この夏の台風とエルニーニョ

4月26日午前9時、台風1号がフィリピンの東海上で発生した(ひまわり8号)

台風1号が発生してから1か月が過ぎた。この夏後半はフィリピンの東海上で雲の発生が盛んとなるとみられ、台風が活発になる可能性がある。一方、秋に向けてエルニーニョ現象が発生する確率は50%で、太平洋熱帯域全体で海面水温が平年より高い予想だ。

台風の発生はスローペース

台風の月別発生数グラフ(今年、2016年、平年)
台風の月別発生数グラフ(今年、2016年、平年)

4月26日午前9時、今年初の台風がフィリピンの東海上で発生しました。しかし、27日夜には衰弱し、寿命はわずか1日半でした。

台風1号は例年、3月までの発生することが多く、今年はやや遅い印象です。1か月が過ぎても次の台風が発生する気配がなく、未だに台風2号は発生していません。

もしも、6月下旬になっても台風が発生しなかったら、いよいよ台風の遅れが目立つようになるでしょう。昨年(2016年)のように6月まで無言だった台風が7月以降、猛烈なペースで発生したことを思い起こせば、今の沈黙が恐ろしくも感じます。

米ハリケーンは活発か

先月25日、米海洋大気庁は今年のハリケーンシーズン予想を発表しました。今年のハリケーンは平年並みか、活発になると予想され、ハリケーンの予想発生数は5個から9個と、平年の6個を上回る可能性があります。

2017年ハリケーンシーズン予想(米海洋大気庁 NOAA)
2017年ハリケーンシーズン予想(米海洋大気庁 NOAA)

予想の根拠となったのはエルニーニョ現象です。今年後半にかけてのエルニーニョの発生確率は50%程度と見積もられています。

専門家は強いエルニーニョが発生し、風が上下方向に大きく変化する気象状況ではハリケーンの発達が抑えられるとしたうえで、この夏はエルニーニョの影響が小さいため、ハリケーンの活動が活発になるおそれがあると警戒しています。

台風はどうなるのでしょうか?

日本ではアメリカのように長期にわたる台風の予想は発表されていません。台風の長期予想は数千キロにおよぶ太平洋熱帯域から数十キロサイズの雲ひとつひとつまで、予想しなければならない大気と海洋が複雑なため、未だ実用化に至っていません。

それでも、スーパーコンピュータ「京」を使った研究では2週間先の台風発生予測に一定の成果が見られたことから、台風の1か月予報が実用化される日も遠くないと期待しています。

この夏後半はフィリピンの東海上で対流活動が活発になる予想(模式図)
この夏後半はフィリピンの東海上で対流活動が活発になる予想(模式図)

今年の夏はエルニーニョであるような、ないような中途半端な状況となりそうです。

気になるのは台風の発生場所である太平洋西部の海面水温が平年より高いことです。台風は海で生まれ、海で成長します。台風は暖かい海からたっぷりと水蒸気を吸収し、発達します。とくに、夏の後半はフィリピンの東海上で雲の発生が盛んになるとみられ、台風が一気に活発化することが考えられます。

過去66年間で台風が日本に上陸しなかった年は2008年、2000年、1986年、1984年のわずか4年だけ。日本の夏は台風なしでは考えられない。台風予想の精度向上は待ったなしです。

【参考資料】

米海洋大気庁(NOAA):Above-normal Atlantic hurricane season is most likely this year,May 25 2017

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.296),2017年5月12日

オーストラリア気象庁:ENSO Wrap-Up,23 May 2017

米海洋大気庁(NOAA):EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION,11 May 2017

気象庁:全般季節予報支援資料3か月予報(2017年6月~2017年8月),2017年5月24日

佐藤正樹・宮本佳明・小玉知央・宮川知己・中野満寿男・山田洋平,2017:2015年度秋季大会シンポジウム「スーパーコンピューティングと気象学」の報告 2.「京」による全球大気研究の最前線,天気,64,327-335.