日経新聞の株式欄がゼロになった東証システム障害

出典:2020年10月2日 日経新聞株式欄

KNNポール神田です。

□富士通の時田隆仁社長は(2020年10月)5日、東京証券取引所で(2020年10月)1日にシステム障害が発生し、全銘柄の取引が終日停止されたことについて「障害の原因となった機器の納入、システムを構築した企業のトップとして、多くの皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことを心よりおわびする」と謝罪した。

□東証で1日に発生したシステム障害は、売買注文を受け付ける基幹システム「アローヘッド」が引き金となった。運用をつかさどる記憶装置のうち1台で、制御用のメモリー(主記憶装置)が故障した。故障が発生すると本来は自動的に代替機に処理が切り替わるはずだったが、機能しなかったという。東証は1日の会見で、「富士通と共同で原因の解明を進めている」と説明した。

出典:富士通社長が謝罪「原因究明に全力」 東証システム障害

■富士通が設計するシステムがダウンした

日本独自の特注システムが、東証のシステムを支えてきた

□東証は富士通の“特注品”を採用

 NYSE(ニューヨーク証券取引所)とLSE(ロンドン証券取引所)が最も重要な競争条件と考える処理スピードについて、東証はどのように考えているのか。鈴木義伯 常務取締役CIO(最高情報責任者)は「もちろん、信頼性や拡張性よりも高速性が重要」と即答する。東証もNYSEやLSEと同様の認識だ。

 ただし、NYSEやLSEのように汎用製品で売買システムを構築するのは「信頼性の面でリスクが大きい」(鈴木CIO)と見送った。動作プラットフォームには、富士通の基幹IAサーバー「PRIMEQUEST」を採用。3重化したメモリー上で売買注文を処理するという富士通の“特注品”を選んだ。ミドルウエア群も、富士通が東証の次世代売買システム用に開発するものを使う。

□鈴木CIOはWindowsという選択肢について「我々が望む限り現行バージョンのサポートを続けてもらえるかどうか確証が得られなかった」とも付け加える。LSEとマイクロソフトが組んで、東証にWindowsベースの次世代売買システムの提案をしたが受注に至らなかった背景には、このような東証の考えがあった。

出典:リーディング企業 IT戦略の分岐点: 『ニューヨーク、ロンドン、東京 1ミリ秒を競う証券取引所』

このような経緯で、東証は日本製の富士通の特注システムとのつきあいがある。

■2020年10月2日の日経新聞の株式欄は取引がないページが続いた…

出典:日経電子版
出典:日経電子版

もちろん、これは東証で前日、株式の取引がまったくおこなわれなかったことを表しているページとなった。電子版でもこのとおりだ。

1年のうちでも、四半期の始まりでもあり、各種制度の変わり目の節目でもある10月1日はリリースも多く、この日を期に昨年、消費税は10%となり、今年は酒税も変わった。世界でも三番目の市場である東証マーケットのこの日のシステムダウンは手痛い。

過去にもシステムダウンは発生しているが、一番大変なのは、自然災害でいうところの『台風』などと違い、『地震』同様に予測不可能なところだろう。セキュリティ面などでの堅牢性は幾度にも守られているが、今回のような制御用のメモリでのエラーが原因となると、再現性が見つけにくく、どんな状態の時に発生するのかの検証が非常にむずかしい。

当然、システムダウンの原因が追求できないと世界的なマーケットの信頼性をもそこなう可能性が高い。それでなくても、日本の株式市場は、前場と後場に別れて取引時間が短いということもあり、海外からの個人投資家にとっては日本時間の昼休みまで計算しなければならないというデメリットもある。もしも世界の市場に前場と後場で昼休みを取られていたら、マーケットは一日に2回立ち上がりと終わりを迎えなければならない。

これは、グローバルという視点よりも、今までと変わらないことの良さを日本がずっと享受してきたからではないだろうか。すべて『日の丸システム』の中でグローバルの中では、異質なマーケットとなっているのだ。昼休みは交代で取ればよいのではないだろうか?

