『情報銀行』と言う名の個人情報の売買システムのカギは『同意』の認知にある

出展:いらすとや

KNNポール神田です。

□政府は個人データの提供に対価を支払う「情報銀行」への参入の動きが広がっているのをにらみ、やり取りするデータの仕様を統一する方針

□今は各社がバラバラに仕様を決めているので提供者の個人が管理しづらかったり、企業のデータ活用が滞ったりする恐れがある。円滑にデータが流通する環境を整えて、本格的な普及につなげる

□内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環で近く実証実験に着手する予定。2019年度中に具体的に統一する内容をまとめる。

出典:「情報銀行」データ仕様を統一 政府、年度内に具体案

■いったい『情報銀行』って何?

『銀行』という名前がついているが、『おカネ』を原資とした『金融』の『銀行』のハナシではなく、『個人情報』を預かり、その『個人情報を運用・活用する事業者』のメタファーとして『情報銀行』と呼ばれるようになった。ネット巨人のGoogleやFacebook、Amazonなども個人情報を、ユーザーの許可の上で『預かり』、広告などに、運用・活用して利益を得ている。それまでの『広告』は『広告スペース』という場所に出稿してもらうビジネスだったが、現在の広告は『個人情報』をもとに匿名化された個人に対して『マッチング』できる広告情報の提供が可能となる。

広告だけであれば、理解しやすかったが、たとえば『キャッシュレス』の『QRコード決済』の事業者であれば、『購入履歴』『購入金額』『購入場所』『行動時間』『行動履歴』に基づく『広告』だけではない『キャンペーン』や『プロモーション』を打つことも十分に可能となる。

個人名は匿名化されているとはいえ、名前よりも重要な『個人のパーソナリティ面』にまで踏み込める可能性がある。

たとえ、個人は『匿名化』されていても、ネットのデータ上での個人にフィットした情報を常にAIが分析し、あなたが活動する時間や場所、曜日や天気にあわせておすすめしてくるのだ。もしかすると健康状態にまで、勝手に推し量ってくれることだろう。

それは、理解した上で個人情報を『預託』している人には良いが、勝手に個人情報を『搾取』されている人にはとっても気持ちが悪い…。

そしてこれからの『情報銀行』は、『同意を得た上で他者に提供する企業』となっている。

しかし、個人はどこでいつ『同意』したかのが、実はまったく理解していない。それは、長ったらしい『利用規約』を読まないと使えないみたいなところを『情報銀行の利用を許可する』みたいなシンプルな構造で認知させる方法と理解が必要だ。

■TSUTAYAの『Tポイント』が隆盛した時代

『情報銀行』を語る前に、レンタルビデオのTSUTAUYAのビジネスを思いだしてほしい。

『Tポイントカード』を発明したTSUTAYAを運営する『カルチャコンビニエンスクラブ(CCC)』の個人データ仲介ビジネスは、レンタルビデオやDVDのレンタルする会員登録情報をベースに、属性にフィットしたプロモーションを展開できる企画が画期的であった。

40代男性のバツイチだった『わたし』は、毎週金曜日の深夜にアクション系の洋画と18禁の巨乳系DVDを借り、月曜日に返すという性癖、いや習慣があったとしよう。そんな『わたし』がTポイントを使えるお店で利用した行動履歴は蓄積され、マーケティングデータとして『Tカード』に利用される。そして、個人情報を提供する代わりに『Tポイント』というリワードが『Tポイント加盟店』のネットワークから『わたし』はもらえる。そうやって『Tポイント』に加盟する一業者一社の中で『ポイントによる回流力』を生んだ…。

2003年、一業者一社のTカード加盟店は、ユーザーのポイント経済圏での回流を生み 6700万会員(※国民2人に1人以上)にまで成長する

2010年、Pontaカードも残りの一業者一社で同様の広がりを見せる6000万人(※日本国民2人に1人)まで成長する。

2014年、楽天ポイントカードがスタートする。

出典:Tポイント、なぜ崖っぷちに?顧客データ販売ビジネスの限界、ファミマ独占終了の理由

Tカード誕生から、16年経過、市場環境は大きく変わり、さらに今年は、2019年QRコード決済が乱立状態である。そこに『情報銀行』のルールの統一化がでてくる。

■『ウーバーイーツ』のドライバーでも簡単にわかる個人の嗜好

筆者は『ウーバーイーツのドライバー』もしているが、太陽に当たることができ、ジムの代わりになること以外に『ウーバーのAI』になったつもりになれるメリットがある。これは、デリバリーをしてみてわかったことだ…。

