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求む「もう1人」 男子バレー 浮き彫りになった課題

柄谷雅紀スポーツ記者
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 バレーボール男子の日本代表は14日にネーションズリーグ第3週、ブルガリア大会を迎える。第2週の東京大会を終えて浮き彫りになった日本の課題――。それは「もう1人をどうするか」。アウトサイド(OH)石川祐希(パドバ)、オポジット(OP)西田有志(ジェイテクト)という2人の攻撃の軸に加え、石川の対角を務めるOHを確立する必要がある。

石川と西田は日本の「武器」

 7日のアルゼンチン戦。石川の活躍は鮮烈だった。31本のスパイクを打って21本を決め、総得点は28点。チームの総得点の3分の1を一人で稼ぎ出した。ここまでの2週、6試合を終えて石川の総得点は83点、スパイク決定率は53.73%。ともに全体の8番目という堂々たる数字を残している。

 追随するのは19歳のOP西田だ。総得点は72点だが、スパイク決定率は石川をしのぐ54.31%。全体で5番目に入る高い数値をたたき出し、代表2季目にして主力に成長した。

 この2人は日本が世界と戦う上で間違いなく武器になる。ただ、現状で日本の武器はここだけだ。

差があるミドルブロッカー陣

 ブラジルやイランなど、世界トップレベルの強豪国との最大の差はミドルブロッカー(MB)だろう。ブラジル戦では日本のMBの総得点が11点なのに対し、ブラジルは19点。イラン戦では日本が6点なのに対して、イランは16点だ。速攻のバリエーションに打点の高さ、コースの幅、打球の強さ…どれをとっても日本は見劣りしている。セッター関田誠大(堺)も「全然違う」と認める。

 ブロックでの存在感も物足りない。日本のMBが取ったブロックでのワンタッチは、ブラジル戦で18本、イラン戦では17本だった。これもブラジルの28本、イランの24本を大きく下回る。横への移動の速さや手の出し方などの差は明らかで、育成の段階から本腰を入れて強化する必要がある。

 一朝一夕にMB陣に力が付くわけではない。現状で世界と戦うことを考えれば、日本に必要なのはOH2人とOPで得点をもぎ取っていく力だ。石川、西田は十分な数字を残している。だが、この2人だけでは苦しい。

 ラリーが続くと、最後に託されるのは現状では石川か西田だけ。これは相手ブロックにとっては好都合だ。石川が前衛のときには、相手ブロッカーはレフト側の石川とライト側の西田を意識すれば事足りる。中央への意識は薄くていいから、1枚半以上のブロックが石川と西田に付くことになり、2人は苦戦した。

 逆に石川が後衛になると攻撃の幅は広がる。前衛レフトの攻撃とライト側からの西田の攻撃、さらに石川のパイプ(中央からのバックアタック)をケアしなければならず、ブロックが割れる場面も多くあった。しかし、石川の対角に入る選手はパイプが少なく、存在感が薄い。そのため、前述のような事態に陥ってしまっていた。

「もう1人」に求められるもの

 セッター関田に石川の対角に入る選手にほしい要素を問うと「僕はパイプがほしい」と明かした。石川本人も「攻撃に対してもっと積極的な選手。もう1人、攻撃力を持っている選手がほしい」と挙げた。

 常に速攻を含めた4枚攻撃を展開できるのがベストだが、速攻が使えない状況でもOH2人とOPによる3枚攻撃は維持したい。それができれば、取り切れるラリーも増えるはずだ。

 石川の対角に起用する選手に求める要素を、中垣内祐一監督は「サイドアウトも、ハイボール(2段トス)もしっかり打つことが大事だし、サーブレシーブも同様に大事。相手OPと対する機会も多いので、ブロック力も求めたい」と話した。もちろん、これら全ての能力を持つ選手が理想ではある。全ては当てはまらないにしても、最低でもパイプで存在感を示せる選手であってほしい。

 思い返せば、日本が最後に自力で五輪に出場した2008年北京五輪。このときにはOP山本隆弘、OHに越川優と石島雄介という個で事態を打開できる3人がそろっていた。

 今季、OHで起用されているのは柳田将洋(ユナイテッド・バレーズ)、高野直哉(堺)、福沢達哉(パナソニック)、久原翼(パナソニック)。「もう1人」のピースを埋める選手はこのうちの誰かになるのか、それとも別の選手になるのか。今後の戦いぶりに注目したい。

スポーツ記者

1985年生まれ、大阪府箕面市出身。中学から始めたバレーボールにのめり込み、大学までバレー一筋。筑波大バレー部でプレーした。2008年に大手新聞社に入社し、新潟、横浜、東京社会部で事件、事故、裁判を担当。新潟時代の2009年、高校野球担当として夏の甲子園で準優勝した日本文理を密着取材した。2013年に大手通信社へ。プロ野球やJリーグの取材を経て、2018年平昌五輪、2019年ジャカルタ・アジア大会、2021年東京五輪、2022年北京五輪を現地で取材。バレーボールの取材は2015年W杯から本格的に開始。冬はスキーを取材する。スポーツのおもしろさをわかりやすく伝えたいと奮闘中。

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