Yahoo!ニュース

M1搭載、シリコンMacはいつ買うべきなのか?今なのか?2年後なのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:Apple

KNNポール神田です。

いよいよ、Appleの『Mac』のCPUがARM社デザインの自社CPU『Apple M1チップ』を搭載した『M1、2020』のラインナップが登場することとなった。CPUは最大2.8倍、GPUは最大5倍と謳われている。

MacBook Air、13インチMacBook Pro、Mac miniに搭載され、2020年11月17日火曜日(1週間後)に販売される。

https://www.apple.com/jp/

Appleイベントでの発表 2020年11月11日(水)

https://www.apple.com/jp/apple-events/november-2020/

■『M1(Apple Silicon)』で何が変わるのか?

約半年前の『WWDC2020』で予告されたように2020年、年内にApple製のSiliconチップ『Apple Silicon』=『Apple M1チップ』搭載のMacが販売された。また、これから2年の移行期間、『インテルチップ』搭載の『インテルMac』と併売されることとなるという。ティム・クックCEOは、約2年間をかけて、すべてのMacのアプリが『Apple Silicon』へと移行する時期とも語っている。

そして、価格も『インテルMac』と比較して、『M1チップ』は、安い価格設定となっている。それは、インテルから仕入れるよりも自社でCPUも作れるようになったからだろう。

いや、むしろ戦略的に『インテル』よりも『Apple M1チップ』搭載を選択したくなる価格に設定しているようだ。『インテル・チップ』版を残しているのは稼働しないアプリやドライバーなどに対しての『保険』として考えることができる。実は、世界で一番売れている自社のiOS系チップを採用することにより、Mac部門の利益も最大化できる。

一番の大きな違いは、ARM社のアーキテクチャを核としたApple独自設計の『SoC(System on a chip(システム・オン・チップ)』である。今や、世界で一番使われているのがiPhoneやiPad、などのSoCである『Apple Aシリーズチップ』である。iPhone12シリーズには、最新の14世代目の『A14Bionicチップ』が搭載され、スマートフォンの中で低電力で高性能で発熱を抑えるという技術を10年以上にわたり培かってきている。そして今度は、PCである『Mac』に搭載されることにより、より統合化された環境を作ることができるようになる。

ARMアーキテクチャのCPUを採用しながら、iPhoneやiPadで培った省スペースでのチップ搭載によって、ノートPCにおけるボディデザインの設計には、かなりのゆとりが生まれているはずだ。今回は、まずは『Apple Mシリーズ』の初代モデルとして認識すべきだろう。ここから2年おきくらいのペースで計画的な進化が繰り広げられる…。来年は『iMac』と『MacPro』へとモデルチェンジのサイクルがはじまりそうだ。

『Mac』上で『iOS』のアプリケーションが使え、従来のアプリケーションもM1ネイティブなアプリも『ユニバーサルアプリ』で同様に使えると謳っている…が…しかしだ…古いマックユーザーにはあのシステムやOSが全く新しくなる時のカオスな日々がやってくる怖さを決して忘れてはいない…。

■あの悪夢の移行期間が蘇る…『System7(1991年)』『PowerPC(1994年)』『MacOS X(2001年)』『インテルMac(2006年)』

そう、最新OSやチップセットのシステムが変わるたびに翻弄されるのはAppleのMacユーザーの宿命でもあった。iPhoneユーザーには想像できない、『レガシー』あり『Classic』あり『エミュレーション』ありなのである…。次世代CPUに課せられた変身までの時間は、古いアプリケーションを入れ替えたり、OSを入れ替えたばかりに古いマシンが使えなくなるなどの『移行期間』の悪夢がどうしても蘇ってくる。

しかし、ティク・クックCEOが、移行期間を2年と設定していることはとても良心的だと思う。そう、焦って『M1』にアップデートしないと使えなくなるとか、インテルMacはサポートが終了するなんてことは決して言わないからだ。

そして、Appleというパラダイスな環境に住んでいる限り、OSにコストをかけることはない。しかし、いつしか心地よい『パラダイス』の環境は、『Apple税』と呼ばれるサブスクで、他でサブスクするより高めの購入を与儀なくされていたりすることもある。心地良さはきちんとしたコストの上に成立しているのだ。

■新Soc『M1』で『iOS』とシームレスな環境に?…

Windowsがモバイル環境と同一に動く環境をPCで作ってはいるが、モバイルアプリをPCで使うメリットはどこまであるのかは明確ではない。実際に、iPadでは、Apple Pencilが使えて、ファイルが使えて、キーボードが使えて、指も使える。そして、MacでもそのiPhoneアプリやiPadが走るようになっても、Apple Pencilが使えるわけでもなく、指が使えるわけではない。マウスやトラックパッドは使えるが…。

どこまでデバイス感を超えて同一アプリが使えるのかの便利さはユーザーの使用方法に委ねられる。iPhoneからMacOSにまで、そして、さらにAppleWATCHから、AppleTVに至るまで、そして、いつかは、AppleCARやらAppleVRに至るまでシームレスな環境で使えるのは、想像以上に便利そうだ。しかし、アシスタントの『Siri』はgoogleやAmazonに差をつけられている。すべてがAppleというのは幸せなパラダイスやユートピアに見えて、他の世界を見なくなってしまうディストピアでもあるのかもしれない。

■現在のiOSアプリをmacで使う必要があるか?

