なぜ佐賀で豪雨? 線状対流系と気圧の低下

佐賀で観測史上最大の大雨(8月28日午前5時、雲の様子、ウェザーマップ作画)

 九州北部に線状対流系が形成され、佐賀では豪雨になる約1時間前から気圧の低下がみられた。気圧が低くなると、周囲から湿った空気が集まり、より雨雲が発達しやすくなる。

九州の西に「にんじん状雲」

 タイトル表紙は佐賀で猛烈な雨が降っていたときの雲の様子です。九州の西には集中豪雨を引き起こす「にんじん状雲」が発生し、まるで梅雨末期の豪雨を見ているようです。

 佐賀市中心部に位置する佐賀地方気象台では28日午前4時43分までの1時間に110.0ミリの雨が降りました。平年の8月降水量は約200ミリです。その半分がわずか1時間で降ったことになり、想像を超える雨だったと思います。

豪雨の前に気圧の低下

 雨を観測する雨量計(気象庁)は全国に約1,300か所あり、平均すると約17キロに一か所の割合です。でも、雨は激しくなればなるほど局地性が強まるため、雨量計で1時間に100ミリを超える豪雨を観測する例は少ない。

 今回は佐賀地方気象台で観測されたため、当時の状況を詳しく見てみました。注目したのは気圧です。

 気圧計は気象台や特別地域気象観測所(旧測候所)など全国155か所にあり、雨量計と比べると約10分の1と少ない。降水量と気圧が同時に観測できる場所は限られています。

 佐賀で猛烈な雨が降っていた時間帯の気圧と降水量の変化をグラフにしてみました。棒グラフ(青)は10分毎にみた降水量です。雨は午前3時から6時頃にかけて強く降ったことがわかります。

【佐賀】海面気圧と降水量の変化をみたグラフ(2019年8月28日、著者作成)
【佐賀】海面気圧と降水量の変化をみたグラフ(2019年8月28日、著者作成)

 一方、折れ線グラフ(黄色)は気圧の変化を示しています。雨が降り出す前は1009hPaだった気圧が豪雨になる1時間前くらいから下がり始め(赤破線)、雨が激しく降っていた時間は1008hPaを示していました。日最低気圧は午前5時52分に観測された1007.5hPaです。雨が弱まると気圧は上昇に転じました。

気圧の低下で強い降水を維持

 気圧と雨の降り方にどのような関係があるのでしょう。

 風が一か所に集まることを収束といい、行き場を失った風は上昇気流となって雨雲を作ります。九州北部で雨が激しさを増していた午前4時の風をみると、東シナ海から吹き込む南西の風と九州北部の北寄りの風が強い収束を示しています(赤破線)。

風の様子(2019年8月28日午前4時、気象庁ホームページより、赤破線は著者加工)
風の様子(2019年8月28日午前4時、気象庁ホームページより、赤破線は著者加工)

 雲の中では水蒸気が凝結することにより熱が発生し、周囲と比べ気温が高くなります。それに伴い地上付近では気圧が下がるため、ますます周囲から風が集まります。風の収束はさらに上昇気流を強め、雨雲が発達する。これが猛烈な雨の仕組みです。

強い降水域が維持されるメカニズム(著者作成)
強い降水域が維持されるメカニズム(著者作成)

 このように風の収束により線状対流系が形成されると、気圧の低下が起こり、降水域が強化、維持されることが知られています。

【参考資料】

小倉義光、2002:8.6梅雨期の集中豪雨、一般気象学、東京大学出版会、224-231.