プロジェクト藤沢~気づきのプロから学ぶ 考えよう藤沢の未来~ 公開パネルディスカッション

プロジェクト藤沢~気づきのプロから学ぶ 考えよう藤沢の未来~

2月14日、「プロジェクト藤沢」主催による公開パネルディスカッションが藤沢市新堀学園ライブ館において開催された。パネリストは女流棋士で「どうぶつ将棋」の考案者でもある北尾まどか氏、株式会社らしく代表取締役の佐藤純也氏、藤沢市経済部参事兼観光課長の赤坂政徳氏、藤沢商工会議所専務理事の金井正志郎氏と私、片岡英彦の5名。藤沢市議会議員の井上裕介氏がファシリテーターを務めた。テーマは「気づきのプロから学ぶ 考えよう藤沢の未来」。

オープニングは藤沢在住の著名人達が出演するPVの上映。その後井上氏の進行で約1時間半のパネルディスカッション。それぞれの専門的立場から様々な意見交換、提案がなされた。後半30分はご来場者からの質疑応答。最後に「キュンとするまち、藤沢」ファンクラブより、会員募集のPR。会場には藤沢を愛する多くの市民はもとより、鈴木恒夫藤沢市長も訪れ盛会となった。

以下、当日のパネルディスカッションの様子を抜粋

◆藤沢ってどんな街?

井上:本日のパネリストの皆さんは藤沢在住の方と、藤沢以外にお住まいの方といらっしゃいます。まずは藤沢を中から、外からの視点で見た印象をお聞かせ下さい。

金井:私は70年来この藤沢に住んでいます。藤沢市民の特徴は「自らを誇張しない」、「我慢強く常識がある」ところですね。また、良いものが売れる、試食をしたら必ず買うとか、まけろと言う方が少ない等、比較的商売がしやすい土地柄と言えると思います。

片岡:私は小学校4年生から大学入学前までの約10年間を藤沢で過ごしました。現在でも実家が藤沢にあるのでたまに来きますが、ご近所や学生時代の友人たちが分け隔てなく受け入れてくれる居心地のいい街。いい意味での「ゆるさ」がある街ですね。クローズド感がなく外からの人を普通に受け入れて送り出す。これは元々宿場町だったことも関係すると思います。そういった街のパワー、バイタリティを感じます。

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井上:地名を「湘南」と言ったり「藤沢」と言ったり、いい意味でのゆるさ、キーワード的には重要ですね。

佐藤:私は出身が岩手県で高校を卒業してから上京しました。藤沢駅に降りるのは2回目です。湘南という言葉を初めて聞いたのはサザンの歌の中でした。他の地域と比べるとこの地域は全国でもすでに知名度が高く、うらやましいと思う人が多いのではないでしょうか。

北尾:高校が町田でしたので、同級生に藤沢在住の人がいたりして懐かしい場所です。JRと小田急線が乗り入れているので非常に便利ですね。駅前は賑やかだけど落ち着いて安心感があり、居心地のいい街だと思います。藤沢在住のつるの剛士さんは将棋三段ということでイベントでも交流がありますし、佐伯昌優先生や女流棋士でも高橋和さん他何名か藤沢在住の方がいらっしゃいます。最近では女性の将棋ファンも増えています。「将棋乙女」という言葉も生まれて、新しい風を作り出していく印象があります。

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赤坂:つるのさんは藤沢の観光大使を務めて3年目になりますが、藤沢は月曜から金曜までと土日で変わり、程良く田舎、程良く都会。大人が楽しめる街とおっしゃっています。

ひとりひとりに余裕があって楽しめる街。また観光に対しては地域の商店街、事業者の方がバックアップしてくれることもあり、観光客数も年々増えてきています。

◆藤沢ブランドを確立するために

中盤からは、今後の藤沢の発展に向けてそれぞれ専門の立場からの課題、改善策、考え方の方向性等が語られた。

井上:街づくりには先駆者の努力もあったと思いますが、金井さん、商工業の状況はいかがでしょうか。

金井:藤沢という街の地盤は高度成長の前に輸出型の製造業誘致に成功したということ。そのことが高い税収を生み、そういう財源の中から福祉、文化の政策がなされてきました。ただ現在は商業を取り巻く環境が変化してきており、大型店舗、コンビニ、100円ショップ、ネット販売等によって小売店、商店街は厳しい状況です。商店街の活性化のためには生鮮食品の店を政策として配置することも必要ではないかと思います。

片岡:産業、観光が振興していくためには人なりお金なり企業が集まってくるパワーがなければなりません。どうやったら集められるかがPRの仕事です。藤沢は悪いところがない、いい意味でゆるい、ネガティブなものがない、居心地がいい。ただそれだけだと弱いのでブランディングが大切です。藤沢ブランドってなんなのかと考えると正直弱い。他のものと比べた時にここを選ぶ理由が必要です。「鎌倉」と言えば「歴史」。ワンワードで藤沢をブランド化するとしたらなんなのか。ここが重要なキーワードだと思われます。

井上:藤沢の場合はブランド作りが進んでいないというのは確かですね。帰省する時お土産を買っていこうと思っても鳩サブレは鎌倉ですから。地産地消というのも進んで来ましたが、まだ「藤沢野菜」よりも「湘南野菜」の方が知名度があります。魅力をどう発信していくかというのも課題ですね。佐藤さんそのあたりをお聞かせ下さい。

