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男子は女子に続けるか バレーボール五輪予選

柄谷雅紀スポーツ記者
2大会ぶりの五輪を目指す男子バレー。鍵を握るのは石川祐希だ(写真:伊藤真吾/アフロスポーツ)

強敵ぞろい

4年に一度の勝負が始まる。バレーボール男子のリオデジャネイロ五輪世界最終予選兼アジア予選(OQT)が28日に開幕する。2大会ぶりの五輪出場を目指す日本男子は、先に出場を決めた女子に続くことができるか。待ち受けているのは、女子よりも厳しい戦いだ。

今大会の出場国をおさらいしておこう。世界ランキング順に紹介すると、2位ポーランド、8位イラン、10位カナダ、フランス、13位オーストラリア、19位中国、20位ベネズエラ、そして14位の日本である。この中で、アジア(日本、イラン、オーストラリア、中国)最上位になるか、それを除く上位3チームに入れば出場権を獲得できる。

実力的には2014年の世界選手権優勝のポーランド、世界ランキングは10位ながら、昨年のワールドリーグを制したフランスが頭一つ抜けている。しかし、他の国も侮れない。ロンドン五輪予選以降、2勝6敗と大きく負け越しているイラン、昨年のワールドカップではストレート勝ちしたが、ベテランエースのギャビン・シュミットが引っ張るカナダ、212センチのトーマス・エドガーらがスケールの大きいバレーを展開するオーストラリア、大型選手がずらりとならぶ中国、南米予選で強豪アルゼンチンをフルセットまで追い詰めたベネズエラ。すべて勝てるかもしれないし、その逆でもおかしくない。女子のペルーやカザフスタンのように、勝ちをある程度計算できる相手はいない。まさに1試合1試合がリオへの正念場だ。

鍵を握る序盤戦

その中でも第1、2戦の出来は重要だ。石川祐希や柳田将洋、深津英臣、出耒田敬らOQTを経験していない選手が半分以上をしめる。南部監督も「OQTが初めての選手がたくさんいる。初めからいいリズムを作れれば」と話していた。対戦日と対戦国を2試合指定できる開催国の権利を生かし、「比較的戦いやすい」(南部監督)と指定した第1戦のベネズエラ、第2戦の中国には確実に勝っておきたい。逆に、ここで負けてしまうと一気に厳しくなる。若い選手を乗らせるためにも、そしてチームが波に乗るためにも、大事な2試合になる。

8年前と「似ている」

8年前の北京五輪出場を決めた大会、そして4年前のロンドン五輪を逃した大会の両方を知る主将の清水邦広は言う。「8年前に近いような状況の中で、チームが似たような感じでできている」。清水が意図したところとは違うかもしれないが、確かに似ている感じがする。

16年ぶりの五輪出場を決めた8年前。原動力となったのは強力なサーブを持つ2人の若いサイドアタッカー石島雄介、越川優と、五輪を逃した悔しさを知るサウスポーエース山本隆弘だった。ビッグサーバーと言えるこの3人の強力なサーブ、そして決定力のあるスパイクを武器に立ち向かった。石島、越川のレセプション(サーブレシーブ)が乱れると大ベテランの荻野正二が入ってチームを落ち着かせる。ベテランリベロの津曲勝利の存在も若い2人に安心感を与えていた。

今大会で先発が見込まれるサイドアタッカーは20歳の石川と23歳の柳田。ともにビッグサーバーである。そしてオポジットに入るのはロンドン五輪を逃した悔しさを知る清水だ。ベンチには安定したレシーブが持ち味の米山裕太も控える。ここ数年、不動のリベロとして君臨してきた永野健も存在感は抜群だ。3人のビッグサーバーを前面に出して立ち向かっていく。頼れるベテランもいる。若手がのびのびやれる環境もそろっている。確かに、8年前に似ている。

ミドルブロッカーの起用法にも注目

ただ、8年前はミドルブロッカーに身長205センチで攻撃力のある斎藤信治、山村宏太、193センチながら跳躍力のある松本慶彦と実績のある3人がそろっていた。今回は違う。南部監督はエントリー14人に昨年のワールドカップよりも1人増やしてミドルブロッカーを4人選んだ。出耒田、富松崇彰、傳田亮太、山内晶大だが、富松以外はまだ経験が浅い。南部監督は「中央からのクイック、パイプの攻撃をいかに使えるか。4人それぞれ持ち味が違う。層を厚くしたかった」と説明する。

具体的には、高さのある相手には身長199センチの出耒田や204センチの山内、キャリアのある選手を入れたいときにはベテランでブロック力もある富松、サイドアウトを取って逃げ切りたいという場面では攻撃力が高い傳田を投入するという。それぞれのミドルブロッカーがどのような持ち味を見せてくれるか、どの場面でどの選手を起用するかも注目したい。

リオへの道を

石川、柳田のジャンプサーブは世界のトップレベルにも十分に通用する。鋭いサーブをガンガン打ち込んで日本のペースをつかんで欲しい。サーブで相手をある程度崩せれば、日本のディフェンスが通用することは昨年のワールドカップで実証済みだ。あとは海外勢の強力なサーブにレセプションがどこまで耐えられるかが鍵になるだろう。

「オリンピックに行けなかったら、またバレー界を低迷させてしまう」と清水は強い決意をにじませる。2大会ぶりの五輪へ。全てが噛み合ったときにこそ、リオへの扉は開かれるはずだ。

スポーツ記者

1985年生まれ、大阪府箕面市出身。中学から始めたバレーボールにのめり込み、大学までバレー一筋。筑波大バレー部でプレーした。2008年に大手新聞社に入社し、新潟、横浜、東京社会部で事件、事故、裁判を担当。新潟時代の2009年、高校野球担当として夏の甲子園で準優勝した日本文理を密着取材した。2013年に大手通信社へ。プロ野球やJリーグの取材を経て、2018年平昌五輪、2019年ジャカルタ・アジア大会、2021年東京五輪、2022年北京五輪を現地で取材。バレーボールの取材は2015年W杯から本格的に開始。冬はスキーを取材する。スポーツのおもしろさをわかりやすく伝えたいと奮闘中。

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