厳しい寒さでも 東京の気温は平年並
東京で零下4度、48年ぶりの厳しい冷え込みとなった。でも、今月の平均気温は平年並み。この矛盾を解くカギは暖かさの蓄えと観測場所の移転にあった。
半世紀ぶりの寒さでも
25日は東京都心(以下、東京と表記)で零下4度を記録し、1970年1月以来48年ぶりの厳しい冷え込みとなりました。日最低気温が0度未満の日を「冬日」といいますが、東京では大雪となった22日から27日まで6日連続で冬日となっています。
さぞかし今月は気温が低いと思いきや、月平均気温(26日まで)は5.0度と平年を0.2度下回る程度で、平年並みの気温です。どうしてなのでしょう?
暖かさの蓄え
こちらは年末からの平均気温をグラフにしたものです。見やすいように、気温が平年よりも高くなった日を暖色に、平年よりも低くなった日を寒色で示しました。
気温は上がったり、下がったりを繰り返し、比べると暖色と寒色の面積はほぼ同じくらい。つまり、暖かさの蓄えで寒さが相殺された格好です。とはいっても、実感は寒い。
東京の観測場所移転で
もうひとつ、この矛盾を解くカギは東京の観測場所移転にあります。長らく観測が続けられていた千代田区大手町から2014年12月2日、北の丸公園に移転しました。直線距離にして900メートル移動しただけなのですが、気温が大きく変わってしまいました。北の丸公園の方が大手町よりも寒いのです。
こちらのグラフは大手町(旧)と北の丸公園(新)の月平均気温の差を示したものです。
月によって変わりはあるものの、平均して約1度の差があり、とくに秋から冬に大きくなっています。北の丸公園にある観測場所は周囲が緑に囲まれ、高層ビルや車などの人工排熱の影響を受けにくいため、気温が低くなるのです。
そして、平年値も新しくなりました。たとえば1月の平均気温の平年値は大手町で6.1度(旧)、北の丸公園では5.2度(新)です。平年値が大幅に引き下げられたため、気象の基準では平年並みとなるのです。
そもそも、最低気温零下4度が48年ぶりも、大手町を基準にしたもの。北の丸公園を基準にしたら違う答えが出たかもしれません。東京の観測場所をどこに設けるかによって、寒さの印象が変わってしまう。気象観測の難しさを感じました。
【参考資料】
東京管区気象台:「東京」の気象観測地点の移転について
峯松宏明,村上喜章,丹下昭彦,2016:報告 地上気象観測地点 「東京」 の露場移転について(その1移転までの経緯について),測候時報 第83巻.
中島幸久,2016:報告 地上気象観測地点 「東京」 の露場移転について(その2平年値の更新について),測候時報 第83巻.
東京の階級区分値は過去の1か月予報気温ガイダンスデータ・ダウンロード(気象庁ホームページ)を参照しました。