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#デジタル期日前投票システム』に変えれば、このうしろめたさがなくなるのでは? #期日前投票宣誓書

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:選挙投票所入場券

KNNポール神田です。

2022年6月22日水曜日、参議院選挙の『公示』がなされ、翌日23日から期日前投票が開始された。そして、投票日は2022年7月10日(日)の7:00~20:00となる。

筆者は、『投票日』に投票したことがない。常に『期日前選挙』で『選挙権』の権利を行使している。そう、選挙の投票は国民の権利のひとつである。決して『義務』ではないのだ。義務には罰則がともなうことが多い。

ただし、公示日の翌日、に期日前投票所にいっても、候補者の『選挙公報』もなく、立候補者の名前と政党くらいしかわからない。

候補者の顔すらわからない。それどころか、男女の性差すらわからない。差別させないのであれば、選挙ポスターの意味さえなくなる。

これでどうやって、『選挙の権利を行使しろ』というのだろうか?

そもそも『公示日』の17時までに、被選挙者の立候補の受付をおこなっている時点で翌日からの『期日前投票』に間にあうわけがない。せめて、公示日の10日前までに、立候補の受付と『選挙公報』の受理をして、『期日前選挙』におこない。

公示日翌日には印刷が間に合わなくても、デジタルで候補者の情報をすべて開示するべきだ。

スマートフォンで可視化しにくいPDFファイルも公職選挙法でHTML文書も用意させるべきではないだろうか?

東京選挙区では、候補者リスト のみ掲載された。

https://www.r4sangiinsen1.metro.tokyo.lg.jp/senkyoku/index.html

やはり、顔も、年齢もわからなければ、男女もわからない。なによりも比較検討すべき情報がどこにもない。個別のURLリンクがあるだけだ。それでもURLもかつては全角文字で、リンクさえなかったのでかなりの進化とは言っておきたい。

出典:東京都選挙管理委員会
出典:東京都選挙管理委員会

公示日から48時間以上経過してもいまだに、『選挙公報』は、Coming Soon となぜか英語表記されたままだ。なぜ英語?

通常、この選挙公報が公開されても、また、これがPDFファイルでスマートフォンでは識別しにくい。テキストファイルと写真で印刷よりも早く、デジタル化して掲示すべきではないだろうか?

候補者がフォームに打ち込めば、そのままで掲載できる仕組みを全国的に総務省かデジタル庁が事前に、ペラ一枚用意すればすむはずだ。

選挙ポスターをいちいち張り巡せるために、立て看板を立てるよりも、投票所の前でスマートフォンで確認できたほうが、行政せービスとしては数段スマートで、国民の『知る権利』に貢献できるはずだ。

■せめて『投票所入場券』くらいは電子化しないか?

しかし、選挙の投票をみると、以前は『個人宛てのハガキ』だったが、現在は『封書』で『世帯全員分の入場券』が送付されるようになりだした。単身世帯だと割高(送料63円)になるが、2人以上の世帯で封書(84円)であれば割安になるだろう。その差は『42円』これだけで単身以外の世帯では、一人あたり『42円』の選挙費用の節約となる。

東京都の一般世帯数は721万世帯単独世帯は362万世帯(令和2年国勢調査)なので、359万世帯で42円浮くと…最低でも約1億5,000万円の節約となる。

あくまでもこれは郵送費のコストである。

他にも自治体ごとの、データ管理コストに、印刷コスト、封入コストと、人件費と、郵送費の5倍以上のコストが考えられる。これだけでも東京都だけで、約7.5億円以上の経費節約となる。単独世帯が日本一なので、これが一斉に47都道府県で一斉となれば数十倍の選挙関連経費の節約となっているはずだ。

『選挙業界』ほど合理化すればするほどコストが浮く業界はない。総務省とデジタル庁が協力し、『マイナンバーカード』にせめて『投票所入場券』を付与するだけで、本人確認が簡素化できるだけでなく、これらの郵送コストがほぼ皆無となるのだ。

こらの新規の開発・運用コストよりも、『マイナンバーカード』普及のメリットが生み出せるはずだ。

もちろん、デジタル庁 年間予算4,720億円の1/365日分で12.9億円なので、祝日1日分だけでも『マイナンバー選挙関連予算』に投資する価値は十分にあり、たった1日でも潤沢すぎる予算である。

はば広く、国内のシステム開発会社にオープンな仕様で『デジタル投票所入場券システム』を応募させれば1億円もかからないはずだ。大手ベンダーでなくても実際に開発できる企業に発注できる権利も予算もデジタル庁にはあるはずだ。