佐藤:弊社は地域、街の情報発信の仕組みを作る会社です。(有名な)戸越銀座のホームページは3年前から手掛けています。戸越銀座の場合はそもそも15年位前から積極的にメディア戦略を行っており、ご当地ブランドの日本酒を作ったりしてきました。また1990年代中盤からはテレビの取材が入りやすいようにご当地キャラクターの電子レターやメディアシートを用意するなど、ロケハンを積極的に受け入れるような素材を準備しています。また、訪れた方がブログやtwitterで「テレビで見たより寂れた街だった」等のネガティブな意見を発信することもありますが、そういった意見を取りいれてひとつずつ修正、改善しているそうです。

井上:商店街の活性化は至上命題でありコミュニティ形成の核ですね。北尾さんいかがですか。

北尾:商店街で将棋のイベントを行うと、ご年配の方は親しんで下さいますし、お孫さんにも教えたいとおっしゃいます。私は子供に教える機会もあるのですが本当の将棋だとお子さんにはなかなか難しいです。そこで駒の数を少なくして3×4の12マスの中に駒が8枚というミニ将棋のルールを考案しました。そのルールを基に同じく女流棋士の藤田麻衣子さんがデザインして完成した「どうぶつ将棋」は、将棋を知らないお母さん方も「これなら私も教えられる」と言うことで購入してくださいます。ポーランドではロボット、フランスでは妖怪と言ったように、漢字が読めない国の方たちにも楽しんで頂いています。国内の自治体でも沖縄や福岡等で採用されています。藤沢でもオリジナルの将棋を作って商店街の活性化につなげていくのもよいかと思います。

片岡:どうぶつ将棋の場合、複雑なルールをシンプルにされたこと×かわいい動物という掛け合わせです。PRの発想でも同じことを考えます。ひとつの店、商店街、市ではパワーに限界があり、お金も人も限られます。そこを掛け合わせすることによって5倍、10倍の相乗効果が生まれると思います。例えば指揮者の方のPRを請け負った場合、指揮者×ピアニストだと音楽好きな方しか興味を持ちませんが、指揮者×お笑い芸人とか指揮者×平和活動家で対談することによってより広い世界の方に知っていただくことができます。

◆藤沢の観光戦略

後半はより具体的な藤沢の魅力づくり、商材、方向性、観光戦略について議論された。

井上:今、広報戦略という視点から片岡さんに伺いましたが、藤沢市もそういった観光戦略を練っていると思います。赤坂さんいかがでしょうか。

赤坂:観光客数が増えているのは確かですが、観光消費額をどうするかを重点的に考えているところです。藤沢のJRのコンコースに江の島電鉄さんのご協力で「湘南藤沢コンシェルジュ」を設置しました。以前にアンケートで、藤沢を訪れる人の40%がノープランで来ているという調査結果が出ました。ですからこちらから提案したりご案内をするのが大切と考えています。現在藤沢への日帰りのお客様の消費単価は4,000円。そのうち電車賃が1,500円で残り2,500円のうち800円がお土産。お土産に弱いのをつくづく感じます。藤沢のお土産を観光客の皆さんに買っていただくのと同時に、藤沢市民の方がお友達や親戚等遠くへ行く時に地元の土産をそこで買ってもらって地方に持っていくということも考えています。

井上:藤沢というとなかなか地元のお土産がないというのが課題ですね。金井さん、地元物産の現状はいかがでしょうか。

金井:実は藤沢にはメルシャンの工場があり、日本で一番ワイン生産量が多いのですがそれが浸透していません。生ハム、アボカド、マンゴー、春巻きといった食べ物を研究している大学、企業もあるので、そこと連携してワインとの組み合わせで街おこしができたらと考えています。

北尾:ワインや春巻き、知らなかったので新鮮ですね。江ノ島まで行くと海、マリンスポーツがありますが、帰り際にワインを飲みながらゆっくりボードゲームをして一息ついてもらえるような居心地のいい場所を作るのもいいですね。

井上:南は海があって北は田園があって第一次産業があって著名人の方も多く住んでいてほっとしていただけるような駅前造りという形で、あとはメディア戦略というのが重要になってきますね。藤沢市の現状としてはフィルムコミッションといって、ロケ地の誘致というのがありますが、そのあたりを赤坂さん、お聞かせ下さい。

赤坂:藤沢は12年前からフィルムコミッションをやっています。地元の支援もあり、「陽だまりの彼女」「ホットロード」という作品が生まれました。これによりロケーションジャパン大賞2年連続準グランプリを受賞しています。10月公開の映画を見て秋冬に「ロケ地スト」が訪れるようになりましたし、他にも12月のライトアップがあり、一年中楽しめる観光地になりました。「陽だまりの彼女」で江の島だけでも30万人が訪れ、約7億5,000万円の経済効果が出ています。

井上:シティプロモーションのあり方、今後の方向性についてはいかがですか。

赤坂:人口を増やす、観光客を増やすのもそうですが、これからやらなければいけないのは企業誘致です。また、住んでいる方にこの町でずっと暮らしていただける。そのためには今住んでいる42万人の地元の方に対するPRも大事です。

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井上:地域ブランド以外にこれから必要になってくるのはなんでしょうか。

片岡:いかに市内在住、在勤、通学等、藤沢の中、外を巻きこむかだと思います。藤沢のプロモーションを藤沢だけで完結する必要はありません。隣接する市町村だけでなく、北海道から沖縄までの各市町村、外国から来る観光客に対して、どういうメッセージを発信するか、どういうイメージを植え付けていくかということも重要ですね。

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井上:人という部分が大きいかなと感じますね。藤沢には著名な方もたくさんいらっしゃいます。そういう魅力、情報をどうやって伝えていくか、活用していくかが重要になってきます。

「プロジェクト藤沢」は共に考えていくことが藤沢の未来を作る上で重要です。

パネリストの皆さん、ありがとうございました。

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