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イーロン・マスクの大朝令暮改、9.3億ドルのBTC売却で9.3億ドルの機会損失

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

twitterの買収撤回から、ビットコインの売却へとイーロン・マスクの大朝令暮改が続く…。

ビットコイン損切り売りのタイミングとしては、購入時期から考えると、そう悪くはなかった。しかし、売るならもっと別のタイミングが何度もあったことが悔やまれる…。さらに、イーロン自らの言動によってのシワ寄せもあったはずだ。自ら語っていることの朝令暮改だらけだからだ。イーロンの経営判断による『チャブ台返し』に匹敵する大朝令暮改は、もはや日常茶飯事となりつつある。

 自ら語ることによっての市場への影響も多大だが、リスクも多大だ。何よりも、そのリスクを一人で背負えるというのが彼の最大のアドバンテージでもある。

□EV大手のテスラは2022年第2四半期(4-6月期)、9億3600万ドル(約1295億円)相当のビットコイン(BTC)を売却したことが(2022年7月)20日、同社が発表した四半期決算報告で明らかになった。

□テスラの第2四半期末のビットコイン保有高は2億1800万ドル(約302億円)、過去3四半期は12億6000万ドル(約1744億円)だった。

□同社は第2四半期はじめには4万2000ビットコインを保有していた。仮にその75%を9億3600万ドルで売却したとなると、平均売却価格は2万9000ドルとなる。第2四半期末(6月末)時点のビットコイン価格は約1万8700ドルだったので、テスラは第2四半期前半に売却することで保有資産の大幅な減損を回避したことになる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/becf5bdbcb5dfb2edcf3eca6600bb2f352485d58

テスラがビットコイン(BTC)を15億ドル分、購入を発表したのが2021年2月8日。平均購入価格は、3万1000ドル だった。

3万9000ドル台のBTCは、その後、4万4000ドル台にまで価値は急上昇した。

平均2万9000ドルとすると2022年5月27日頃の売却が推測できる。

出典::4knn.tv
出典::4knn.tv

□昨年(2021年)2月にテスラのバランスシートに15億ドルのビットコインを追加したイーロン・マスクが、今でもビットコイン、イーサリアム、ドージコインを保有していて「売るつもりはない」と宣言し、インフレ率が高いときはドルを保有しないよう人々にアドバイスした。

https://forbesjapan.com/articles/detail/46372

『売るつもりがない』や『インフレ率が高いときはドルを保有しないよう人々にアドバイス』などの言動がなければ、良かったのかもしれない。しかし、イーサリアムやドージコインは売却していない。

■あの時に売っていれば、2倍の価値に…損失は9.3億ドル

テスラは2021年2月に15億ドルのビットコイン購入を明らかにし、2021年3月24日からテスラの購入をビットコインでも可能とした。しかし、2021年5月12日にビットコインでの決済停止を発表している。

 もしも、2021年5月12日、この時期に決済停止と、同時にビットコインの売却をしていれば、5万8,000ドル近辺で売れたはずだ。今回の売却は2万9000ドル近辺なので、約2倍の価格差だ。

9.3億ドルどころか、19億ドル近くで売れ、初期の15億ドルの投資で4億ドルもの利益は叩き出せたはずだ(仮想通貨の税金は加味せず)。

あの時に売っていれば、19億ドル。今回の損切で9.3億ドル。つまり、損失は9.3億ドルに及んだ…。

出典:4knn.tv
出典:4knn.tv

とはいえ、テスラそのもの2022年の第2四半期の決算発表は順調である。

米国会計基準による

売上高は169億3400万ドル

(1ドル=138円換算で約2兆3369億円、前期比42%増)、

営業利益は24億6400万ドル約3400億円、88%増)、

売上高営業利益率は14.6%(同3.58ポイント増)と高水準の業績を達成した。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/13343/

当期純利益22億5900万ドル(3117億円)で、前期の33億1800ドルから32%減だが、前年同期比では98%増と、ほぼ2倍だ。

出典: TESLA 8K
出典: TESLA 8K

出典:TESLA 8K
出典:TESLA 8K

https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1318605/000156459022026048/tsla-ex991_130.htm

□貸借対照表上に9億3600万ドル(約1300億円)の現金が計上され、6月末のビットコイン保有残高は2.18億ドル(約300億円)

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62803060R20C22A7EE9000/

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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