近畿地方「梅雨入り」 今年の梅雨~夏の天候は?

大阪市北区の扇町公園ではアジサイが見ごろを迎えつつあった。(6月4日・筆者撮影)

きょう6月4日午前11時、大阪管区気象台は「近畿地方は梅雨入りしたと見られます」と発表しました。近畿地方の今年の梅雨入りは、平年より3日早く、去年より8日遅いことになります。

気象衛星ひまわり赤外画像・きょう6月4日09時。
気象衛星ひまわり赤外画像・きょう6月4日09時。

梅雨も季節のひとつなので、いつから梅雨に入ったという明確な線引きはしにくいものなのですが、天気のリズムがこれまでの「初夏モード」から「梅雨モード」に大きく場面転換するタイミングになった、と受け止めていただければ良いかと思います。

今年の近畿の梅雨入りは、「梅雨前線が北上して停滞するようになった」という典型的なパターンではなく、「西から近づく低気圧や前線の動きが遅く、曇雨天がしばらく続く見通しになった」といういわば「変則的な梅雨入り」です。6月に入り、いよいよ近畿でも雨の降りやすい時期になってきた、と解釈していただくと良いでしょう。

気象台の「梅雨入り」の発表は、季節のお知らせであるとともに、「大雨の起こりやすい時期になってきましたよ」という防災情報の意味合いもあります。西日本では梅雨入りが発表されたとたんに、大雨になっている地域もあります。荒れた天気にならないうちに、近所の雨どいや側溝の掃除、いざという時の避難所・避難経路の確認など、今一度雨への備えを確かめていただければ幸いです。

■ 近畿地方 今年の梅雨の見通しは?

さて、最新の3か月予報によると、近畿では今年の6月から7月にかけては「季節の歩みが遅い」傾向になりそうだ、と予想されています。

エルニーニョ現象」が今後発生する見込みで、それが一因となって、太平洋高気圧の北への張り出しが平年より弱いと予想されているのです。梅雨前線の北上も平年より遅くなる傾向があり、明日5日にかけては大雨が予想されるものの、近畿では6月は月全体としては「梅雨前線の影響を受けにくい……降水量は平年並みか平年より少なめ」になる可能性が高くなっています。

6~8月の大気のイメージ(気象庁3か月予報資料より)。
6~8月の大気のイメージ(気象庁3か月予報資料より)。

また、詳しくは後述しますが、太平洋高気圧は今年は「北への張り出しは弱いものの、西への張り出しは強い」傾向が予想されています。梅雨前線の本州付近での北上も比較的遅いなか、暖かく湿った空気を送り込む太平洋高気圧が次第に西へは大きく張り出してくるため、近畿では7月は「梅雨前線の影響を受けやすい……降水量は平年並みか平年より多め」となる可能性が高いと見込まれています。

したがって、天候のイメージとしては、梅雨の前半(6月)は、雨の日が長くは続かなかったり(すぐに中休みも?)、仮に曇雨天の日が続いたとしても雨量としては少なかったりしやすく、状況次第では6月をトータルすれば「空梅雨ぎみ」で推移するということもあり得るかもしれません。

近畿では、ここ1か月の降水量は平年の50%程度の所が多く、このまま雨の量が少なく推移すると、農業関係を中心に水の管理などが心配になってきます。災害に結びつかない程度に、そろそろほどほどに雨が欲しいところです。

その一方で、梅雨の後半(7月)には、活動が活発な梅雨前線が停滞して雨量が多くなり、大雨による災害にいっそうの注意・警戒が必要になる可能性があるのです。前半と後半とで、今年の梅雨は表情を大きく変えるかもしれません。最新の気象情報に注意して、その情報を上手に使い、大きな災害に巻き込まれずに雨の季節を乗り切りたいものです。

■ 今年の梅雨明けは早い?遅い?

近畿地方の梅雨明けの平年は7月21日ごろ。今年は「季節の歩みが遅い」ということは、梅雨明けも遅くなるのでしょうか。その可能性も否定はできないですが、現時点ではハッキリしたことは分かりません

というのも、季節はずっと同じようなスピードで進んでいくわけではなく、行きつ戻りつを繰り返しながら進んでいくものです。

例えば、もし7月中旬~下旬ごろに数日~1週間くらいの長さで一時的に晴天が続いてしまえば、そこで「梅雨明け」となる可能性もあるわけです。全体として季節の歩みが遅くとも、「行きつ戻りつ」の範囲で一時的に夏の暑さ・晴天を先取りしてしまうこともあり得ますが、現在の科学技術ではその有無を今の時点で明確に予測することは、極めて困難です。

2か月近く先のことになると、せいぜい数週間~1か月単位で、「雨の日が多い」「暑い日が多い」というような「傾向」を示せるくらいで、今年は梅雨明けが遅くなるのか早くなるのか、現時点では何とも言えません。

■ 夏の天候は? 「エルニーニョ現象で冷夏」なのか?

