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イーロン・マスクが米国大統領になる日 ~トランプtwitter復帰後の未来~

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:REX/アフロ)

KNNポール神田です!

相変わらず、イーロン・マスクの周辺のニュースが耐えない…。しかも、今回の発言は、twitterには戻らないと公言しているトランプ元大統領にとっても決して、悪い話ではなさそうだ…。

□5月10日(現地時間)、英Financial Times主催の「Future of the Car」サミットでのオンラインインタビューで、自分はまだTwitterを所有しているわけではないが、もしオーナーになったら、永久凍結されたドナルド・トランプ前大統領のアカウントの凍結を解除すると語った。

□「(Twitterの共同創業者で前CEOの)ジャック・ドーシー氏とも、この問題については話し合い、永久凍結は(害のある)botやスパムなどを対象とした、非常に限定的なものであるべきだという意見で一致した。トランプ氏のアカウント凍結は正しくなかったと思う。(中略)凍結してもトランプ氏は発言の場を失うわけではなく、(同氏が立ち上げた)Truth Socialが米国の右派にとっての主要なSNSになるだろう。そうなると、(右派も左派も)誰もが語り合える場を持つより悪い。だから、私は(トランプ氏の)永久凍結を解除するだろう。

□「これは言いたいことを何でも発言していいという意味ではない。違法なことや、世界を崩壊させるようなことをツイートしたアカウントは一時的に停止したり、問題のツイートを非表示にしたりする必要はある。(中略)一時的なアカウント停止は適切だが、永久凍結はいけない。だから、もし買収が完了したら、トランプ氏のアカウントは復活する可能性がある」

イーロン・マスク氏、「Twitterの買収が完了したらトランプ氏の永久凍結を解除する」

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2205/11/news067.html

イーロン・マスクによる、440億ドルによるtwitterの買収は、2022年内に終わる見込みだが、資金面においてもまだ調整している段階にある。

イーロン・マスクの資産総額は2,750億ドルだが…手元には30億ドルの流動資産のみ。残りの210億ドルはどこから?

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20220427-00293298

しかしだ…買収後、非上場を目指すtwitterにとって、もはやイーロン・マスクの実質プライベートカンパニーといっても過言ではない。私企業が、社会の、いや世界の自由な言論の場としてのtwitterのプラットフォームから大統領のアカウントを復活させる権利は当然行使されても誰も文句のつけようがない。

トランプも今後の共和党全体のパワーバランスを考えると、拒絶する理由はどこにもないのだ。

2021年1月9日以来、トランプのアカウントは凍結されている。

Twitter 永久停止、トランプ大統領8,877万人フォロワーアカウントが一瞬にして消えた日

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20210108-00216645

■2022年11月米国中間選挙までにアカウントを復活したいトランプ元大統領の思惑

米国中間選挙は、任期6年の上院の1/3、任期2年の下院の435全議席が改選される2年に一度の重要な選挙イヤーとなる。

□2022年11月投開票の米中間選挙に向け、米国内では民主、共和両党が候補者を選ぶ予備選挙が(2022年)5月から本格化している。

上院の共和党予備選挙では、トランプ前大統領が推薦する医師のオズ氏が、ヘッジファンド元CEOのマコーミック氏、不動産投資会社の元CEOで、トランプ政権ではデンマーク大使も務めたサンズ氏ら対立候補と競り合っており、(2022年5月)17日の予備選挙への関心が高まっている。https://www.asahi.com/articles/ASQ563QV9Q56UHBI00N.html

2020年から現在まで、上院の議席数は、民主、共和ともに、同数で、下院はすこしだけ民主党という僅差である…。

出典:NHKアメリカ大統領選挙2020
出典:NHKアメリカ大統領選挙2020

https://www3.nhk.or.jp/news/special/presidential-election_2020/

今回の中間選挙の動向次第で、来る2024年の米国大統領選挙での下地や世論は大きく動く可能性が出てくることだろう。

トランプにとって、twitterのアカウント復活はとても大きな機会となることだろう。

出典:NHKアメリカ大統領選挙2020
出典:NHKアメリカ大統領選挙2020

なんといっても、前回の大2020年の米国大統領選挙でも、選挙人数では、トランプは過半数の270人のうち232人獲得していた。また、米国の人口の少ない中西部地域を見るとトランプ勝利地域の面積比は広大である。

twitterの買収完了前であっても、すでに合意の買収なので、トランプがなんと言おうが、イーロン・マスク側が勝手にトランプのアカウントの凍結を解除することも想定できる。

