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8月は猛暑 強まるチベット高気圧

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
関東甲信と東海で梅雨明け(1日午前10時半頃、名古屋市内)撮影:上野高明さん

 度重なる大雨から一転、8月は暑さが厳しくなる見通し。暑さの鍵を握るのがチベット高気圧だ。今後、勢力を強め日本列島を覆うため、更なる猛暑が予想される。新型コロナ感染拡大と熱中症の両方を防止できるのか。

珍しい8月の梅雨明け

 気象庁は1日午前、関東甲信地方と東海地方で梅雨が明けたとみられると発表しました。いずれも平年と比べて11日、昨年と比べても8日遅い梅雨明けです。8月の梅雨明けは珍しく、関東甲信地方は2007年以来13年ぶり、東海地方は2009年以来11年ぶりです。

 梅雨は世の中の注目度が高いので、天気番組を担当する気象予報士は梅雨入り・明けの発表タイミングをどこよりも早く、正確に予想できるかが腕の見せ所です。私は当たったためしがないですが。

梅雨の前と後はこんなに違う

 梅雨は5番目の季節と言われるほど印象に残る時季です。梅雨入りと梅雨明けの前後でどのくらい天気が変わるのか、東京を例に調べてみました。予想したとおり、梅雨入り・明けを境に降水量や日照時間は大きく変化していました。

 一方、気温はちょっと様子が違いました。梅雨入りの前と後の気温差は0.5度くらいだったのに対して、梅雨明けの前と後の気温差は1.4度もあり、明らかに梅雨明けの方が気温の変化が大きいことがわかりました。

【梅雨入り・明け】東京の日最高気温の変化を比べたグラフ(平年値を使い、梅雨入り前後10日間、梅雨明け前後10日間の気温差を示す、著者作成)
【梅雨入り・明け】東京の日最高気温の変化を比べたグラフ(平年値を使い、梅雨入り前後10日間、梅雨明け前後10日間の気温差を示す、著者作成)

8月はチベット高気圧が強く、猛暑に

 7月は度重なる大雨と記録的な日照不足で気温の低い日が目立ちました。それでも、7月20日から26日までに、熱中症により救急搬送された人は全国で3,073人とこの夏初めて3千人を超えました。

 今後の暑さの鍵を握るのがチベット高気圧です。チベット高気圧は北半球の夏を中心にアジア南部で発達する上空の高気圧で、中心はインド北部(ニューデリー)にあります。この高気圧が日本列島まで張り出すと一段と暑さが厳しくなります。

 こちらは上空約12キロの大気の流れを示した天気図です(200hPa流線関数)。図の中心少し上に日本列島があり、その西側はユーラシア大陸です。中東付近から中国にかけて、細長い楕円にみえるのがチベット高気圧で、寒色は平年より弱いことを表しています。

【上空約12キロの天気図】8月1日~5日までの5日間平均図(ウェザーマップ作画)
【上空約12キロの天気図】8月1日~5日までの5日間平均図(ウェザーマップ作画)

 しかし、8月半ばの予想図ではチベット高気圧がグーっと東にのびて、日本列島まで張り出しています。色も暖色に変わり、勢力が強まることもわかります。

【上空約12キロの天気図】8月13日~17日までの5日間平均図(ウェザーマップ作画)
【上空約12キロの天気図】8月13日~17日までの5日間平均図(ウェザーマップ作画)

 ただでさえ、梅雨明け後の十日間は一年で最も暑さが厳しい頃で、今年はそれを上回る暑さがやって来そうな気配です。マスク着用が徹底されるなかで、熱中症を防ぐことができるのか、疑問です。

【参考資料】

気象庁:2週間気温予想資料と解説、2020年8月1日

総務省消防庁:熱中症情報、救急搬送状況(令和2年の情報)、熱中症による救急搬送人員(7月20日~26日速報値)

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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