2013年の気象を振り返る(後編)

台風18号で被害で氾濫した桂川。水害翌日も川は濁り河川敷には多数の流木があった。

(前編はこちら

■ 竜巻の被害も

9月2日には、本州付近に停滞していた前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となりました。埼玉県や千葉県、茨城県では発生・発達した雷雲の下で竜巻が発生し、通過していきました。大勢の方が竜巻の写真や動画を撮影し、テレビやウェブ上で大きく伝えられたので、記憶にある方も多いかと思います。

9月2日14時15分のレーダー。赤丸は被害発生地域。気象庁現地災害調査速報より
9月2日14時15分のレーダー。赤丸は被害発生地域。気象庁現地災害調査速報より

気象台の現地調査により、突風の強さを示す「藤田スケール」はF2と推定。このレベルは、風の強さが50~69m/s(7秒間の平均風速)であることを示します。電柱が根元から折れたり、住宅の屋根が吹き飛んだり、埼玉県越谷市や千葉県野田市を中心に大きな被害が発生しました。

また、台風18号が接近していた9月16日にも、埼玉県熊谷市の周辺で竜巻が発生し、被害が出ています。台風の北東側では竜巻が発生しやすいことが知られており、まさにその地域で竜巻が発生した事例ともなりました。

今年は気象庁が確認しているだけで、全国で50事例ほど竜巻が発生しています(海上を含む)。比較ができるここ5~6年と比べて、特に多いわけではありません。

■ 首都圏の成人式の日の雪と北日本の豪雪

去年(2012年)から今年の初めにかけては、雪の多い冬になりました。

1月14日10時30分のレーダー。首都圏でも雨が雪に変わった。気象庁HPより
1月14日10時30分のレーダー。首都圏でも雨が雪に変わった。気象庁HPより

青森県青森市の酸ヶ湯(すかゆ:アメダス)では、2月26日に積雪の深さが566センチに達しました。平年より2メートル以上も多く、現在も観測を続けている気象台の観測点の中では最も多い記録となりました。

酸ヶ湯では、あまりの雪の多さにより、雨量計が雪に埋もれたりして観測に影響が出ている可能性があると判断され、しばらく観測が休止されたほどの記録的な積雪でした。

雪と言えば、1月14日(成人の日)の東京都心での大雪を思い出す方もいらっしゃるでしょう。東京都心でも雨が昼前から雪に変わり、結果的には1番多い時で8センチの積雪を観測するほどになりました。

南岸低気圧 雪の予報は難しい

関東など太平洋側の「南岸低気圧」による雪は、予報が非常に難しい現象です。気温がほんの少しズレるだけで雨が雪に変わったり、低気圧のコースや発達の度合いが少し違うだけで大して降らなかったり大雪になったりします。気温が微妙な時などは、現在の科学技術では、前日の段階から完璧に予報することは困難です。

おそらく今シーズンも何度かは、こうした微妙な状況になると思います。天気マークだけ見たのでは「雨」としか表示されていなくても、詳しく見ると「雪」になる可能性も少なからずある、という場合もきっとあるはずです。そうした時にこそ、その予報の「幅」や留意事項について気象解説者がしっかりとアドバイスできるはずですので、我々の解説にも注視しておいてほしいと思います。

■ 夏は記録的な猛暑に

高知県四万十市(江川崎アメダス)では8月12日に、気象庁観測の国内歴代最高気温となる41.0℃を観測しました。2007年に埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で観測した40.9℃を上回り、6年ぶりの記録更新でした。

高知県四万十市の8月のデータ。右側に4つ並ぶのが40℃以上の気温。気象庁HPより
高知県四万十市の8月のデータ。右側に4つ並ぶのが40℃以上の気温。気象庁HPより

四万十市では、8月10日~13日の4日連続で最高気温が40℃以上となり、日中は記録的な暑さに。このほか、山梨県甲府市(甲府地方気象台)や甲州市(勝沼アメダス)、群馬県館林市(館林アメダス)でも最高気温が40℃以上になった日があるなど、記録的な猛暑になった地域がありました。

今年の猛暑の一因は、太平洋高気圧や、それよりさらに高い所にあるチベット高気圧の勢力が強かったこと。また、沖縄方面に進んだ台風が太平洋高気圧を強めたことも原因として挙げられます。

太平洋高気圧がなかなか弱まらず、残暑が続いていた中で9~10月には台風の接近が相次ぎ、秋をあまり実感することのないまま、晩秋から冬へと進んでしまったと感じる方も多いかもしれません。

■ 天気予報は万能ではないけれど、無能でもない

今年もさまざまな気象災害が発生し、各方面で大きな被害が出てしまいました。災害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

今季はどうなるかまだ分かりませんが、例年、クリスマス寒波・年末寒波と呼ばれるように、これから残り3週間の2013年もまだ災害に注意が必要な日があるかもしれません。また、来年2014年も、きっと少なからず気象災害が起こってしまうと思います。

大雨や台風など、荒れた天気を止めたり変えたりすることはできません。

また、天気予報も万能ではなく、現在の科学では、事前に気象状況を完璧に予想しておくこともできません。しかし、天気予報は万能ではありませんが、無能でもありません。

起こりうる気象状況をあらゆる角度から予測し、その幅の中で、「最悪の事態」を考え、利用される皆さんに呼びかけることができます。それを上手に使っていただくことで、災害から命を守れる可能性は格段に高くなる、と私は確信しています。気象情報の持つ意味や価値を予め理解して、いざという時に素早く使えるようにアンテナを張り巡らせておいていただければ幸いです。防災意識のより高い人たちの「輪」がさらに広がり、2014年は災害による被害が最小限に食い止められるように、と願わずにはいられません。

また、私たち気象解説者・気象技術者も、どのように伝えることが最も「心に響く」のか、私たちが持つ危機感をどうすれば迅速に適確に伝えられるのか、常に考え続けていかなくてはなりません。情報の使い方を含めて丁寧に解説することで、一人でも多くの方が災害に遭わずに済むように、来年もまた努力を続けていきたいと思っています。