『iOS』のモバイルアプリを、すぐに『macOS』で使いたくて仕方がない人にとっては、今回の『M1』は、急いでポチる必要があるが、それ以外の人は、初期のバグやトラブルが落ち着いてからでもいいと思う…。

といっても最新のApple製品の『最初の1年間の満足度』はなんともいえない1年でもある。筆者は、まずは買って試して、気にいらなければ、メルカリというリユースの道を選択している。メルカリ手数料10%や送料などのコストもあるが、初期に手にした新たなガジェットを『経験』したことは『レンタル料金』として特別損として脳内計上してもあまりある経験をのこしてくれることだろう。

■低電力、長時間、USBCからのバッテリー充電

『iOS』で使いたいアプリがなかったとしても、低電力、長時間、静音設計で充電を忘れるほどのノートブックパソコンのバッテリ駆動時間はすばらしい。20時間のMacBookPro、話半分でも10時間だ。また、最近ではUSB-Cであれば、モバイルバッテリーから充電も可能なので、『コンセント』を持ち歩くという概念が『モバイル』からは消えてしまいそうだ。自分が寝ている間だけコンセントにつなげればよいだけだ。

■5年以上の『MacBook』ならば買い時だ!

かつては2年おきに『Mac』を買い替えていた筆者もこのところ10年前の『Mac』をそろそろという時期に至っている。デスクトップは、先月にMacMiniを新調したばかりだから、しばらくは不要な状態だ。テレワークが進み、MacBookProの出番が少なくなり、今回の新製品はどうするかという状態だ。iOSで使いたいアプリはiOSで完結しているのでニーズがあまりない。

しかし、新OSの『Big Sur』2020年11月13日を入れてどれだけ変化するのかも検討のところだ。そう、新OSが動く動かないかも買い替えの判断である。ただ、ソフトが『動く』『走る』というのと、『使える』というのは全く次元が違うことだ。

□Big Sur+M1チップにより、Macユーザーがかつてないほど幅広い種類のアプリケーションを使えることも予告されています。アップル製のMacソフトウェアはすべてユニバーサルアプリケーションとなり、既存のMacアプリもRosetta 2技術でシームレスに動作し、iPhoneとiPadアプリもこれからはMac上で動かすことが「できるようになります」(ここだけは現在形ではなく未来形とされているのがポイント)とされていますが、M1チップ非搭載のインテル製チップ版Macでも上記のようにアップデートのメリットはあります。

□新たに発表されたM1チップ搭載Mac3機種は、すべてBig Surインストール済みで出荷されます。そして既存モデルについては、2014年モデル以降のiMac、2013年以降のMacBook Air、2017年以降のiMac Pro、Late 2013以降のMacBook Pro、2013年以降のMac Pro、2015年以降のMacBook、2014年以降のMac miniがアップデート対象となります。

出典:次期macOS「Big Sur」、11月13日に配信開始。M1チップ搭載Macの能力を解放

すでに5年以上前のMacBookProやMacBookAirを持っている人にとっては、新しい『M1』Macを購入し、古い『Mac』を下取りやリユース市場で販売するというのは良いだろう。しかし、急いで買い換える必要はない。しかし、あと2年待てないのであれば、今が『買い時』だ!

■24回払いでも、一括払いでも値段は一緒!

24回でも手数料0%のアップルローン 出典:Apple
24回でも手数料0%のアップルローン 出典:Apple

Appleのクレジット・ローンでは、金利0%で24回払いとなっているので、毎月5,000円程度の固定費がかかっていることを認識しながら使用することができる。2年間に払い終わってからもリースでないから、使い続けることも、中古で下取りしてもらい、新しく買い替えることもできる。

Appleもそのうち、『無限くら寿司』ならぬ、『無限Apple』で、毎月5,000円と毎月1万円で常にApple製品を最低2年でサブスクできるようなプランを作ればよいのかと思う。そのメンバーには、『AppleOne』が無料とすれば、喜んでサブスクするはずだ。購入製品がなければ、かわりに株券を買い足すなどのオプションがありだったりするだろう。そう、Appleにお布施をするようなプランも考えられるだろう。

■『nVidia』に『ソフトバンクG』が売却した『ARM』

今回のAppleが『インテル』離れをすることによって、業界の風も大きく変わってくることだろう。高速なCPUを回転させし、その発熱を電力で冷却しながら使うデスクトップの『インテル』デザインから、高速なCPUを低電力でファンレス構造で使えるというスマートフォンのSocをデザインしてきた『ARM』との差だ。

すでに、『ソフトバンクG』が『nVidia』に4.2兆円で売却し、売却した『nVidia』の筆頭株主に『ソフトバンクG』がちゃっかりと収まるという売却だったのか買収だったのかというスキームが成立している。

Appleも『ソフトバンクビジョンファンド』の投資会社の一つであり、インテルとの乗り換えによって、さらに、ARMアーキテクチャの価値は上がる方向で考えられる。

まずは、あと2日で公開となる、macOS『Big Sur』で、確認し、実際の使用感を『Apple Store』などでさわって確かめてからでも遅くはない。MacBookProとMacBookAirとの差もほとんど変わらなくなってきているのでその選択も実際にハンズオンで確かめてみたい…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

神田敏晶の最近の記事