トランプはそれでも拒否するだろうか? 筆者はそうは思わない。『せっかくのイーロンの好意を無にする理由を私は持っていないと』して、トランプが、翌日から大復帰のツイートのオンパレードというのが容易に想像できる。

そして、そのツイッター復帰によるアナウンス効果で共和党が善戦し、11月の中間選挙で共和党がかなりのシェアを奪還したならばトランプ側、いや、共和党側からもtwitter社ではなく、イーロン・マスクに対しての評価もさらに上昇することだろう。

そして、イーロン・マスク自身もtwitterで、2008年はやや左よりの真ん中にいたが、左が極左になったことにより、2021年には右傾化している構造を表現している。

■アポロ計画ならぬ、マース計画への布陣

共和党のトランプと、イーロン・マスクのスペースXとのベネフィットは、宇宙計画でも非常に親和性が高い。

□共和党候補であるトランプ大統領は世界の宇宙開発競争に勝つとして2024年の月面着陸を目指す「アルテミス計画」を打ち出す一方、国際的な共同ミッション「国際宇宙ステーション(ISS)」への米国の資金援助を25年で終わりにし、ISS運営は民間宇宙企業に移管させることを狙っている。(2020/11/03)

https://jp.reuters.com/article/usa-election-space-race-idJPKBN27I0YY

『アルテミス計画』でNASAは月着陸の開発・運用にスペースXを選定している(2021/04/17)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/アルテミス計画

共和党への立役者となったとすると、イーロン・マスクは自分の本来の夢というか野望は一気に加速することができる。

火星への移住計画に関しての法案や、『ハイパーループ』や『ボーリングカンパニー』のような地面の掘削の許可など、一企業ではできなかった可能性が一気に動き出す。

実際にLasVegasでは『ボーリングカンパニー』の交通システム『VEGAS LOOP』が稼働している。

『テスラ』という電気自動車だけでなく、道路や社会インフラ、宇宙計画、それだけでなく、『Neuralink(ニューラリンク)』、という脳へのインプラントも開発している。

まるで、21世紀に蘇ったエジソンといっても不思議ではない。

いまから、2年後の2024年、米国大統領選挙に、高齢のバイデン大統領へ挑むのが、トランプではなくイーロン・マスクである可能性はないとは言えないだろう。

トランプ大統領就任も、当時は、まさかの瞬間!であったからだ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20161109-00064255

まるで、SF映画のような話ばかりだが、イーロン・マスクの場合はそれらの技術をすべて実現しようとしている。1960年代、アメリカのアポロ計画を発表し、実現できたのは、ケネディ大統領のイマジネーションがあった。

世界で最もリッチで、かなりクセの強いイーロン・マスクにとって、火星計画の目的の手段のひとつとしてであれば『米国大統領』のポジションはとても使えるツールだと合理的に考えているのではないだろうか?

【追記 2022/05/12】

しかしながら、イーロン・マスクの国籍はアメリカであり、合衆国市民ではあるが、出生地は南アフリカのプロテリアだった…。カナダ国籍も南アフリカ国籍もあるが合衆国憲法によると米国大統領は出生地がアメリカでなければならないとあるから、現在のところは無理だ。

アメリカ合衆国憲法 第2章第1条第5項 によると、

『出生により合衆国市民である者、または、この憲法の成立時に合衆国市民である者でなけれ ば、大統領の職に就くことはできない。年齢満35 歳に達していない者、および合衆国内に住所を得て14 年を経過していない者は、大統領の職に就くことはできない』

2024年、イーロン・マスクは、どの大統領を応援する側にまわるのか? トランプ元大統領とのタッグは、バイデンの再選よりは現実味があるが、極端すぎる気はしてならない。

それでもトランプ政権の間は、幸いにも大きな戦争にアメリカは関与しなかった。極端な政策であっても戦争をしたがらず、テクノロジーに興味のある大統領を望みたい…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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