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GAFA企業の研究開発費以上の政府の『5%ポイント還元システム開発費』

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

□政府は(2019年)10月の消費税の引き上げから9カ月間に限って、中小の小売店でキャッシュレス決済した場合、最大5%のポイントを国の予算から還元する方針で経済産業省が2798億円を計上しています。

□関係者によりますと、そのうち3割にあたる830億円はポイントを還元する9カ月間しか使われないシステムの開発のほか、「制度について全国から問い合わせが相次ぐ」と想定してコールセンターの設置や広報に使われます。

出典:ポイント還元に予算2800億円…実は3割は開発費など

旧聞のニュースだが、消費税対策として5%還元する予算として、経済産業省が2,798億円を計上している。そもそも、この時点でたかだか2%の増税にしかならない消費税を上げなければよいのにと思うが、さらに、そのうち3割の830億円がシステム開発費やコールセンターや広報に使われるという。もう、これは言語道断でありえない比率だ…。

GAFA企業の開発費以上の『5%ポイント還元システム費』

収益に占める研究開発費の比率、Googleは15%、Facebookは21%、Appleは3.5%

出典:Appleが低予算の研究開発費で最先端技術を手にしている理由

時価総額ランキングのトップを占めるGAFA企業でさえ、売上に占める研究開発費は最大20%どまりだ。

たったの9ヶ月間、政府が5%のポイントを還元するためだけに、予算に占める研究開発費を3割もかけるという…。しかもGAFA企業と違って、全く何も、ま新しいテクノロジーは生み出さない開発予算だ。むしろ、国内のキャッシュレスサービス会社に『マイナンバー』の『API』だけを提供すれば、ほとんど資金をかけることなく、ポイント還元できてしまうのではないだろうか?。API接続のコストは、事業者に負担させればよいし、広報も事業者に『政府のお墨付き』を与えれば良いだけだと思う。キャッシュレスサービスは乱立気味だが、それは国民が選択すればよいだけだ。そこからの接続協力を経産省と総務省が仲良く手を組んでくれればよい。国民の税金なんだから、そもそも省庁間の予算の話は今回だけは、クロスオーバーすべきだろう。

そもそも『マイナンバー』の開発費だけでも2年で2,000億円かけてきた。運用費用が毎年300億円というとんでもない高コストな体質。しかも、パスポートや運転免許にも住民票にも選挙にも利用できず、銀行口座を作る時の本人確認書類でしかなかったりする。こんな無駄なしくみが、よく法案を通過したものだと思う。

むしろ、そんなマイナンバーでも、5%ポイント還元の証明書にくらいは使えそうだ。すると、ほとんど開発費をかける必要がないのではないだろうか?もしくは、マイナンバーの運用コストで、キャッシュレスの電子マネーとヒモづけすれば、税金の取りっぱぐれもなくなるというものだ。

国民一人あたりどのくらいのポイント還元になるのか?え!たったの1,632円!

億兆電卓で国民一人あたりいくらか計算してみた… 出典:『億兆電卓』
億兆電卓で国民一人あたりいくらか計算してみた… 出典:『億兆電卓』

消費税5% ポイント還元 2798億円 しかし、システム開発費で3割減だと 1958億円となる。

国民一人当たり、たったの1632円ポイント還元されても…。

満額の2798億円でも2,332円だし!

筆者は国家予算レベルの数字でも簡単に計算できる『億兆電卓』をプロデュースしている。億兆円クラスの数字も簡単に計算できるので、自分のために作った計算機だ。そう、ハードウェアではなく、ソフトウエアやアプリは、予算ではなく、開発できる人次第なのだ。古い体質のまま、政府から受注している大手ベンダーとスタートアップのような開発会社と比較検討しなければならない。

そもそも、1%の増税で2兆円の税収増と言われている。今回の2%の増税であれば、4兆円の税収増が期待されている。しかし、軽減税率などを考えれば4兆円を割る可能性もありえる。何よりも、今回の増税対策に全体で2兆円をかけるという。それであれば1%だけの値上げ分でしか税収がないのだ。

ポイント還元のような場当たり政策ではなく、インパクトのある『内税表示』

22%の消費税でも 0.99ユーロ(125円)などの買いやすい価格の内税表示 出典:筆者ポルトガルのマーケットにて
22%の消費税でも 0.99ユーロ(125円)などの買いやすい価格の内税表示 出典:筆者ポルトガルのマーケットにて

9ヶ月間だけのポイント還元とか、目先の消費税対策ではなく、根本的な消費税対策をする必要があると思う。

例えばだが、消費税の高い国をよく見ればわかると思うが、必ず表示は、『内税方式』だ。そう、消費者は、最終的な税込みの価格を見て商品やサービスの購入を考える。そこは経済の論理で、売価は、売れる可能性のある価格で設定されるのだ。

日本での購買のほとんどが、『外税方式』で表示され、常に、商品以外の消費税に目をしているので、増税間が大きい。それが計算しやすい10%の外税になればなるほど、購買意欲がわかない。筆者は2019年1月からポルトガルに滞在している。

ポルトガルは内税方式 出典:筆者のスーパーマーケットでのレシート
ポルトガルは内税方式 出典:筆者のスーパーマーケットでのレシート

たとえばポルトガルの消費税は、軽減税率で6%,13%,23%と別けられている。ビールなどの贅沢品は23%の税率だが、すべて内税なので、まったく高いという意識が働かないのだ。ビールが1缶1ユーロ(125円)と23%の税率があったとしても、買いやすい価格を事業者が設定するからだ。少なくとも、現在の日本の長期デフレの最大の要因は、消費税表示がずっと『外税』だったからという単純な理由があるかもしれない。

少なくとも価格表示を『内税表示』にお願いすることに予算をかけたほうが、5%ポイント還元に、830億円もかけるよりは、よほどインパクトがあると思う。これだけ長期にわたる閉塞感を打破するためには、それくらいやってみてもよいのではないだろうか?重税の国が、そうやって重税対策しているのだから…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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