岐路に立つ大雨特別警報

2019年10月の台風19号では1都12県に大雨特別警報が出された(写真:ロイター/アフロ)

 激甚化する災害の切り札として期待された特別警報だが、度重なる大災害に出し遅れが常態化する。この夏、気象庁は特別警報を待っては避難が間に合わない、手遅れ感を強化した呼びかけをするとするが、大災害を的確に予想できない現実に、特別警報の存在が揺らぐ。

認知率8割でも

 2013年8月から始まった特別警報はこれまでに南は沖縄県から北は北海道まで、11の気象災害に発表されました。昨年(2019年)10月の台風19号ではこれまでで最も多い1都12県に大雨特別警報(以下、特別警報と記す)が発表されたことで、認知度がさらにアップし、今や8割以上の人が知っているそうです。

 一方で、困ったことも。大雨警報や土砂災害警戒情報など災害の発生に警戒を呼び掛ける情報が軽視され、特別警報を避難の判断としてしまうことです。

気象庁が発表する気象情報と警戒レベルの関係(気象庁ホームページより)
気象庁が発表する気象情報と警戒レベルの関係(気象庁ホームページより)

 そもそも、特別警報が創設された背景には年々、深刻化する災害に、警報だけでは対応できない危機感がありました。もっと強力に避難を呼びかけたい、期待された特別警報でしたが、当初から避難に十分な時間を確保できるようなタイミングで、大災害の発生を予想することは困難であるという問題も抱えていました。

警戒レベル5 市町村と気象庁で意味合いが違う

 気象業務に関する基本的制度を定めるのが気象業務法です。そのなかで「警報」とは重大な災害の起こるおそれのある旨を警告して行う予報とあります。

 特別警報は命の危険さえあるような、甚大な災害の発生を予想し、警戒を呼び掛けるためのものですが、実際はすでに災害が起こってしまった状況下で発表されることがほとんどです。滅多に起こらないような大災害を予想するのは困難といってしまえば、それまでなのですが、最近は経験したことのない災害が毎年のように、日本のどこかで起こっている現状ではこの言い訳も通用しなくなっています。

 2018年7月の西日本豪雨を受けて、中央防災会議は避難対策の強化を打ち出し、さまざまな防災情報とそれに対応する避難行動を5つの警戒レベルに分けました。市町村が発表する災害発生情報は警戒レベル5とし、災害の発生を伝え、住民に命を守る最善の行動を求めるとしました。

警戒レベルと避難行動の関係を説明した図(気象庁ホームページより)
警戒レベルと避難行動の関係を説明した図(気象庁ホームページより)

 気象庁が発表する特別警報も警戒レベル5に相当しますが、こちらは災害が発生する前に発表することが期待されています。同じ警戒レベル5でも、市町村と気象庁では違いがあるのです。

特別警報に頼らない避難を

 気象庁も防災気象情報の伝え方に関する検討会を重ねて、誰もが今置かれている状況を理解しやすいような情報発信に力を入れています。何らかの災害がすでに発生しているという、警戒レベル5の状況に合うように、特別警報の発表基準を変えること、特別警報の発表を待たずに避難するよう、手遅れにならない行動を促す表現を強化するとしています。

 これまでにも、特別警報の発表区域を都道府県から市町村単位に変えたり、2013年10月の伊豆大島豪雨の反省から、島しょ部も対象に加えたりするなど、さまざまな手立てが講じられてきました。しかし、いつどこでどのくらいの災害が起こるのか、一番知りたい情報は不十分なまま、むしろ特別警報に頼らない避難に重点が移っています。特別警報は何のために存在するのか、釈然としません。

【参考資料】

気象庁:防災気象情報の伝え方に関する検討会(第6回)、2020年3月9日開催

気象庁:令和元年度 気象情報に関する利活用状況調査結果

内閣府防災情報のページ:避難勧告等に関するガイドラインの改定(平成31年3月29日)