今年の夏は、南米ペルー沖の海面水温が平常時よりも高くなる「エルニーニョ現象」が5年ぶりに発生すると予想されています。

エルニーニョ現象が発生すると、世界各地の天候に大きく影響します。普段と海面水温の分布が異なってくるため、普段より温かい海域では普段より雲が発生しやすくなったり、逆に、普段より冷たい海域では普段より雲が発生しにくくなって晴天が続いたり…。その結果、上空の大気の流れや気圧配置が大きく変わり、通常とは異なる天候がもたらされ、それが長引いて影響が深刻化することがあるのです。

過去、エルニーニョ現象発生した夏の平均気温。気象庁HPより
過去、エルニーニョ現象発生した夏の平均気温。気象庁HPより

一般的に、過去の事例を見てみると、エルニーニョ現象が発生した場合には日本の夏は不順で、気温が平年より低めとなる傾向があります。

今年も、比較的早い段階からエルニーニョ現象の発生が予想されており、だいぶ前から様々な媒体の見出しには「冷夏」の文字が躍っていましたが、西日本に関してはこれはミスリードと言っても良いでしょう。西日本では、冷夏の可能性が高いという予想はしていません

今年は、エルニーニョ現象が発生しても、典型的な状況とは少し異なるのです。

■ 太平洋高気圧は、西へは強く張り出す予想

今年の夏は、東南アジア方面から吹き込む季節風(モンスーン)の西風と、太平洋高気圧の南を回る東風が、フィリピンの東でぶつかって上昇気流を生み、この海域では通常よりも雲が発生しやすくなるだろう、と予想されています。上昇気流の強いこのエリアのお隣に当たる沖縄~西日本付近では、上昇した空気が下降に転じ、高気圧を強める(下降気流が強まる)と予想されています。つまり、太平洋高気圧が「西へは勢力を強める」と予想されているのです。

近畿地方・6~8月の予報(3か月予報)。気象台5月23日発表。
近畿地方・6~8月の予報(3か月予報)。気象台5月23日発表。

今のところ、近畿の8月の気温は、平年並み~平年より高くなる確率が80%(平年並み40%・平年より高い40%を合計)。一方で、平年より低くなる確率は20%と予想されています。

今年2月に気象台から発表された「暖候期予報」の段階から、夏の天候については、近畿では一貫してこうしたシナリオが予想されていました。「エルニーニョ現象=冷夏」という言葉だけがひとり歩きした、あるいは、言葉足らずのまま拡散し、「今年は冷夏?!」というイメージが広まってしまった印象を持っています。

近畿で「絶対に冷夏にはならない」と断定はできませんが、その可能性は決して高くはありません。むしろ平年よりも気温が高くなり、いつも通りに、あるいはいつも以上に、暑い夏になる可能性のほうが高いと考えているのです。

(なお、太平洋高気圧の張り出しが北へは弱く、北日本では気温が平年並みか平年より低め、という可能性が高くなっています。「冷夏」といえるほど不順な天候になるかはまだ分かりませんが、北に行くほど、いつもの年以上に、太平洋高気圧の勢力圏から外れやすくなるイメージです。)

■ 短絡的に考えないで、伝えないで

エルニーニョ現象が日本の夏の天候をすべて左右するわけではありません。ほかにも、北極からの寒気の南下の程度や、東南アジアからの季節風(モンスーン)の強さ、日本近海の海水温の状況など、さまざまな要素が複雑に絡み合って、それぞれの年の季節の天候が決まってきます。エルニーニョ現象は天候を左右する大きな要素のひとつではありますが、それがすべてではありません。

「エルニーニョ現象=冷夏」と短絡的に決められるほど自然は簡単なものではないということを、肝に銘じておきたいものです。我々気象解説者やメディアも、当然のことではありますが、丁寧な解説・紹介を心がける責任があると改めて強く感じます。

近畿地方の梅雨や夏の天候の見通しは、現時点では上記の通りです。最新の予報や解説をよく読んで利用して、大雨や暑さといった災害に巻き込まれないように、行動の役に立てていただければ幸いです。