戦略PRは終わったのか?終わっていないのか?そもそも始まってもいないのか!?

JARO(公益社団法人 日本広告審査機構)主催による広告研究セミナー

7月2日、大手町のKDDIホールにてJARO(公益社団法人 日本広告審査機構)主催による広告研究セミナーが開催された。今回は「戦略PRは終わったのか? 終わっていないのか?そもそも始まってもいないのか!?」という非常に長いタイトルで登壇させていただいた。会場には「クライアント系」「メディア系」「代理店系」の方々等、約100名、お集まりいただいた。

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この長いテーマになった訳は、遡ること3月27日、インテグレート代表取締役CEOである藤田康人氏が書いた一遍のブログ記事から始まった。

「戦略PRは終わりました」

藤田氏はマーケティング(IMC)業界の重鎮である。もちろんタイトルの意図するところには、氏独特のアイキャッチの意味も多分にあったとは思うが、日ごろから戦略PRプロデューサーとして活動している私が「終わりました」というタイトルに突っ込まないわけにもいかず、どうせ突っ込むならば一番先にと、その日のうちに、このYahoo!ニュース(個人)にて、

「『戦略PRは終わりました。』と言わないための戦略PR」

というタイトルでコラムを掲載させて頂いた。

また、戦略PRという言葉を2009年に最初に使い始めた本田哲也氏(ブルーカレントジャパン 代表取締役社長/CEO)と、インバウンドマーケティング提唱者である高広伯彦氏(マーケティングエンジンCEO & Co-Founder)がブログ等でそれぞれコメントをされたのを拝見した。

本田哲也氏

”そもそもの「理解」ー本来のPublic Relationsについてやグローバルな潮流などなどの理解ーに大いに問題がある~”

高広伯彦氏

日本の戦略PR界隈が面白いのと出版PRと、真面目に学びたい人のためのおまけ。

そして、せっかくならば、もっと深く、前向きに話をしようということになり、この3名で鼎談をさせていただくことになった。

「戦略PRの未来、インバウンドマーケティングの未来。」この鼎談は4月11日Webダ・カーポに掲載している。「戦略PRは終わらない連合軍(笑)」の「反撃(!?)」である。

すると今度は、インテグレートのCOOでもある山田まさる氏、敏腕編集者の中川淳一郎氏との鼎談の場を広報会議さんから頂いた。この3名は、宣伝会議が主催する「戦略PR講座」の講師陣でもある。インテグレートの山田氏は、藤田社長の記事をご覧になって、大変、驚かれたとのことだった。。。

2014年7月号の広報会議

片岡英彦×山田まさる(インテグレートCOO)×中川淳一郎(編集者/PRプランナー)「戦略PRはどこへ行く?」(1)

片岡英彦×山田まさる(インテグレートCOO)×中川淳一郎(編集者/PRプランナー)「戦略PRはどこへ行く?」(2)

こうした「戦略PR界隈」での一連の議論の最中、JAROさんから今回のセミナーのお話を頂いた。本セミナーは、この戦略PRにまつわる「終わる、終わらない騒動(?)」の区切りとして、テーマを下記のようにさせていただいた。

戦略PRは終わったのか?終わっていないのか?そもそも始まってもいないのか!?

結論を言ってしまえば、「戦略PR」は「終わってはいない」し、「終わっていないとも言えない」あるいは「始まっている」とも「始まっていない」ともいえない。答えとしては「どうでもいい」である。何故ならば「戦略PR」というキーワードを特殊な言葉として見てしまうから「始まった」の「終わった」のという話になってしまうが、「戦略PR」という言葉を「広報」とか「広告」という一般的な言葉に置き換えてみるとわかりやすくなる。そもそも人類の始まりから人はPR(恐らく一番最初は自己PR)は始まっていて、現在に至るまで、その概念や手法は変遷しつつある。

そういった前置きを説明した上で、前半は私から

■「広報」と「広告」の違いってなに?

