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前澤さん『 #宇宙から全員お金贈り 』で知っておきたいその本当の理由

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(提供:Roscosmos/ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

宇宙からの前澤友作さんの無事のご帰還おめでとうございます。

帰還後の地球での最初の食事が #カップヌードル とは…リアリティがある。しかもカップヌードル発明50周年モデル。日本に帰国してもやはりあのソウルフードは食べたくなる気持ちは大富豪も一緒なんだろう。無重力では何を食べても美味しいとは思えないはずだ。食事は重力のあるところで食べたい…。

現在の前澤友作さんのtwitterのフォロワー数は1,168万人と日本国民の9.2%とほぼ消費税に近いフォロワー数だ。つまり、ほぼ10人に1人は @yousuck2020 をフォローしている可能性がある。

■『宇宙から全員お金贈り』のしくみ

出典:前澤友作全員お金贈from宇宙
出典:前澤友作全員お金贈from宇宙

『前澤友作全員お金贈りfrom宇宙』 2021年12月19日(日)から開始

https://fromspace2021.yusakumaezawa.com/index.html

『前澤が宇宙から皆さんにお金を贈ります!

ハズレはなしで全員に当たりますので、

ぜひ抽選にチャレンジしてみてください!』

とあるように、ロケットのスタートボタンを押すことによって、大半の人がハズレなく500円が付与されるようだ。

出典:前澤友作全員お金贈from宇宙
出典:前澤友作全員お金贈from宇宙

見事に500円が当選すると…

寄付金は、自分のために使うことも、寄付先を選んで募金することもできます。 どちらかお好きな方をお選びください。

どちらの場合でも、まずは前澤からの寄付金を銀行口座情報の登録なしで受け取るために、kifutownアプリをダウンロードしてください。

kifutownは前澤の関連会社が運営するアプリです)

https://fromspace2021.yusakumaezawa.com/index.html

そして、『kifutownアプリ』は、本人認証のために、LINEのIDを利用して登録するという。

出典:前澤友作全員お金贈from宇宙
出典:前澤友作全員お金贈from宇宙

本人確認のために LINE ID を収集することを許可(Allow)しないとことには次に進めない…。

■シンプルに500円を全員に配るだけならば、PayPayやポイントで配ることも可能では?

500円の寄付をもらうためには、前澤友作さんの関連会社が運営するアプリ『kifutown』のアプリをダウンロードして当選番号を入力しないともらえないという仕組みだ。

つまり、500円全員にお金を贈るのではなく、『kifutown』アプリをダウンロードすれば、500円分の利用ポイントが付与されるといういわばアプリの入会キャンペーンのようなものと捉えることができる。

実際に、どれだけの人が申し込むのかは未知数だが、マイナンバーカードを申し込んで、7,000円をもらったほうが効率が良いのは明確だろう。

何よりも、LINEの個人IDの収集を英語で許可させるという仕様は、問題がある。

実際にそれによる被害はないまでも、LINEのIDが何かの第三者に利用されるリスクは高まる。昨今、LINEのデータを預かるサーバでさえも問題になっているだけに余計に気になる…。しかも、前澤氏のお金配りの、詐欺サイトや詐欺アイコン、フェイクが蔓延しているからだ。

■むしろ、前澤氏の夢は寄付のプラットフォームづくりである

宇宙に行く夢は実現し、次は月へという思いは変わらないだろうが…、日本に寄付の文化を『kifutown』で醸成しようとしていることは確かだろう。いや、むしろ前澤氏の叶えたい本当の夢はこちらがわにあるのかもしれない。

むしろ、今回の企画は、宇宙からお金を贈るのではなく、寄付の原資を贈り、自分事として、他者への寄付に参加してほしいという呼びかけだと筆者は理解している。

現在、PayPayや給付金配布に、国民全員に一瞬にして何万円ものポイントは電子マネーを大量に送付するすべを残念ながら日本はもちあわせていない。

それは、『マイナンバー』もそうであるが、個人を公的にデジタルで証明し、付与されるポイントや電子マネー、通貨に交換可能なポイントをやりとりできるプラットフォームが存在しないから、このような『kifutown』や『マイナポイント』という仕組みが必要になる。meta(facebook)の提案していたlivraという『ステーブルコイン(安定通貨)Stable Coin』も国家間の空気抵抗で頓挫した経緯がある。

空気抵抗のない貨幣を作ってしまうと国家が一番影響を受けるからだ。

しかし、現在の『銀行』というインフラを使うと送金は大変だ。

むしろ、『kifutown』では、『kiva.org』 のようなマイクロファイナンス的なしくみや、海外送金しないで自国の送金で『Wise( TransferWise)』同等の効果を出す送金方法を利用したほうがよいのかもしれない。

LINE ID で個人認証して、かつTwitterで連携というのも、敷居が高い。

寄付をすることによって、『ふるさと納税』や『寄付金控除』のような控除額が個人あてでも設定できるような社会はいずれやってくるのかもしれない。

■個人にダイレクトにお金贈りをする理由

たまたま、お金持ちになった人の発想が、良い意味でたまたまお金持ちでない人でも、より、たまたまお金がないだけで助けられるという社会は決して悪い社会ではない。

そして究極は、お金をもらいたがる人を寄付する人に変えることだ。

何よりも、まずは『お金配ります』で釣ってはいけないのだ。

ただ、現在の前澤氏のやり方では、彼の本意が伝わりきらずもったいない限りだ。むしろ、前澤モドキの良いカモにされて、情報の真意を確かめもしないで、お金をもらいたがる人ばかりを醸成してしまっている。

そんな人にいくらフォローされても、自分のインフルエンス力と信用力は絶対にあがらない…。

効率よく、空気抵抗の少ない、寄付の方法のベストプラクティスを探すべきなのだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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