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猛烈な台風14号 重なる予報円、影響長引くおそれ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
沖縄の南を北上する台風14号(9月11日正午、ウェザーマップ作画)

 猛烈な台風14号が北上している。12日(日)は与那国島などで猛烈な風が吹く見通し。その後、台風は九州の西の海上に進むが、14日~16日にかけて動きがゆっくりになる。上空の北風に行く手を阻まれるからだ。

強い熱帯低気圧が増えている

 台風14号は11日午後3時、沖縄の南海上を時速15キロの速さで北北西に進んでいます。中心の気圧は910hPa、最大風速は55メートル(最大瞬間風速は80メートル)、依然として猛烈な勢力で北上を続けています。

 今年、猛烈な台風は台風2号に次いで2個目です。最近10年で見ると、猛烈な台風は平均して、一年間に3個~4個くらい発生しています。

 最新の科学的知見が盛り込まれた気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書によると、強い熱帯低気圧が発生する割合は過去40年間で増加しており、さらに日本列島が位置する北西太平洋では熱帯低気圧の勢力がピークに達する緯度が北上していることが示されました。

猛烈な風 停電に備えを

 台風14号はほとんど衰えずに、12日(日)午後には与那国島にかなり接近する見通しです。予想される最大瞬間風速は65メートルで、過去には電柱が倒れたり、車両が横転する被害が発生しています。しっかりとした建物に避難し、停電した場合に備えてください。

12日(日)午後3時の風の予想図(ウェザーマップ作画)
12日(日)午後3時の風の予想図(ウェザーマップ作画)

予報円が重なる その訳は?

 台風14号は沖縄付近を北上したあと、14日(火)~16日(木)にかけてほとんど停滞する予想となっています。なぜ、台風は九州の西で動きが止まってしまうのでしょう? これには上空の風に理由があります。

 台風はその時々の気圧配置や上空の風によって様々な動きを見せます。これが正解というコースはありません。しかし、季節でみると共通点もあります。

台風14号の進路予想図(9月11日午後3時、ウェザーマップ作画)
台風14号の進路予想図(9月11日午後3時、ウェザーマップ作画)

秋の台風は加速する

 9月は日本列島を覆っていた夏の高気圧が退き、上空で西寄りの風が強まります。高気圧の縁を流れる風によって北上してきた台風は本州に近づくと上空の強い西寄りの風に影響を受けて、さらに動きが速まります。日本列島を駆け抜けるように進むことから「韋駄天(いだてん)台風」と呼ばれることもあります。

秋に見られる上空の風の説明図と台風14号に関係する風を予想した図(著者作成)
秋に見られる上空の風の説明図と台風14号に関係する風を予想した図(著者作成)

上空の北風に阻まれて

 しかし、台風14号の場合は様子が違うようです。台風14号は中国南部と太平洋にある高気圧に挟まれるような格好で、東シナ海を北上します。その後、北緯30度付近に達すると、行く手を上空の強い北寄りの風に阻まれ、動きがゆっくりになることが予想されています。

 日本付近で上空の風が強まり始めるこの時期に、九州の西で動きが止まる台風はあまり記憶になく、珍しいと思います。

 今の見通しでは16日(木)以降、台風は動き始めると見られ、西日本への影響が大きくなるおそれがあります。

【参考資料】

気象庁:IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書 気候変動 2021:自然科学的根拠政策決定者向け要約(SPM)暫定訳(2021年9月1日版)

沖縄気象台:令和3年台風第14号に関する沖縄地方気象情報 第8号、2021年9月11日16時47分発表

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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