ユーチューブが教えてくれたネット社会の脆弱性

YouTubeのアクセス障害に対するお詫び 出典:YouTube Japan

KNNポール神田です。

米IT大手グーグル傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」で16日夜、動画を閲覧できなくなるなど、1時間以上にわたって機能を停止した。同様の機能停止は米国だけでなく世界各地で発生したものとみられ、インターネット上には不具合を訴える投稿が相次いだ。

米CBSテレビ(電子版)によると、機能停止は米東部時間午後9時ごろから10時半ごろまで続き、画面にエラーが表示された状態となった。スマートフォンのアプリでも発生したもようだ。

ユーチューブは公式ツイッターに「ご不便をお掛けして申し訳ありません」などと謝罪を投稿。その後復旧を発表したが、機能停止した原因については触れていない。

出典:印刷暮らしのRSS ユーチューブ一時機能停止 警察は「110番しないで」

日本時間では、2018年10月17日の午前10時くらいだが、米国本土ではちょうど17時~21時のゴールデンタイムだから大ニュースだ。フィラデルフィアの警察では110番(911番)しないでというメッセージをだしたという。

フィラデルフィア警察のTweet

私達のYouTubeがダウンしています。しかし、110番しないで、私達には直せません。

Yes, our @YouTube is down, too. No, please don't call 911- we can't fix it.

にわかに信じがたいが、YouTubeがダウンすることによって、110番の通報するほど、YouTubeはすでに、社会的な『動画インフラ』を構成していることを物語っている。

YouTubeはあくまでも、広告主から広告代金をいただき、広告を視聴者に見せながら、無料で運営しているGoogleなどを傘下に持つAlphabetの企業だ。無料で利用している側がたとえ止まったからといって、何もクレームを言えるものではない…。

そして、YouTube側のTwitterのメッセージにトラブルの説明はない…

また、YouTubeがダウンして2時間近く視聴ができないからといって、米国の電波管理部署のFCC(連邦通信委員会)や日本の総務省にお小言を言われるものでもない。YouTubeは、許認可事業である『電波』を利用していない『インターネットサービス』だからだ。

これが、ユーザーが費用をまかなっている『NETFLIX』や『amazon Prime Video』だったらどうだろう?停止したらそれに関するペナルティが発生するはずだ。しかし、『YouTube』側にはそんなペナルティは一切発生しない。

いや、それだけではなく、YouTubeがほぼ独占的に全地球レベルの動画共有のプラットフォームを握っている時点で、たくさんのリスクが存在することが改めてわかった。そして、その『論理』は『Google本体』にまで当てはまるのだ。

もはや、『Google』や『YouTube』がないと生活できなくなってしまっている

たかが、2時間弱『YouTube』が停止したことは、ゴールデンタイムの米国時間帯では『テレビ』が映らないのと同じ状況だと容易に想像できる。もはや、巨大インフラであるテレビが映らなくなる…ということは停電以外では、想像しずらい状況だからだ。まさか、警察に通報するとは…。

それでも『YouTube』がたとえ2時間でもダウンしてしまったことは事実だ。そして、我々はその原因を追求することもできなければ、その権利を一切もちえてはいない。それは、米国の一私企業の無料サービスのダウンであるからだ。『ご迷惑をおかけしました』で事は、すんでしまうのである。

我々が『YouTube』を視聴し、広告を見て、間接的に購買行動を起こすことによって『YouTube』は広告収益を上げる。何億も稼げる『YouTuber』が常に話題になるが、『YouTube』のほうがはるかに儲かっている。

ちなみにヒカキン氏の年収は6億円とも言われ、テレビ東京HDの四半期純利益の7.4億円に肉薄している。1539人を雇用するテレビ東京の1/5をヒカキン氏1人が叩きだしているといっても過言ではないだろう。

そんな、21世紀のアメリカンドリーム的な職業を生み出しているのがYouTubeの『プラットフォーム』だ。

プラットフォーマーとしての『YouTube』

テレビ局のような『視聴率』という間接的な調査による『率』ではなく、ネットでは、PV数や滞在時間という具体的な『数』というリアルな数値によって売上まで予測できる。そして『番組制作費』や『電波料』という名目もない。YouTubeは番組を作らないし、広義のインターネットのネットワークにタダ乗りしているプラットフォーマーである。

筆者もそうであるが、動画のバックアップとしてのYouTubeの利用から作品の最終掲載先としてのYouTubeを選択している人が多いのではないだろうか?もはやYouTuberでなくても、誰もがアカウントを取得していれば、自分限定の動画としてYouTubeのアップロードが可能となっている。4K映像からVR映像まで、最先端の動画フォーマットも採用されている。

しかしだ、今回のような突然のトラブルで『ダウン』され、理由も明示されないことは、『怖さ』を感じた。

YouTube依存、Google依存の怖さ

もしも、今回のようなYouTube側のトラブルシュートで問題なく復旧するようなダウンであればよいが、一私企業がハックされて、数日ダウンするようなこともありえるのかもしれない。想像したくないが、動画データが消失してしまうようなこともあり得る。

すでに、Googleが提供している『Google Photos』にすべての写真や動画を無限にアップロードしている。もちろん、自分で管理するよりも、Googleの方が『リスク』も少なく『経済的』であるからだ。そのかわりにGoogleは『個人』を特定しないまでも、いろんな人間の行動をAIで学習し続けて『広告』に反映するというトレードの関係だ。もちろん、我々はGoogleとの『契約書』をしっかり読みもせずに契約してしまっている。

もしも、同様のことがGoogleにも発生し、『検索』できなかったらどうだろうか?『Gmail』を開けることができなかったら…。『カレンダー』のデータがすべて消えてしまったら…。

そう、GAFA企業のサービスがストップすることによって、経済的な損害、時間的な損害、いろんな障害が社会に発生することだろう。

『説明責任』のいらない無料サービス

フェイスブック(FB)は、個人情報の流出が明らかになった世界各地の利用者約3千万人に対し、通知を始めた。該当者の国別の内訳などは明らかにしていない。FBのプライバシー部門副責任者ロブ・シャーマン氏は(2018年10月)17日にビデオ会見し、「約40万人の『友達』のリストから、約3千万人分のアクセストークン(FBとアプリをつなぐ認証情報)が盗まれた」と説明した。日本政府の個人情報保護委員会は、FBからの情報流出の報告を受けて、事実関係の確認を進めているという。行政指導や勧告を行うこともありうる。

出典:経済 産業・商品 テック&サイエンス FB、情報流出3千万人に通知開始 日本政府も確認作業

日本政府が、『行政指導や勧告』を示唆するが、高度なハッキングに対しては何の効力も持たない。GAFA企業のセキュリティは、すでに国家のセキュリティ以上の強固さをもっている。それゆえに狙われているのだ。

『タダより良いものはない』というネット社会の脆弱性

むしろ、GAFA企業のサービスに、しかも無料のサービスに、生活、仕事、社会を委ねているのが現状なのかもしれない。

社会的なコストをかけてでも、有料でも良いので、『ご迷惑おかけしました』だけで、すまされない有料サービスを検討してもよいかもしれない。しかし、有料サービスが無料サービスよりも『品質』が高くなるかというとそうではないからむずかしい。『タダより良いものはない』ネット社会の脆弱性を浮き彫りにした『事件』だったと言えよう。