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ラニーニャ発生 早い冬の訪れ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
3年ぶりにラニーニャ現象が発生。厳しい残暑のあとは早い冬の訪れか(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 3年ぶりにラニーニャ現象が発生した。来年2月頃まで続く見通しで、アメリカでは早くも警戒感が広がる。日本でも11月は寒気の影響を受け、早い冬の訪れとなる可能性がある。

米カリフォルニアの山火事 長期化も

 気象庁は10日、ラニーニャ現象(以下、ラニーニャ)が発生したとみられると発表しました。ラニーニャの発生は2017年秋以来、3年ぶりで、来年2月頃にかけて続く可能性が高いです。

 ラニーニャは太平洋赤道域東部(ペルー沖)の海面水温が基準値よりも低くなる現象で、世界的に異常気象を引き起こすことが知られています。アメリカでは早くも警戒感が広がっていて、大型ハリケーンが多く発生することやカリフォルニア州など南西部では気温が高く、乾燥した天気となるため、大規模な山火事が長期化するおそれがあるとしています。

日本はどうでしょう?

 ラニーニャが発生している冬は寒くなりやすいとされています。それはフィリピン付近の暖かい海に理由があります。

 ラニーニャが発生するとペルー沖の海面水温は低くなる一方で、フィリピン付近を中心とした海面水温は平年よりも高くなります。暖かい海は雲を多く発生させ、それに伴って強い上昇気流が発生します。

【ラニーニャ現象と日本の冬】冬型の気圧配置が強まり、日本列島に寒気が流れ込みやすくなる(模式図)著者作成
【ラニーニャ現象と日本の冬】冬型の気圧配置が強まり、日本列島に寒気が流れ込みやすくなる(模式図)著者作成

 この大規模な上昇気流が大陸から日本付近を流れる偏西風に影響し、冬の高気圧(シベリア高気圧)を強めることから、日本列島に寒気が流れ込みやすくなるのです。

秋の大雨、早い冬の訪れ

 前回、ラニーニャが発生したばかりの2017年10月は西・東日本で記録的に雨が多くなりました。天気ノートを見返すと、秋晴れはなく、週末に大雨とあります。また、10月22日の衆院選の投開票日に、大型で非常に強い台風21号が関東に近づいたことも思い出します。その後、11月になると急に気温が下がり、11月だけで4回も強い寒気が流れ込みました。

2017年10月22日午前9時の地上天気図、大型で非常に強い台風21号が北上した(気象人より)
2017年10月22日午前9時の地上天気図、大型で非常に強い台風21号が北上した(気象人より)

 今年は9月になっても、気温の高い日が続いています。最新の3か月予報(9月-11月)では10月にかけて、気温は平年より高い予想ですが、11月になると偏西風が南下して、寒気の影響を受けやすくなる見通しです。この秋はいつまでも暑いと思っていたら、急に寒くなる、短い秋になるかもしれません。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.336)、2020年9月10日発表

気象庁ホームページ:エルニーニョ/ラニーニャ現象

気象庁:全般季節予報支援資料 3か月予報(2020年9月~2020年11月)、2020年8月25日発表

アメリカ海洋大気庁(NOAA):La Nina develops during peak hurricane season、See how this natural phenomenon in the Equatorial Pacific could influence weather to come、September 10, 2020

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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