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トヨタ、デンソー、ソフトバンク、UBERが奏でる自動運転のショーファードリブンカルテット

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

□トヨタ自動車(Toyota Motor)自動車とソフトバンク・ビジョン・ファンド(Softbank Vision Fund)、自動車部品大手のデンソー(Denso)は(2019年4月)19日、米配車サービス大手のウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)に計10億ドル(約1100億円)を出資し、自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発を推進すると発表した。

出典:トヨタやソフトバンク、ウーバーに10億ドル出資

■自動運転の『Uber-ATG』という新会社の存在

デンソー、UBER、トヨタ、ソフトバンク というカルテットの調印式 出典:トヨタ
デンソー、UBER、トヨタ、ソフトバンク というカルテットの調印式 出典:トヨタ

□自動運転ライドシェア車両の開発と実用化を加速するため、UberのAdvanced Technologies Group(以下、Uber-ATG)へ合計10億ドルの出資を行うと発表しました。

□トヨタとデンソーは6億6700万ドルを、SVFは3億3300万ドルをUber-ATGが基となる新会社に出資します。この出資に伴い新会社の企業価値は72億5000万ドルとなります。

□トヨタは2018年8月にUberに5億ドルを出資し、トヨタのミニバンであるシエナをベースとした車両に、Toyota Guardian(高度安全運転支援)システム(以下、ガーディアン)とUberの自動運転システムを連携させた自動運転ライドシェア車両を、2021年にUberのライドシェアネットワークに導入する事に合意し、共同開発を進めて来ました。

出典:トヨタ、デンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンド、Uber Advanced Technologies Groupに10億ドルを出資 -自動運転ライドシェアサービスの開発と展開へ向け協業を加速-

そう、UBER本体への追加出資というよりも、自動運転部門 の『Advanced Technologies Group(Uber-ATG)』新会社へのスピンアウト投資と見たほうがよいだろう。

公開企業となり、より資金調達できるUBER社の成長と同時に、ソフトバンクグループ及び、SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)は、ライドシェア全体の筆頭株主である影響力を持つ『系列』に、『自動運転』という軸でトヨタとデンソーが新たなに動き出すのだ。

ソフトバンクグループは、SVF経由で米UBER株の15%を77億ドルで取得済み(2018年1月)。トヨタは、米UBERに5億ドル出資済み(2018年8月)さらに、今度はトヨタ、デンソーから6.67億ドル SBVが3.33億ドル 合計10億ドル 出資だ。 ソフトバンクは、自動車メーカーとしてのGM(ゼネラルモーターズ)の自動運転『GMクルーズ』にも22億5000万ドル(2200億円)の出資を行い、約20%の株を取得している(2018年5月)。

これはUBERの『自動運転』部門のスピンアウトを視野にいれてのソフトバンクとトヨタの提携事業とみることができる。

■『Uber-ATG』という名の『ショーファードリブン』機能

『自動運転』というのは、自動車が勝手に動き回るイメージだが、実は、専属の運転手がクルマに搭載されることをイメージするとわかりやすい。『ショーファードリブン(運転手付き自動車)』の価値はクルマを運転することよりも、後部座席の居住性や移動快適性が求められる。もはやクルマを運転するという車の機能よりも、ショーファードリブンの移動する空間としてとらえたほうが本質に近いだろう。

ソフトバンクグループとトヨタグループは、それを『モネテクノロジー株式会社』という事業会社を資本金20億円で起こしている。また、モネテクノロジーは、日野自動車やホンダとも資本・業務提携(2019年3月)もおこない、新たな動きをしている。出資比率はこう変わった。ライバル会社の参入も含めて、近い将来ここに『Uber-ATG』という新会社が加わることも十分に想定できる。

MONETの出資比率 2019年3月 出典:MONET Technologies株式会社
MONETの出資比率 2019年3月 出典:MONET Technologies株式会社

ソフトバンクはすでに、UBER DIDI GRAB OLA とシェアライドのプラットフォームを持ち、トヨタはそこに自動運転のモビリティを提供できるというシナリオのプロローグが始まった。

ソフトバンクグループ及びSVFの出資関係図 出典:KNN
ソフトバンクグループ及びSVFの出資関係図 出典:KNN
10兆円のシェアライド市場をおさえるソフトバンクグループ系列 出典:ソフトバンクグループ
10兆円のシェアライド市場をおさえるソフトバンクグループ系列 出典:ソフトバンクグループ

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ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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