それと同時に、売りも買いも、事前に自動で大量の注文を受けているからこそ、東証側は売買システム『アローヘッド』を簡単にリスタートすることができなかった。

■不幸中の幸いは、米株式相場が上昇し、香港市場が祝日で、トランプ感染の発表前

□東証は2005年11月1日にもシステム障害を起こし、午前中の株式売買を全面停止にしたことがある。この時は正午過ぎにシステムが復旧し、13時30分に全取引が再開した。

□当時と現在の違いはいくつかある。まず、コンピューターを使ったアルゴリズム取引や、約定時間短縮のための「コロケーション」と呼ばれる東証のサービスの普及で取引が高速化・高度化したこと。今回のように東証がシステムの再起動に追い込まれた場合の「二次災害」の大きさは15年前とは計り知れない。

□さらに株式・金融市場のグローバル化も加速した。不幸中の幸いは前日の米株式相場が上昇し、1日は上海や香港市場が国慶節(建国記念日)の祝日で休場だったことだ。もしも米株や上海・香港株が急落していたら、日本株の投資家はさらに大きな機会損失を被っていた可能性がある。

出典:「リセット」できない東証 高速市場に流動性リスク

それに加えて、トランプ大統領夫妻のPCR検査要請反応の前だったことも幸いだったと付け加えておきたい。それでも、今後、同様のことが起きた場合のリセット対応策では、ロボット投資などが自律的にリセットに対応してくるだろうし、属人的な予約はすべてキャンセルされるなどの不公平を生む可能性もでてくることだろう。

■今までと何も変わらないものを提供しつづけるところにDXはない

出典:日経新聞のテレビ・ラジオ欄
出典:日経新聞のテレビ・ラジオ欄

筆者は日本経済新聞を10代の頃から愛読してきている…。祖父の時代から回し読みをしながら、20代からは自分で契約しているのでかれこれ40年近いサブスリプションだ。

株を覚え始めた頃には、四季報と日経の朝刊の株式欄を見ながら、電話で証券会社に注文を行っていた。そして、ネット証券の時代になってからは、新聞に掲載された機能の株式欄と電話はまったく不要となった。取引のコストも格段と下がるようになった。

価格を設定しておけば、売買の注文も自動化することができるようになった。

さらに、GoogleSpreadsheetで気になる価格をスクレイピングしてきて分析するプログラムなどもノンプログラマーでもできるようになった。ユニークなのは、PAYPAYのポイントの『ボーナス運用』でポイントを運用することもできるようになった。Tポイントで得られたポイントで国内投資ができる『ネオモバ』などもある。そう、ポイントで得られたものを消費にまわしてしまうだけでなく、本来はなかった『あぶく銭』として投資運用することによって、お金に働かせる利息の金融だけでない投資の世界も知るきっかけが生まれることだろう。ポイント発行体企業としてもポイント退蔵益をまとめた運用に回し、手数料分も回収できる。ポイントの外部換金のスピードを遅らせながらも、自社の短期負債を投資資金として活用できるのだ。

ひとつのテクノロジーが生まれると、それをレバレッジとして新たなビジネスモデルが誕生する。

日経新聞の電子版のテレビ・ラジオ欄をクリックしてもテレビ番組が再生されるわけでもない…。

EPG(電子番組ガイド)が地上波デジタル放送で提供されてもう何年たつのだろうか?

テレビを見るのに、朝刊をひろげて番組を予約するなんてことは誰もしていないにもかかわらず、毎日紙面がさかれている。いや、話題になった番組だけ、全録マシンから再生するなんてことができる時代にだ。

そう、昨日の株式欄とテレビ・ラジオ欄が紙に印刷され続ける時代を決別をしない限り『新聞』というメディアはDXできない。

1961年神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の編集とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を兼任後、ソーシャルメディア全般の事業計画立案、コンサルティング、教育、講演、執筆、政治、ライブストリーム、活動などをおこなう。メディア出演、コンサル、取材、執筆依頼 などは 070 5589 3604 まで

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