お昼前に『マクドナルド』をデリバリーする人の属性は、朝昼兼用の水商売の人が多く、お昼すぎに『タピオカ』のデリバリーを頼む人は富裕層の女子やマダムが多いなど、『時間×商材×性別』でマーケティングができることが容易に想像できる。お昼前のマクドナルドの人には、二日酔いのサプリメントや、タピオカを注文する人には、他のスイーツのクーポンがあれば良いということが経験値として個人ドライバーでもわかる。これを『ウーバーイーツ』の『AI』が、ビッグデータでプロモーションとして、利用すれば、毎度のオーダーのついでに『プロモーション』画面を挿入できる。初回が無料で気に入ってもらえれば、リピーターになってもらえる。

■スカパーの利用料金割引システム

スカパーは2019年7月から『情報銀行』で視聴料金の割引を開始する。スカパーは、本人の同意を得て、データを流通させる『情報銀行』のスキームで、視聴履歴や好きなスポーツチームの嗜好を外部企業に提供する対価として、視聴料の割引に数百円単位で応じるという。

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/04929/

スカパー!の顧客基盤を活用した新規事業として「LIFE育成事業の育成」を明言しているが、そのひとつとして、契約者のパーソナルデータを活用する「スカパー!情報銀行プラットフォーム」の実現を目指す。

スカパーJSATが18年度通期決算を発表。FTTH再送信サービス拡大をベースに、多チャンネルサービス契約増へ

https://this.kiji.is/499179663219508321?c=493473239399466081

今後は、このような『情報銀行』に同意すれば、得をするというサービスが増えてくることだろう。

■『統一されたデータ仕様』と『データポータビリティー』最大の課題は『同意』の認知

『情報銀行』で必要なのは、取り扱う個人の『統一されたデータ仕様』と、それをユーザーが自由に、自分で『管理』できること、または、他の事業者に携帯電話番号の『MNP』のように、自分のデータを完全に移動できる『データポータビリティー』の権利であるだろう。

事業者がそれぞれ勝手な『利用規約』で同意を求めるのではなく、統一された政府ポータルの『情報銀行』の利用規約で『同意』を得ることが必要だろう。それと同時に、自分がどれだけの企業に『情報銀行』の利用に『同意』しているかの『可視化』も重要だ。「PDS(Personal Data Store)」の有効活用だ。

まずは、ユーザーが自分で何を『同意』しているのかを知る権利を与えることが『情報銀行』事業の最大の課題であると思う。

□政府はこうした状況を放置するとサービスの広がりに支障を来す恐れがあるとみて、情報銀行と提供者の個人を仲介してデータをやりとり・売買する「データ取引市場」などの仕様を統一する方針。

□個人による同意の管理手法、メタデータと呼ばれる付随情報の仕様をそろえる。

□業界団体による情報銀行の認定基準にも反映し、参入企業に対応を求める。

□統一された仕様になれば、個人は自分が提供するデータを管理しやすくなる。

□政府は企業が収集した購買履歴などのデータを本人の意思で引き出し、他のサービスに移すことができる「データポータビリティー」を導入する議論をしている

出典:「情報銀行」データ仕様を統一 政府、年度内に具体案

■「PDS(Personal Data Store)」 のしくみをどこが運用するのか?

『情報銀行のイメージ』出典:内閣官房
『情報銀行のイメージ』出典:内閣官房

「個人が自らパーソナルデータを事業者に与えるかどうか管理できるシステム」のことを総務省は「PDS(Personal Data Store)」と定義している。

あくまでも、この「PDS」を個人が『同意』した上で運用できることが重要だ。

■政府の『情報銀行』関係団体リスト

内閣官房 IT戦略本部『データ流通環境整備検討会』

『情報銀行のイメージ』出典:内閣官房
『情報銀行のイメージ』出典:内閣官房

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/data_ryutsuseibi/dai2/siryou2.pdf

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/data_ryutsuseibi/kentokai.html

内閣府『戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)』

https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/

総務省 『情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会』

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/information_trust_function/index.html

情報信託機能に関する検討の概要

「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」 出典:総務省
「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」 出典:総務省

http://www.soumu.go.jp/main_content/000559366.pdf

1961年神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の編集とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を兼任後、ソーシャルメディア全般の事業計画立案、コンサルティング、教育、講演、執筆、政治、ライブストリーム、活動などをおこなう。メディア出演、コンサル、取材、執筆依頼 などは 070 5589 3604 まで

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