映画『華氏119』トランプ大統領を生んだ張本人はマイケル・ムーア監督だ

『華氏119』パンフレット 出典:GAGA

KNNポール神田です。

2018年11月2日金曜日に公開されるマイケル・ムーア監督の映画『華氏119』の試写を見た。

GAGA公式サイト『華氏119』

https://gaga.ne.jp/kashi119/

おや、『華氏119』のタイトルは、カンヌのパルムドールを受賞した、ニューヨーク911テロをあつかった映画『華氏911』のモチーフだ。

なぜ?『119』というのか? それは2016年11月9日の共和党ドナルド・トランプ候補と民主党ヒラリー・クリントン候補の一騎打ちの大統領選挙の投票日だったからだ。その日に、トランプが勝利し、トランプ大統領が生まれた。

レイ・ブラッドベリの『華氏451』

そもそも、『華氏』のモチーフは1953年に書かれたレイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451』の、紙が燃え始める温度、華氏451=摂氏233度 から来ている。危険な思想を持たないように『本』が禁止されるディストピアな管理社会を描いた小説だ。民主党支持者であるマイケル・ムーア監督は『華氏911』ではブッシュ大統領、そして『華氏119』ではトランプ大統領を『悪の枢軸』として描いている。

『華氏119』予告編

圧倒的勝利のはずだったヒラリー・クリントン大統領

映画『華氏119』は、2016年の大統領選の、膨大なニュース映像を編集することによって、史実をトレースしていく。なぜ、クリントン大統領ではなくトランプ大統領が誕生したのかの経緯の理由を、ニュース映像のみで組み立てていく。

そう、外国人である日本の私たちと選挙制度も違うし、大統領を間接的に投票できる米国ならではの理由がある。

なぜ、トランプ候補が共和党の代表となり、クリントン候補が負けたのか?

米国の大統領選のしくみ

米国の大統領選挙は、長い年月をかけて戦っている割には直前の僅差で決まる。選挙の大半は、党内の生き残りにかけるトーナメント戦の『予備選挙』に費やされているのだ。民主党のクリントンの敗因は、バーニー・サンダース候補の人気と非出馬により票が割れたとマイケル・ムーア監督は分析している。

民主党はサンダース候補が出馬しない、共和党はトランプ候補が選ばれた…それらのファクターにより、約一億人近い人が大統領選挙に参加しないという結果を生み出したのだ。たとえ事前にどれだけ調査し、クリントン優勢が報道されていても、実際に当日に『票』を投じられなければ歴史は大きく変わる。2000年のブッシュ候補とゴア候補の大統領選では、瞬間的にはゴア候補のほうが勝っていたことさえある。

そして、米国の大統領は、世界に大きな影響を与える。されど、我ら日本人は傍観するしかないのである。どれだけ多大な影響を受けようが…。

期待と絶望の2年前の2016年11月9日

この映画はあの長い選挙投票の当日をシニカルに描く…。

豪華なガラスでかこまれた大規模なパーティー会場。まさにシャンパンを開け、パーティー気分満載の民主党のクリントン陣営。それとひきかえに地味でお通夜の参列のような共和党トランプ陣営…。順調な票を重ね続けるクリントン陣営の喜び。しかし、中盤で空気がガラリと変わる。そして、その後世界中が驚愕する結果となる…。ムーア監督は、当確のスピーチ原稿さえ用意していなかったトランプ陣営の声明を痛烈に皮肉る。

惜しむらくは、長男のバロン君が深夜なので「あくび」をしていたシーンが挿入していれば映画は完璧だっただろう。

マイケル・ムーア監督のお家芸『突撃取材』が復活!

