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今年は集中豪雨が多い?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
2013年8月24日島根豪雨(気象庁レーダ)

この夏、頻発する集中豪雨。その多くは日本海側で発生し、大小を含めて13回を数えます。連日、ニュースで報道されるためでしょうか、今年は特別に多いのではないか?とたびたび質問を受けます。でも、この答えはとても難しい。集中豪雨はいつ、どこで、どれだけの雨が降ったら、という厳密な定義がないからです。さらに、九州と北海道では雨の降り方がまったく違い、災害が起こる条件も、全国均一ではありません。そのため、最近まで集中豪雨の事例は統計的に扱われていませんでした。

集中豪雨は太平洋側で、7月から9月に多い

そこで、気象庁・気象研究所で行われている集中豪雨の事例調査を紹介しましょう。それによると、1995年から2009年までの15年間で集中豪雨は386事例あり、平均すると全国で一年間に約26事例、発生していることになります。今年は少なくとも13事例ですから、現時点では特別に多くはないようです。

一方、集中豪雨が発生しやすい場所は、九州から関東地方にかけての太平洋側が多く、九州山地、四国山地、紀伊半島は全国でも有数の豪雨地域です。しかし、この夏の大雨は日本海側で多く発生し、例年とは大きく違っていることがわかります。

月別の集中豪雨の発生数
月別の集中豪雨の発生数

次に、集中豪雨が起こりやすい時期を見てみましょう。最も多いのが8月で100事例、次いで9月の98事例、7月の94事例です。この3か月だけで、全体の7割以上を占めます。8月が過ぎれば大雨も終わりと安心するのは早すぎます。9月は台風シーズン、8月と同じくらいの頻度で集中豪雨が発生します。

島根豪雨は台風12号の影響大

先日(24日)の島根豪雨ではわずか3時間で約200ミリの雨が降りました。これは8月、1か月分の約1.5倍の雨量です。山陰沖に停滞していた前線に向かって、非常に湿った空気が流れ込み、雨雲を発達させたのですが、これには中国南部に上陸し、消滅した台風12号の影響がありました。台風は上陸すると勢力を弱め、その後天気図からは消えます。でも、台風が持っていた亜熱帯の空気はそのまま残り、西風に乗って日本列島に流れ込んだのです。

集中豪雨の原因
集中豪雨の原因

集中豪雨の原因をみると、半数が台風によるものです。今年は今のところ、台風の影響は小さいですが、油断は禁物と思っています。

【参考資料】

津口裕茂(2013):集中豪雨事例の客観的な抽出とその特徴・環境場に関する統計解析,平成24年度予報技術研修テキスト,96-107.

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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