■情報環境の変化に沿って「何を伝えるか」「どうやって伝えるか」

■「戦略PR」「戦略的なPR」「戦略的でないPR」

■「ソリューション営業の終焉」と「自ら学ぶ購買者」

■アジェンダ設定(課題設定)とPRの結果の可視化

■戦略「風」PR/PR枠の広告枠化(安く買える広告枠)

といった内容についてお話しさせていただいた。

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後半は、博報堂DYメディアパートナーズの森永真弓氏を迎え、トークセッションを行った。森永氏とは「WOMマーケティング協議会」以来のお付き合いになる。「博報堂買物研究所」を経て、メディア環境研究所にも所属した、購買層の感覚に長けたプロフェッショナルである。また、ご自身がいわゆる「アニオタ」であるという視点からも大変興味深いお話を伺うことができた。

こちらのトークセッションの方が客観的に面白かったと思うので、以下、トークセッションの内容を抜粋する。

◆「純広告」の力がなくなって「PRの力が強くなっている」というのがありますが、それは本当だと思いますか。

森永:ジャンルにもよりますが、商品力やブランド力のあるものはPRの方が効果が高いものもあるし、背景が語れるものがいっぱいある場合は広告費を使わなくてもPR費を使った方がいいという場合もあります。ところがそうではない場合もあります。ですから、世の中全部その方向に向かっているという風に言ってしまうのは間違いだと思います。「ものが売れる」のか、「視聴者、購読者が増える」のか実際のビジネスにコミュニケーションでどう影響を与えるかということが一番大事だと思いますが、下手をするとその担当者が、「その手法を選んでいる自分」に対して自意識過剰になってしまう恐れもあるんです。そういう流れの中で、「○○は終わった」みたいな話が出てくるというのはあると思います。自社を見極めるというのが必要です。

◆PRと広告の社内的溝はあると思いますか。

森永:会社によっては「今回はPRの提案を」「今回は広告の提案を」と個別に依頼される場合もありますが、そうでない場合も増えてきました。キャッチコピーがこれで、デザインがこれで、といったいわゆる伝統的なプレゼンテーションでなく、複合的な提案ができるような顧客をもっと増やしていきたいと思います。ですから逆に依頼する側の企業にもPRと広告の境目なく「まるっとまかせてみる」様な依頼をすると意外にいいものが出てくるのではないかと思います。自分たちに期待がかかっているということによって、その案件につけるスタッフィングが変わったり、モチベーションが上がったりする、その関係性をもっと変えていくことで、PRとか広告とかの分かれ目がないような提案ができると思います。

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片岡:「戦略PRをやってほしい」という依頼を受けることが多いんですが、実際に行くと「いくらぐらいでどれぐらい露出するの」という話になります。この時点で「それって広告ですよね」となります。その方が社長さんだったり決定権を持っている方の場合は、広報と広告の違いを説明してハイブリッド型の提案をして、一回わかるとすすっと話が進みます。一方伝統的な会社、悪く言うと官僚的な会社は縦割りで、広報畑の方は「お金を払ってPRする」のをものすごく嫌うんですね。一方広告の方はフリーパブの話を持っていっても聞いてもらえない。ところが一方で、読者は僕らがナーバスになるほど、広告かフリーパブかということはひょっとしたら気にしていないのかもしれません。

森永: スマホが普及するようになってから、いわゆる「脊髄感知力」みたいなのが出てきました。タイトルだけ見て反応する。中身読んでないでしょう、みたいなのもよくあります。そうやって広がっていくと一方でリスクもあります。最近ゲームのプロデューサーと話していて、若い人たちの反応が「マジで」「やばい」「きもい」「うざい」の4つにわかれるのだそうです。「きもい」と「うざい」は基本ネガティブワードですが、「マジで○○」「○○でやばい」などのようにゲームの世界観をひとつのキーワードでLineやtwitter、コンビニで、学校で、ファミレスで語ってもらうことが重要なのだそうです。他の商品についてもPRの記事の中に含まれていて、「この記事マジでやばい」後はリンクだけみたいなことも起きます。こういったネット時代ならではの、タイトルがついた時、この情報が広まった時にどういう形容詞をつけて広げてくれるかな、というクリエイティビティみたいなものは、考えるべき要素としてはあると思います。

