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台風2号 なぜ、4月に珍しい大型台風となるのか?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
台風2号の進路予想図(16日午後3時発表、ウェザーマップ作画)

 台風2号は今後も発達しながら北上し、17日(土)には非常に強い勢力となる見通し。なぜ、4月に珍しい大型台風となるのか。その答えは海面水温と上空の高気圧にあった。

16年ぶり非常に強い台風に

 発生して2日が経過した台風2号。16日(金)には強い勢力となりました。まだ4月というのに、進路予想図はまるで8月や9月のトップシーズンを見ているようです。

 台風2号は今後も発達を続け、17日(土)にも非常に強い勢力となる見通しで、中心気圧も925ヘクトパスカルまで下がる可能性があります。4月に発生した台風が非常に強い勢力となるのは2005年の台風3号以来、16年ぶりのことです。

気象衛星ひまわりが捉えた台風2号の雲域(4月16日午後3時、ウェザーマップ作画)
気象衛星ひまわりが捉えた台風2号の雲域(4月16日午後3時、ウェザーマップ作画)

 台風は熱帯の海で発生するため、季節は問いませんが、それでも活発なときと不活発なときがあります。これまで(1951年以降)4月に発生した台風は48個しかなく、そのうち中心気圧が930ヘクトパスカルを下回った台風は4個です。4月は発生する台風が少ないうえに、発達する台風はさらに少ないです。

なぜ、4月に発達するのでしょう?

 その答えは海の水温にあります。日本近海の水温は太平洋側で20度くらいですが、台風2号が北上している海域は29度くらいあります。

台風2号の進路予想図に海面水温を重ねた図。オレンジ色は水温27度以上、ピンク色は水温29度以上(ウェザーマップ作画)
台風2号の進路予想図に海面水温を重ねた図。オレンジ色は水温27度以上、ピンク色は水温29度以上(ウェザーマップ作画)

 台風は通常、海面水温27度以上で発生・発達するため、4月といえども熱帯の海は真夏の様子です。さらに、今年の海面水温は平年と比べて約1度高くなっています。

 もうひとつは上空の風にあります。こちらは上空約12キロの天気図です(非常に空高いところの天気図と思ってください)。専門的には200hPa速度ポテンシャル図と言います。

200hPa速度ポテンシャル図(1か月予報資料、気象庁ホームページより。理解しやすいように著者が説明文を加えた)
200hPa速度ポテンシャル図(1か月予報資料、気象庁ホームページより。理解しやすいように著者が説明文を加えた)

 小さくて見にくいのですが、日本列島が図の右上端にあります。日本列島の南に青く塗られた場所があります。これは上空の高気圧を示していて、風が地上から上空に向かって流れていることを表しています。地上から上空に向かう風の流れは上昇流といい、湿った空気が雲となる場所です。

 まとめると、台風2号は海面水温が高く、さらに雲が効率よく発達しやすい条件が備わった場所を進むため、4月としては珍しい大型台風となる可能性があるのです。

【追記】2021年4月17日

台風2号は17日午前3時、非常に強い勢力となりました。

上記の記事では「4月に発生した台風が非常に強い勢力となるのは2005年の台風3号以来、16年ぶりのことです。」としました。

その後、調べを続けると、2015年3月28日に発生した台風4号は3月30日に非常に強い勢力、31日~4月2日にかけては猛烈な勢力となっていたことがわかりました。4月に発生した台風にこだわりすぎてしまい、まわりをよく見ていなかったと反省し、ここに書きました。

【参考資料】

気象庁:台風情報(台風2号)

気象庁:海面水温に関する診断表、予報、データ

気象庁:Tokyo Climate Center、One-month Prediction

デジタル台風:4月に発生した台風

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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