どんな髪でも、髪を失っても。アカデミー賞短編アニメ「ヘアー・ラブ」が伝える愛

ヘアー・ラブで短編アニメ部門でアカデミー賞を受賞したマシューさんとカレンさん(写真:ロイター/アフロ)

もう一つのアカデミー賞

 韓国映画の「パラサイト」が、非英語圏の映画として初めて作品賞をとり話題を呼んだ今年のアカデミー賞。パラサイトが奇妙なスリルとサスペンスをもたらす一方で、短編アニメ部門で受賞した6分間の「ヘアー・ラブ」(ソニー・ピクチャーズ)は、多くの米国人のハートを盗んだ。

 主人公である7歳のズーリーちゃんは、アフリカ系アメリカ人なので超剛毛のアフロ。いつもはママが可愛い髪型にアレンジしてくれるのに、今日はママがいない。「特別な日」の今日、なんとしても可愛い髪型にしたいズーリーは、ママが作った髪型アレンジ動画を見てがんばるが、どうしても、うまくいかない。

 さて、パパはどうする? ズーリーが、それほどこだわる特別な日とは? そしてママはどこに?

 6分間のこのアニメ。アフリカ系アメリカ人の髪質の扱いにくさについて馴染みのない私たちは「そんなに?」と驚かされつつ、セリフはほとんどないのに、どんどんストーリーに引き込まれてしまう。そして最後は…。ぜひ、見てください。

「普通」と違って上等

 このアニメは、元NFL(アメフト)選手でのちに音楽ビデオなどの監督、プロデューサーとなったマシュー・A・チェリーさんと、カレン・ルパート・トリバーさんが作ったもの。

 たかが髪の毛と思うかもしれないが、「普通」と違う髪質、髪型、外見だと、好奇の目を向けられたり、本人が自信を失ってしまったり、「普通と違う」ということでコンプレックスを持ってしまったり。

 マシューさんはこの映画を作った理由について、「主流のアニメ映画にはアフリカ系アメリカ人が取り上げられることが圧倒的に少ないし、特に非白人の子供たちには、もっと自分の髪を好きになってほしい」と、自らのウェブサイトで説明しています。(注1)

髪を失っても、人は変わらない

 このアニメ映画の最後に出てきたズーリーのママも、抗がん剤治療で髪を失い、悲しい気持ちになっていました。でも、ママの髪の毛のことなどまったく気にしない様子で、愛を伝える夫とズーリーの存在で、元気を取り戻したようです。

 感じる程度は人によって違いますが、やはり脱毛は外見に影響を与えるので、苦痛に思う人が多いのが現実。抗がん剤治療で髪を失った家族や友人への心理的サポートとして、自分も髪を刈り上げる人や、自分の髪の毛をがん患者用のかつらを作る団体に寄付する人などもいます。

 筆者の住むテキサス州でも、つい最近も化学療法を受け始めた妹のために、自分の髪を寄付したいと髪を伸ばし始めた16歳の少年のことが、ニュースになっていました。

バレンタインデーに「好き」を伝えよう

 抗がん剤治療で外見が多少変わっても、その人自身が変わるわけではありません。頭ではわかっていても、髪を失った自分の姿を毎日鏡で見ることになるので、自信をなくしてしまう人が多いのです。

 サポートの仕方はいろいろですが、外見が変わっても、自分にとってのその人、そしてその人に対する気持ちが変わっていないことを、言葉で伝えることからはじめてはどうでしょうか。治療前と同じように、自分を大切に考えてくれる人がいると再認識することで、治療中の人は自信がわいてくるものです。

 2月14日はバレンタインデーです。米国では聖バレンタインの日として、カップルに限らず、愛する人に自分の気持ちを伝える日です。義理チョコはほどほどにして、「言わなくてもわかるだろう」と、普段、言葉にして伝えていない本当に大切な家族や友人に、感謝や好きのメッセージを伝えてみませんか?

(注1)マシュー・A・チェリーさんのウェブサイト