ムーア監督の1989年の『ロジャー・アンド・ミー』は筆者にとってのバイブル的な映画であった。この映画がなければボクはジャーナリストをやっていないだろう。GMの会長のロジャース・スミスに何度もノーアポで突撃取材を試みる。2002年の『ボーリング・フォー・コロンバイン』では、全米ライフル協会の会長も努めた映画俳優のチャールトン・ヘストンの自宅に何度もベルのピンポンダッシュを試みる。これらの取材スタイルを筆者は、徹底的にパクらせていただいた。スティーブ・ジョブズ宅に訪れ、継母のインタビューを行ったり、ジョブズの長男の写真を撮影し、大激怒されながらもジョブズ氏を3度にわたり怒らせたことがある。これらはすべてマイケル・ムーア監督が教えてくれたことだ。しかし、2004年『華氏911』や2007年『シッコ』ではノーアポ突撃取材は、すっかり影をひそめてしまっていた。しかし、今作の『華氏119』では、ひさしぶりに故郷のミシガン州フリントでの汚染された水がつまったタンクローリーで乗り付け、チャールトンヘストン宅の襲撃以上の知事の自宅にホースで大放水を浴びせるパフォーマンスを決行!やはりムーア監督はパルム・ドールを受賞しても原点は忘れていなかった。

21世紀のヒットラーに見えてくるトランプ大統領

映画はいろんな、ニュース素材とムーア監督のナレーションで展開される。字幕の監修はごぞんじ、池上彰さんだ。よく多忙の中で監修ができたと思うが、いろんなニュースバラエティで、この映画の背景も池上解説で聞けることを楽しみにしたい。

映像技術として、とても大胆な手法として、ナチスのヒットラーの演説に、実際のトランプ大統領の言葉を『アテレコ』するシーンだ。そう、ホットペッパーのCMで見られる映像編集テクニックだ。まさにそれが、トランプ大統領が21世紀のヒットラーに見えてくるのだ。このシーンはぜひ楽しんでいただきたい。

世界で一番ツイートする国家元首のトランプ大統領

筆者は、ムーア監督とは違い、クリントン大統領ではなく、トランプ大統領で良かったと思っている。民主党の指示派だけどクリントンよりは共和党のトランプのほうが確実にSNSに本音をぶちまけているだろう。

これだけtwitterであからさまに、報道官を経由せず、『直』でやりとりする大統領は稀有だ。当然、報道官のチェック後のツイートもあるが、激怒するトランプ大統領を止めようとすると、自分のクビがかかるので、もはやこのオトコを止められるものは地球上に存在していない怖さがある。しかし、twitterをフォローし、監視することはできる。もちろん、米国の投票権がなくとも、トランプのアカウントに対して、反論することは世界の誰もができる。これは、ある意味SNSで政治が変わる時代を地球全体で経験していると思う。世界で一番ツイートする国家元首なのだ。新聞よりもテレビよりも早く、米国大統領でリアルタイムでつながっている…。

https://twitter.com/realDonaldTrump

たとえトランプ大統領が見ていなくても @realDonaldTrump でツイートすることはできる。

また、ポルノ女優からのセクハラからロシア疑惑、税金問題などいろいろとスキャンダルは登場するが、とてもわかりやすいオトコだトランプは。あのブッシュでさえ大統領が務まる国がアメリカだ。いろんな参謀の人事権を駆使してコントロールしていきながら、まるで映画を見ているくらい『わかりやすい』政治だ。

アメリカ建国史上、今までにいなかったような、いや、絶対に大統領になれないような泡沫候補に『大統領をやらせてみた…』の世界実証実験中なのだ。

そして、今、2年間を経過しようとするが、クリントンだともっとたくさんの戦争を仕掛けたりしていたのでは?と考えるとトランプ大統領はまんざらではないと思っている。

そして、何よりも一番、トランプ大統領を誕生させて原因は、誰もがまさかトランプが大統領になるとは考えていなかったことだ。

そして、ムーア監督自身が、大統領選の2016年11月9日の大統領選の前に、この映画を作っていたらどうだっただろうか?

ムーア監督自身が大統領選の前に、映画で投票を呼びかけ選挙にいかなかった1億人に、警鐘を与えていたら『クリントン大統領』が誕生し、世界やアメリカはもっと、良くなっているか、悪くなっているか、あんまり変わらなかったか…それは神のみぞ知ることである。

リスペクトの意味をこめて、トランプ大統領を生んだ張本人はマイケル・ムーア監督なのだ。