片岡:そこは私が一番苦手なところで、Yahooニュースとかで予期せぬ炎上をしてしまうこともあります。私は古いタイプの人間なのか、それと長文を書くのは得意なので、「起承転結」をつけてしまうのです。最後まで読んでもらえればわかるのですが、タイトルだけ見て、こちらの意図せぬ盛り上がり方をしてしまう時がありますね(笑)

◆PRの成果指標について

PRの成果指標についてお話をうかがいます。A「純広告」B「記事広告」C「フリーのパブリシティ」。一般的にはフリーパブが情報的にも価値がある、次が記事広告、最後が純広告と思いますか。

森永:AとBは露出量が図れる、数の報告で終わってしまいます。Cについてはページビューが見えないのでツイートの数などアクロバティックな数字の計算になり、正直なところ報告書のための広告換算に戻ってしまうんですね。

最近ソーシャルメディアの担当をすることがあるんですが、「ソーシャルで売り上げたい」という依頼があった場合には「それはソーシャルには向いていないのであきらめてください」と言うようにしています。ソーシャルの目的は何気なく毎日見ているうちに情が湧いたり、何気なくコンビニに行ったときに目に付いたその商品を買ってもらうというところに効果があるものだと思うんです。

後は、「ページビューを上げたい」という目的で始めたキャンペーンが終わった後に、「これで売り上げがどのぐらい上がったか教えてほしい」といわれることがあります。「最後に目的を変えないでください」というしかないですね(笑)。なにが目的かということを明確に握らないと後から無駄な調査をするといった不健康なことになります。

片岡:後だしじゃんけんですね。初めはECサイトを立ち上げる企業がまずは会員を増やす施策だったのに途中から当初とは異なる成果を求めてくる。「購買に至らなかった」とかいう話になる。「登録だけ」が目的ではなく、「購買まで」が目的なのだったら、最初から当然、手法も変わってきます。その辺の見極めみたいなものを初めに最初からやらないといけないですね。

◆クリエイティブの話

森永:クリエイティブは博打みたいなところがあります。ネットについていえば、どの購買層に刺さってほしいのかというのを明確にした方がいいと思います。趣味軸、例えばジャニーズファンとかマーケティング系の男性が多いとかネットで限定するのであれば趣味軸などで限定して割り切る必要があると思います。ネットの技術が進んだことによって、ターゲティング細かくなる、つまりは配信も手がかかる。それが面倒くさいから戦略PRでまるっとできないかという依頼になりますが、実は私たちの手間は増えているというのを自覚しなければいけないと思います。

片岡:ターゲットを絞るという発想が既存のPRにはなかったと思います。会社のサービス、社長が言うことをプレスに出す、IR、危機管理というところとはまっこうから考え方が違う。少なくとも消費者、広くは社会全体、そういう意味ではマーケティングというものが重要になってくるということですね。

セミナーの最後は質疑応答。「広告、PR全般でこれはすごいと思うものは」というご質問をいただいた。私の答えは「AKB」と「ハイボール」、森永氏は「大相撲」と「宝塚」。

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以上、14時半から3時間近くに及ぶセミナーに最後までご参加いただいた皆様、ありがとうございました。また、とかく「広告」と比べると、どうしても「分かりにくい」「成果がみえない」と思われがちな「広報・PR」そして「戦略PR」という概念について、より多くの方々に少しでもご理解頂ければと思います。

(すでに言い飽きたフレーズですが、あえて繰り返し言うならば・・・)「広報力」「PR力」そして、その「戦略性」は、国際社会における日本にとっても、これからさらに重要度が高まっていくものと考えます。それだけ大切なことだと思います。