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フェイスブック、出会い系アプリで『Secret Crush』を発表 9人までの『ステルス告白』可能

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

恋心をいだいている人に『ステルス告白』が可能だ 出典:engadget
恋心をいだいている人に『ステルス告白』が可能だ 出典:engadget

□Facebookが、毎年恒例の開発者向けカンファレンス F8 にて、2018年に開始した出会い機能Facebook Datingの機能強化について発表

□追加された新機能は「Secret Crush」と呼ばれ、Facebook上で好意(Crush)を寄せる相手を最大9人までリストに登録しておけば、相手も同様に自分をリストに加えた際に両者にそれが通知されるという機能。もしリスト上の相手が自分に興味を持っていない場合、自分の本心が相手に知られることはありません。

出典:https://japanese.engadget.com/2019/05/01/facebook/

『Secret Crush』機能 出典:Techcrunch
『Secret Crush』機能 出典:Techcrunch

□好意を送信しても「片想い」状態の場合は相手に表示されない。相手も自分に好意を持っていて好意を送信し返してきたときに始めて双方に通知され、メッセージ交換が可能になる。また現在は、南米や東南アジアの5カ国で実験的運用が行われているが、新たに14カ国が追加され19カ国でFacebook Datingがスタートすることも発表された。米国も今年中にカバーされるという。

出典:片想いでも傷つかない、FacebookがデートアプリにSecret Crushを追加

■『Tinder』との違いは、ソーシャルグラフ内からの信頼性のある出会い

Facebookは、『Facebook Dating』という公式アプリで出会い系機能を提供する。現在も試験的に運用しており、今年中に米国で正式リリースとなる見込みだ。しかも19カ国でスタートだから日本も開始される可能性は高そうだ。

もちろん、出会い系アプリの『Tinder』などの『出会い系市場』をソーシャルグラフ的なアプローチで展開しようとしているからだ。

『Tinder』などの出会い系アプリは、ソーシャルグラフとは関係なく、地域や年齢などで絞り込み、見た目の一発勝負で相手を選ぶ。だから、それなりの見た目であったり、見た目映えする写真が決め手となり、実際にあうには課金がなされるというビジネスモデルだ。

しかし、Facebookは、Facebook経由のアプリ『Facebook Dating』で出会いを希望している人だけをオプトインさせることができる。それにより、自分との関係性だったり、友達の友達という『ソーシャルグラフ(社会関係性)』での知り合い経由の出会いをデザインできる。見た眼のヴィジュアルではなく、Facebookでの関係性で、ひっそりと告白することができる。しかも、9人も告白できるのだ。

■『ステルス告白』という傷つくことがない告白機能

今回、Facebookならではの機能が、『Secret Crush』という密かに告白ができる『ステルスな告白機能』である。9人までスキな人を登録することができ、相手も自分のことをスキになってくれている場合にのみお互いに、告白されている事がわかるしくみだ。

つまり、本当に大好きでたまらない人、一人に告白するのではなく、2番、3番、とスキな人を、なんと!ベスト9まで登録しておけるというのだ。

人は誰でも、スキな人からスキと言われるのがスキだ。しかし、ベスト9の人からでもスキと言われて、悪い気はしない。マッチングされないベスト3以上よりも、ベスト9とつきあってみると『大好き』なベスト1に変わることなんて山ほどあるはずだ。

そう、今の少子高齢化の日本にとっては、とても必要な機能と言えるだろう。自分がまったく傷つくことなく、想いを届けて、相手とマッチングされるからだ。もちろん、FacebookはAI機能でその人間同士の恋愛感情のスキームを学習し、もしかすると、この人はあなたのことがスキかも?とサジェスチョンしてくれるようになるかもしれない。するとFacebookのアルゴリズムの手のひらの中で恋愛感情までもコントロールされる。何よりも、スキな人からのレスポンスほど最高のメディアとなるからである。

■『アシュレイ・マディソン』のように、不倫を助長しないだろうか?

『人生一度。不倫をしましょう』で煽る 出典:アシュレイ・マディソン
『人生一度。不倫をしましょう』で煽る 出典:アシュレイ・マディソン

良いことばかりのハナシではないかもしれない…。懸念されるのは、既婚者同士、または不倫の場合は、どうなるのだろうか?気になるのが、不倫専門登録サイトの『アシュレイ・マディソン』のようなハッキングされ『リベンジポルノ』まがいの脅迫をうけた事件だ。日本人も当時180万人にリスクが及んだ(2015年)。アシュレイ・マディソンは不倫専門で、やましさ感が満載であったが、『Facebook Dating』の場合、Facebookで、既婚未婚のオプトイン登録していなければ既婚か未婚かわからないので、基本的に誰もが利用できる。

しかも『9人もいる好き』のうちの互いのマッチングだから、未婚、既婚にかかわらず、マッチングの成立の可能性は高いはずだ。さらに、Facebookの場合、友達の奥様や旦那様とマッチングが成立する可能性もありえる。ホント悪いとは想いながらも、秘密のやり取りは蜜の味でついつい…という不幸なケースを歩んでしまうのかもしれない。当然、筆者のような好奇心の塊は、『Facebook Dating』に必ずトライしてしまうだろうが、かつて不倫による家庭崩壊の経験があるので、学習機能はオンにして心して望みたいと思う…。

■恋をしましょう!

ネットによる出会いが主流となった米国と同様に、すべての世界の恋愛価値感を、同軸で語るワケにはいかないが、恋愛・結婚・家庭 にいたるまでのすべてが、Facebook経由のファミリーみたいなケースの時代は必ずやってくることだろう。

『ステルス告白』での恋愛は大いにありだが、『9人同時告白』という多人数の告白は、きっとテストした国々のラティーノな結果なのだろう。しかし、見習うべきは見習ってみるべきだ。

彼氏、彼女がいないだけでなく、ソーシャルグラフの中での、リアルでバーチャルな彼氏彼女は人生に潤いを、きっと与えてくれれるはずだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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