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エルニーニョ/ラニーニャ発生なし 冬の天候予想は難しい?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
この冬にかけてもエルニーニョ/ラニーニャ発生なし(著者作成)

 この冬にかけてもエルニーニョ/ラニーニャ現象は発生せず、平常な状態が続く。しかし、平常の冬となるとは限らない。過去には気温のアップダウンが大きい傾向も。

日米豪ともに平常状態を予測

 気象庁は10日、定例のエルニーニョ監視速報を発表しました。8月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値を0.2度下回り、エルニーニョ/ラニーニャ現象ともに発生していない、平常の状態です。エルニーニョ現象はこの春に終息しました。

 この冬にかけても、エルニーニョ/ラニーニャ現象ともに発生しない、平常の状態が続く可能性が60%となっています。そのほか、オーストラリア気象庁も来年初めにかけて、米海洋大気庁(NOAA)は来春まで、平常の状態が続く見通しを示しています。

予測に不確実性も  

 こちらはエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差を来年3月まで予測したものです。

エルニーニョ/ラニーニャ現象の予測(気象庁予測より、図は著者作成)
エルニーニョ/ラニーニャ現象の予測(気象庁予測より、図は著者作成)

 アンサンブル平均(ブルー)をみると、12月にかけて基準値をやや下回り、その後は基準値付近となる見通しです。しかし、予測の最高(オレンジ)/最低(グレー)の幅は大きく広がっていて、もしも予測が高く推移したら、再びエルニーニョ現象の発生に近づく。一方、予測が低く推移した場合はラニーニャ現象の発生もありえる。平常の状態が続く可能性は必ずしも高くない印象を持ちました。

エルニーニョ/ラニーニャの影響は3割程度

 あまり先の話をすると鬼が笑いそうですが、つい冬のことを考えてしまいます。この夏は7月の天候不順(低温・日照不足)、8月の猛暑と天気が大きく変わりました。当初、エルニーニョ現象は夏まで続く予測だったのですが、一足早く春に終息し、夏への影響がわかりにくくなってしまった。冷夏から猛暑へ、ダイナミックな気温の変化をしっかりと予想できたのか、考えるべき点が多いと感じています。

 長期にわたる予想はエルニーニョ/ラニーニャ現象に頼る部分が大きく、平常の状態というのは予想の決め手に欠けます。もちろん、天候のすべてがエルニーニョ/ラニーニャ現象で決まるわけではなく、その影響は3割程度とされています。残りは偏西風の蛇行や西太平洋、インド洋などの熱帯域、最近では海氷の減少が著しい北極海に着目する研究もあります。

予想が難しい冬に?

 オリンピックイヤーとなる2020年冬はどんな天気になるのでしょう。エルニーニョ現象が春に終息した年は今年を除いて6年あります。そのうちの半分が冬にかけて平常の状態が続きました。この冬を考える上で参考になるのか、調べてみました。

エルニーニョ現象が春に終息し、翌冬にかけて平常の状態が続いた年の冬の気温を調べたもの(著者作成)
エルニーニョ現象が春に終息し、翌冬にかけて平常の状態が続いた年の冬の気温を調べたもの(著者作成)

 事例が3件と少ないため、はっきりとしたことは言えません。共通したことは暖かい12月だったことくらいでしょうか。1月、2月は寒い年もあれば、暖かい年もあって、気温の変化が大きい印象を受けました。昔に比べると暖かい冬が多くなったせいか、気温が少しでも平年を下回ると寒さを強く感じます。

 エルニーニョ/ラニーニャ現象が発生せず、平常な状態が続くからといって、平常の冬となるとは限らない。予測の難しさを感じるとともに、取り組みがいを感じます。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報No.324、2019年9月10日

気象庁:Tokyo Climate Center、El Nino Monitoring and Outlook

米海洋大気庁(NOAA): NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION、12 September 2019

オーストラリア気象庁:ENSO Wrap-Up、3 September 2019

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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