■なぜだか?うしろめたさが残る期日前投票

出典:期日前投票 請求書兼宣誓書
出典:期日前投票 請求書兼宣誓書

『期日前投票』はとても便利なしくみなのだが、この宣誓書を書かなければならないというのがとてもうしろめたさが残るのだ…。

公職選挙法 第四十八条の二 期日前投票

『選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれる選挙人の投票については、第四十四条第一項の規定にかかわらず、当該選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から選挙の期日の前日までの間、期日前投票所において、行わせることができる』とある。

つまり、やむを得ない事由等で投票日に投票できない人は、なぜだか、1~6の理由に○を囲み『宣誓』しなければならないのだ。

まず、『7.その他』を設けなければならない。1から6の理由以外に、せっかくの日曜日に投票に生きたくないからだ。

あくまでも『選挙』は『義務』ではなく『権利』である。なぜ、『権利』なのに『投票日』に行けない理由を『宣誓』させる『権利』が選挙管理委員会にあるのだろうか? 

また、これに署名させたところで、統計を取る作業が無駄。

むしろ電子化して、もっと『期日前投票』をする行動心理を科学する判断に利用すべきだろう。

期日前投票所に『マイナンバー』に紐付け活用された『デジタル期日前投票アプリ』のQRコードをかざすだけで、宣誓書も入手でき、何日、何時何分に投票したのかをビッグデータとしても分析できる。

マイナンバーカード取得にマイナポイント2万円プレゼントするよりもマイナンバーカードを活用した人に還元したほうが理にかなっている。

選挙という、国民の権利を行使するのに、個人情報である個人の都合を宣誓させるというのもプライバシーの侵害だろうし、無駄な情報の集収にしかすぎない。

誕生日と自署のサインを書かせたところで、なんの虚偽の罰則もない『宣誓』を書かせる意味はなんだろう? 

公職選挙法にも『宣誓』の文字は政治家になる被選挙権者にはあるが、選挙権者には明記されていないので、期日前選挙時に『宣誓』を要求するのは、公職選挙法違反ではないだろうか?

■一回の国政選挙費用は 596億円 1票1,064円

筆者の試算によると、衆議院の選挙費用は596億円となった。

1票のコストは1,064円だ。

□2017年度の衆議院選挙では、総務省は『596億円』の税金を一般会計から歳出している。

□596億円の衆議院選挙予算を、1票(5,598万人)で割ると、1票あたりのお値段は1,064円となる。有権者数(1億562万2860人)で割っても564円となる。

A 都道府県に555億円(※実質119億円)

B  市区町村に436億円 

C  放送事業社に7,700万円 

D  新聞社に17億円 

E  交通費に6,100万円

F   候補者のはがきの郵送費1,700万円 

G  啓発企画に 4億9,600 万円 

H  委員手当80万円 

Cの『政見放送』の『7,700万円』も営業と値引き交渉ができるはずだろうし、Dの新聞者への『17億円』は候補者の広告は、もはやなくても良いだろう。そのために、『選挙公報』が存在している。ネット広告費にしたほうが適切だろう。

E の交通費を負担する意味もわからない。 Fの候補者のハガキの郵送費の負担も意味がない。なによりもG 啓発企画に4.9億円かけるならばコストパフォーマンスを投票率で評価すべきだろう。

1回の選挙の費用は600億円

□総務省から発表されている「行政事業レビューシート」によると、2009年の選挙では598億4400万円、2012年の選挙では587億5300万円 、2014年561億4300万円、2017年は596億7900万円の経費がかかっている

衆院選および国民審査の管理執行費用……555億円

選挙に関する新聞広告費……17億円

候補者用無料葉書の発行費用……17億円

啓発企画の実施、開票速報業務費用……5億円

その他NHKの政見放送、交通事業者等への経費など……2億円

https://allabout.co.jp/gm/gc/490136/

参議院選挙 3年に一度 500億円づつ

□直近2回の参議院議員選挙では500億円を少し切る程度の費用

□平成17年(2005年)第44回衆議院議員選挙の745億円

https://www.huffingtonpost.jp/katsuseijika/a-member-of-the-house-of-councilors-vote_b_9076308.html

これらのコストをかけてまで、3年に一度の参議院選挙や、衆議院選挙などの国政選挙がおこなわれている。

デジタル技術を通じて、効率化や合理化することによって損なわれるものはなにもない…。従来のやり方を踏襲すればするほど、不合理なままである。

『マイナンバーカード』が、そこにあるのに使わないのが、一番もったいない…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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