仕事を「見える化」できない人は、憂き目に遭いやすい

(ペイレスイメージズ/アフロ)

日本企業に勤めているときには、あまり意識しなかったことに「レポートライン」というものがある。グローバル企業にとって、最も大切なビジネス上のルールはレポーティングといっていい。

転職したアップルでもそうだった。

ある課題に対してこういう考えのもと、こういう施策を行った。上手くいったケース、いかなかったケース。上手くいかない理由とそれに対する再アクションを「見える化」する。そして上司、または国外のカウンターパートナーとなる相手に定期的に送る―。

それがレポーティングだ。

一人ひとりのお客様への対応が大事なのはもちろんだが、そのことを理由にレポートラインを疎かにして、「忙しそうに残業している。しかし何をやっているのかわからない」という疑念を上司やカウンターパートナーに持たせてしまったら、アウトである。

とくに外資系企業の場合、失敗することや施策の効果がないこと以上に、「何をやっているかが見えない」という状況が、いちばん相手に不信感を与える。そうなると外資系企業のジャッジは早い。最悪の場合、このマネージャーはワーク(機能)してないとみなされて、あるときから重要な連絡が来なくなったり、プロジェクトから正式に外されてしまうことになる。

そうなってからでは遅すぎる。

管理職は、チームの部下がスムーズに仕事を進めているか、困っていることはないか、さらに、部下が上司の仕事に影響を与えていないかを見ている。逆にいえば、上司にとっての仕事は、部下の仕事を上手く進めさせ、その結果をすべからく管理職に報告することである。そして、毎月、あるいは毎週、進捗状況を本国のカウンターパートナーにレポートする。

仮に部下が何らかのミスをしたとしても、そのことをそのままレポートラインに載せたりはしない。

それは、その部下をマネジメントするのが自分の責任でもあるからだ。したがって管理職は、部下が何らかのミスをした場合、まずそのミスは報告すべきかどうかを考える。報告するとすれば、どのようなタイミングと文脈で報告するべきか。そのミスの原因はどういうもので、どのような対策を講じるのか。その上で自分や部下の責任の大きさはどの程度のものか。

このくらいのことを考慮した上で、状況に応じて、ときにクイックに、ときには少し間を空けてからレポーティングを行う。

仮に部下からのレポートが滞っていると、上司は自分の仕事が進まない。上司の仕事が進まなければ上司の上司、そのまた上司の仕事も進まない。突きつめれば、会社全体の業務が滞るのである。

自分のレポートが遅れることは単に自分自身の問題ではなく、上司の責任につながる。

グローバル企業においては、今、日本で何が起こっているのかが伝わらないという状況になってしまう。すると本国から「日本はやる気があるのか」という話にもなってくる。だからレポートラインを疎かにしてはいけないのである。

私もアップルに入社したてのころ、今までは業務内容を文章化して定期的にレポートするという習慣自体がなかったため、大いに戸惑った。しかし、自分の問題というよりは、自分の上司や他の人にも影響を及ぼすと知り、余裕を持ってレポートラインに報告を載せる準備をするようになった。

複雑そうに見える外資系企業の仕事のなかで、最も優先されるべき業務は、自分の業務をしっかり「見える化」して、レポートラインでしっかり共有すること。最初は不慣れだったレポーティングだが、だんだん習慣になってくると、自分の仕事をつねに客観視するためのツールにもなってくれる。

※ 8/31日発売の"自叙伝"より一部を公開します。【日本テレビ・アップル・MTV・マクドナルド・ミクシィ・世界の医療団で学んだ、「超」仕事術】(方丈社)