときに起こりました。

2月22日の予想天気図(ウェザーマップ作画、筆者加工)
2月22日の予想天気図(ウェザーマップ作画、筆者加工)

 今後、22日(火)~23日(水)にかけて、ウクライナの北を低気圧が通過する影響で、ウクライナ周辺の上空は雲に覆われる予想です。首都キエフでも雪や雨が降る可能性があります。

【参考資料】

ウクライナ水文気象センターホームページ(Український гідрометеорологічний центр)

仏気象局(メテオフランス)ホームページ:L'HISTOIRE DE MÉTÉO-FRANCE

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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